病院などの医療機関で働く管理栄養士は、さまざまな病態に応じて、適切な食事療法を行うための知識や技術が必要です。
最新の医学や栄養学などを学び続けなくてはならず、努力をしながらも力不足を感じている方が多いのではないでしょうか。
そこで、医療従事者である管理栄養士が持っておきたい資格のひとつが「病態栄養認定管理栄養士」です。
病態栄養学とは、疾患時の栄養を専門とする研究分野で、病態栄養認定管理栄養士の資格を取ることは、専門的な知識や技術を学び続けるための手段としても活用できます。
この記事では、病態栄養認定管理栄養士について、定義や資格取得の方法、認定を得るメリットなどをご紹介します。
目次
病態栄養認定管理栄養士とは
病態栄養認定管理栄養士の資格について説明します。
資格の概要
臨床におけるよりよい栄養管理を行うために、有能な専門的知識および技術を有する管理栄養士の資質向上を図り、国民の健康増進に貢献することを目的とするため、日本病態栄養学会は学会認定制度を設け、日本病態栄養学会認定病態栄養認定管理栄養士を認定しています。
〈出典:一般社団法人日本病態栄養学会「病態栄養専門(認定)管理栄養士」〉
病態栄養認定管理栄養士は、病院などの臨床現場において、患者の栄養状態の評価、栄養補給、栄養教育などの栄養管理を適切に行える高度な知識と技術を持った管理栄養士を認定する民間資格です。
認定元の一般社団法人日本病態栄養学会は、病態栄養学の教育指導や研究、情報発信などを行うことで、病態栄養学の発展と国民の健康増進に貢献することを目的に活動する学会で、管理栄養士、医師などを中心に、2013年時点で7,500名超の会員を有しています。
病態栄養認定管理栄養士が求められている理由
内閣府発表の平成29年版高齢社会白書によると、日本の総人口に占める65歳以上の割合は27.3%で、約3人に1人が65歳以上という高齢化社会になっています。
高齢者の増加により、高血圧や糖尿病、腎臓病などの基礎疾患を持つ人や加齢に伴い低栄養状態となり健康の維持が難しくなる人などが増え、疾病の治療や予防のための栄養管理の必要性が高まっています。
そこで、重要な役割を担うのが、病態栄養学に精通した管理栄養士として認定された病態栄養認定管理栄養士です。
病態栄養学の知識と技術によって、さまざまな疾患の病態に応じた栄養管理を実践できる病態栄養認定管理栄養士の存在は、高齢化が進む日本の健康長寿を支えるものとして、ますます求められていくでしょう。
〈参考:内閣府「平成29年版高齢社会白書」第1章高齢化の状況 第1節高齢化の状況〉
病態栄養認定管理栄養士が必要とされている職場
病態栄養認定管理栄養士は医療機関が職場となる場合が多く、以下のような施設において必要とされています。
病院、診療所、リハビリテーション施設、保健所、市町村保健センター、老人福祉施設、
介護老人保健施設、指定介護老人福祉施設、グループホーム、母子保健施設、都道府県産業保健推進センター、地域産業保健推進センター、各事業所のTHP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)担当、健康増進施設など。
病態栄養認定管理栄養士の資格を活かした仕事内容
病態栄養認定管理栄養士は、医療チームの一員として、患者さんの栄養状態を評価したうえで、治療のための栄養補給や栄養教育などの栄養指導や栄養管理を行います。
実際に、リハビリテーション病院で病態栄養認定管理栄養士として働いている方の仕事内容を例に挙げると、多職種で編成される医療チームの中で、患者のカンファレンスを行い、情報の共有と意見交換をしながら、同じ目標に向かって治療方針を決定します。
そして、医師が中心となり作成した治療計画の基本である栄養療法を患者ひとり一人ひとりのライフスタイルに合わせて栄養管理を行います。
病態栄養認定管理栄養士になる方法
病態栄養認定管理栄養士になるには、下記の受験資格を満たしたうえで、年に1度行われる認定試験に合格する必要があります。
受験資格
以下の4つの条件をすべて満たすことが、認定試験の受験資格となります。
1.管理栄養士免許保持者
2.日本病態栄養学会の会員歴が2年以上あること。
3.医療機関での栄養管理業務の経験が3年以上あること。
