保育園などで働く栄養士・管理栄養士さんの中で、保護者や保育士さんから離乳食や幼児食についての質問を受けて、「うまく答えられなかった」経験のある人はいませんか?
離乳食や幼児食について一般的な知識はあるものの、実際の悩みや相談に答えることができないこともあるかもしれません。
そんな悩みがある人は、いまいちど離乳食・幼児食を改めて学んでみてはいかがでしょうか。
そこで今回は、離乳食・幼児食の学びに役立つ「離乳食アドバイザー」「幼児食アドバイザー」という乳幼児の食事に関する専門資格をふたつ紹介します。
目次
離乳食は0歳児~1歳半まで!幼児食は1歳半~5歳までが目安
子どもの発達や成長は月齢や年齢ごとに成長が著しく、個人差も大きいものです。
とくに0歳から1歳半ぐらいまでの赤ちゃんのころは、歯や口腔の機能が未熟だったり、消化器官が十分に働かなかったりという心配があるため、細心の注意を払いながら食事を作る必要があります。
離乳食の目的と特徴
厚生労働省は、離乳を「母乳または育児用ミルク等の乳汁栄養から幼児食に移行する過程」の時期と定義しています。
そんな時期に食べ始める離乳食には、食物を噛んで飲み込むという行為を赤ちゃんに覚えさせ、食べられる食品の量と種類を徐々に増やすことで、赤ちゃんの成長に必要な「自立」を促すという目的があります。
とはいえ、離乳期にいる赤ちゃんの成長と発達のパターンは個々によって差が大きいため、子どもの個性に合った離乳食を作ることが肝心です。
離乳食の特徴は、赤ちゃんの離乳状態に合った食材を食べやすくして提供することにあります。
たとえば、おかゆは離乳食の代表的な献立です。
赤ちゃんの状態を見つつ、豆類や野菜、乳製品、海藻、脂肪の少ない肉類を食べやすく切ったり砕いたり、すりつぶしたりして調理する献立もあります。
また、消化器官の機能を鑑みると、味付けも極薄味もしくは味付けそのものが不要です。
赤ちゃんのころはとくに免疫力や抵抗力が弱いため、細菌感染など衛生には十分気をつける必要もあります。
◆参考:厚生労働省「Ⅱ 離乳編」
幼児食の目的と特徴
幼児食は、離乳が完全に終わった時期の子どもに与え始める食事。
おおよそ1歳半から5歳まで続きます。
離乳食が終わる幼児期になった子どもは、少しずつ大人が食べるのと同じような食事が食べられるように心身が成長していきます。
しかし、幼児食はあくまで子どもが食べるものですので、やはり噛む力や消化能力はまだ未熟であることは考慮しましょう。
乳児期と幼児期の最大の違いは歯が生えてくること、体の発達が進むことにあります。
よって、栄養士・管理栄養士には、子どもの歯の成長や心身の発達段階に沿った食事を提供するスキルが必要です。
幼児食は一般的に1歳半~5歳までの子どもに提供されるため、離乳食と比べて対象年齢が広いことも特徴。年齢ごとに食事の内容も少しずつ変わります。
たとえば、1歳ごろの子どもには手づかみしやすい食材を使ったり、前歯で噛み切れたりする程度のかたさで調理をすることがポイント。
もう少し成長した段階の3歳~5歳ごろの子どもには、1歳のころと比べて食べられる食材も増えますし、さまざまな形状に切った食材も口にできるようになってきます。
調理は、大人が食べるものよりも少しやらわかい程度に仕上げるのがコツです。
ただし、味つけの基本はやはり薄味。消化器官への負担上、離乳食同様に薄めが基本になります。
離乳食と幼児食は役割や調理のポイントが重なる部分もあれば、異なる部分もあります。
保育の現場で働く栄養士・管理栄養士には、子どもたちの成長や発達に応じた献立を適切に作り、子どもが生涯に渡って健康的な食生活・食習慣を送れる支援が求められます。
とはいえ、乳児期・幼児期の子どもの体や発達・成長に関する知識や適切な献立を考案するノウハウや調理方法を身に着けるのは自分ひとりでは難しいもの。
そこで「一般社団法人 母子栄養協会」が提供する「離乳食アドバイザー」と「幼児食アドバイザー」の取得がオススメです。
「離乳食アドバイザー」は離乳食の進め方や指導法も学べる
「離乳食アドバイザー」は、離乳食指導の理由・問題点など、離乳食の知識を体系的・理論的に学べる資格。
栄養士・管理栄養士以外にも、医師や看護師、保育士など、子どもの健康に関わる職業の人にもオススメです。
離乳食の基礎知識から、もう少し踏み込んだ応用的な内容まで学べるため、離乳食初心者の栄養士・管理栄養士や保護者の相談にうまく答えられなかったという経験のある人、改めて離乳食を学び直したい人にも役立つでしょう。
資格を取得するには、母子栄養協会が主催する講座を受講し、調理課題と在宅試験に合格する必要があります。
カリキュラム
カリキュラムは計5時間で、使用されるテキストは厚生労働省が発表している「授乳・離乳の支援ガイド2019改訂」に準じています。
1.乳児の身体発育と主な病態
2.食物アレルギーと事故予防 *より詳しいのは幼児食アドバイザーとなります。ここでは15分程度です
3.離乳食の基本
(昼休憩 12:15-13:15)
3.離乳初期
4.離乳中期
5.離乳後期
6.離乳完了期
7.食材別 離乳食での使い方
8.ベビーフードと粉ミルク
9.離乳食の指導・アドバイス
教材
教材は、講義で使うオリジナルテキストが一冊と、いざというときに頼りになるレシピ集、そして合格後に付与される資料の3冊です。
・離乳食アドバイザー養成講座 オリジナルテキスト
・離乳食レシピブック 「1週間分作りおき!フリージング離乳食」大泉書店
・離乳食指導に使える資料「まるわかり離乳食」(合格後)
また、認定バッヂと資格認定証も合格の証として付与されます。受講生全員には、協会のエプロンも。
費用
費用は、エプロン・認定バッヂ・ディプロマ込みで41,040円(税込)です。試験料はありません。
また、母子栄養協会が主催するほかの講座(「幼児食アドバイザー」など)を受講した人は「リピーター受講」という扱いになり割引が適用されるため、38,340円(税込)で受講可能になります。
「幼児食アドバイザー」で子どもの栄養バランスを習得
一方、「幼児食アドバイザー」は、子どもの栄養バランスに関する知識をいちから学べたり、子どもに食事をうまく食べさせる方法、食卓づくり、また幼児向けの食育に関する知識を深めたい人に向けた資格です。
子どもの食事と栄養のことを栄養士・管理栄養士は再度学び直すことができますし、食育に関わる職業の人なら誰でも楽しく勉強できる資格でしょう。
資格の取得方法は離乳食アドバイザー同様、講座を受講した後に調理と筆記の課題を在宅で行い、合格することです。
カリキュラム
こちらも離乳食アドバイザー同様、カリキュラムは5時間で構成されています。
以下が授業の内容です。
1.幼児のからだの成り立ちと発達
2.幼児に多い病気と消化によい食べ物
3.幼児期の食物アレルギー
(昼食休憩12:30-13:30)
4.幼児期の食問題とその解決
5.幼児に向いている食材献立作成のヒント
6.幼児向け食育
7.幼児食の指導・アドバイス
教材
幼児食アドバイザーの講座では、講座用のテキストとレシピブック、そして合格後に配布される資料を使います。
・幼児食アドバイザー養成講座テキスト
・幼児食