4.以下の条件を満たすこと。
・日本病態栄養学会の学会活動として10単位以上を取得している
・栄養管理に関する5症例のレポートを提出する
・日本病態栄養学会主催の教育セミナーを受講している
認定までの流れ
1.日本病態栄養学会の会員になる(2年以上の会員歴必須)
↓
2.・学会への出席や論文提出などの活動を行い、10単位以上を取得する
・栄養管理に関する5症例のレポートを提出する
・日本病態栄養学会主催の教育セミナーを受講する
↓
3.受験申請書類に認定試験受験料を添えて、認定委員会に提出する
(受験願書提出期限:平成29年度は8月1日から8月31日まで)
↓
4.認定試験を受験する(年1回実施:平成29年度は11月19日(日))
↓
5.認定試験に合格。病態栄養認定管理栄養士に認定される
教育セミナーについて
受験条件のひとつである教育セミナーの詳細について説明します。
セミナー内容
セミナーは病態栄養認定管理栄養士の受験希望者向けと更新者向けに分かれて、講義形式で行われます。
受験者向けカリキュラム(研修時間6時間40分)
1.病態栄養の基礎知識
2.消化器疾患・呼吸器疾患
3.代謝疾患・その他の疾患
4.循環器疾患・腎疾患・血液疾患
5.栄養治療法と栄養補給法
6.栄養アセスメント
7.臨床研究・倫理指針について
日程
平成29年度においては、東京、大阪、福岡の3か所で4回の教育セミナーが行われました。
大阪 平成29年7月16日(日)
東京 平成29年7月23日(日)
福岡 平成29年7月23日(日)
東京 平成30年1月11日(木)
各日とも実施時間は、8時50分から16時15分まで。
受講料
会員 15,000円
非会員 20,000円
(いずれも昼食付の料金です)
申請書類
受験申請を行う際に提出する書類は以下の7点になります。
1.日本病態栄養学会の病態栄養認定管理栄養士認定申請書
2.日本病態栄養学会の会員歴
3.管理栄養士の免許証または登録証(写し)
4.医療施設長の証明書(所定の書式による)
5.本学会に関連する活動(10点以上)の証明書(所定の書式による)
6.症例記録(所定の書式による)
7.教育セミナー修了証
試験の難易度・合格率・試験対策方法
受験申請書類を提出し、認定委員会により受験資格が認められると、認定試験を受験することができます。認定試験の詳細は下記の通りです。
テスト形式・出題問題
筆記試験が行われます。
問題については、資格取得のための公式テキストとして学会が認定している「病態栄養認定管理栄養士のための病態栄養ガイドブック 改訂第5版」から出題されます。
実施日程
平成29年度は、11月19日(日)に東京、大阪、福岡の3会場で実施されました。
受験料
20,000円
願書について
教育セミナー時の調査票で「受験する」と回答した場合は、事務局より受験申請書類が届きます。
前年に教育セミナーを受講した場合や、「受験しない」と回答したが、受験を希望する場合は、平成29年7月31日までに、事務局へ受験申請書の送付を申し込む必要があります。
受験願書提出期限は、平成29年度は8月1日から8月31日まで。
試験対策方法
筆記試験の問題は、学会が認定する資格取得のための公式テキスト「病態栄養認定管理栄養士のための病態栄養ガイドブック 改訂第5版」から出題されます。
このテキストを使って行われる教育セミナーを受講したうえで、さらに内容をしっかり理解して、試験に挑みましょう。
認定更新について
認定資格取得後5年毎の資格更新が必要となります。
資格更新には、下記の要件を満たした上で、更新に必要な取得単位数を証明する書類等を認定委員会に提出します。認定委員会の審査に合格すると、資格更新の登録をすることができます。
認定期間
資格認定期間は5年間となります。
認定更新の条件
資格更新には、認定期間中に、下記の条件を満たしたうえで、5年ごとの認定更新が必要となります。
(1)認定期間中に通算3年以上、病院、診療所、保健所、市町村保健センター、老人福祉施設、介護老人保健施設などの医療機関で栄養管理業務に従事していること。
(2) 日本病態栄養学会主催の学術集会、セミナー、講習会などへの参加や、論文提出により、20単位以上を取得していること。
(3) 教育セミナーを1回受講修了していること。
(4) 栄養管理に関する新たな症例レポートを提出すること。
症例レポートの書き方、提出用紙とサンプルファイルのリンク先
受験申請時と認定更新時に提出する「症例記録(症例レポート)」の書き方などは、以下の通りです。
【書き方】
対象となる患者へ実際に行った栄養管理の詳細を記したうえで、問題点や今後の課題について考察します。
レポートの内容は、患者情報、主病名および合併症名、病歴、考察の項目があり、規定の提出用紙に沿って記入しますが、基本的な原則が満たされていれば、自由に記述しても良いとされています。
【提出用紙とサンプルファイルのリンク先】
提出用紙と症例レポートのサンプルについては、以下のサイトにリンクされていますので、ご確認ください。
>>日本病態栄養学会「7.病態栄養認定管理栄養士 症例レポート作成について」
更新審査料
5年ごとの更新時には、20,000円の更新審査料が必要です。
認定更新の申請手続き方法
認定更新の申請は、以下の3つの手順で行います。
1.認定期間満了の最終年初旬に、認定更新の詳細案内、更新申請書類、更新審査料の払込取扱票が、学会から届きます。
2.申請期間中に、更新申請書類、更新審査料の払込受領証のコピー、症例レポートを提出します。
3.認定更新が認定委員会によって審査され、認定の結果が通知されたのち、新しい認定期間が記載された認定証が届きます。
更新の猶予があるケース
更新手続きができない特別な事情がある場合のみ、更新手続きの猶予が認められます。
特別な事情とは、海外在留・長期病気療養、(法定)育児休業、家族の介護、栄養管理業務に関わらない業務への異動、進学となります。
更新の猶予を希望する場合は、特別な事情を記した書類を添付して、更新期間中に、更新猶予を申請します。
認定期間中に申請をしなかった場合や、更新猶予が認められなかった場合は、病態栄養認定管理栄養士の資格は失効します。
資格を失うケース
病態栄養認定管理栄養士の資格を失うケースは以下の通りです。
(1)認定更新期間中に認定更新の申請もしくは更新猶予の申請をしなかったとき。
(2)認定更新の審査において更新が認められなかったとき。
(3)病態栄養認定管理栄養士としてふさわしくない行為があったと認められたとき。
病態栄養認定管理栄養士の認定を得る4つのメリット
病態栄養認定管理栄養士の認定を得るメリットは大きく4つあります。
1つめは、最新の医学知識や病態栄養の知識や技術を身に着けることができること。
2つめは、研修会やセミナーに参加することで、勤務先以外の管理栄養士や医療従事者と交流する機会が持て、新しい情報を手に入れたり、相談をし合ったりと、知見を広められること。
3つめは、資格があることで、医療機関への就職や転職が有利になったり、待遇面で優遇されたりといったキャリアアップの可能性が高くなることです。
4つめは、病態栄養認定管理栄養士の認定者は、日本栄養士会との共同認定制度である「がん病態栄養認定管理栄養士」、「腎臓病病態栄養認定管理栄養士」、「糖尿病病態栄養認定管理栄養士」の認定にもチャレンジできるということです。より卓越した技術や知識を修得した専門領域のスペシャリストとして、さらに高い専門性を身に付けることができます。
医療機関で働く管理栄養士として、さまざま病態に適切な対応ができる知識を持ち、自信を持って食事療法を行うために、「病態栄養認定管理栄養士」の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
病態栄養についての関連書籍
教育セミナーを受講する際や試験勉強に必要となる公式テキストは、書店での注文かアマゾンなどネット通販にて購入可能です。
【書籍名】
「病態栄養認定管理栄養士のための病態栄養ガイドブック 改訂第5版」
一般社団法人日本病態栄養学会編 南江堂発行
【内容】
第 1 章 日本病態栄養学会の高度専門職業人認定とチーム医療
第 2 章 病態栄養の基礎知識
第 3 章 栄養アセスメントと栄養ケアプラン
第 4 章 栄養補給法
第 5 章 病態栄養と栄養療法
〈出典:日本病態栄養学会「教育セミナー」〉
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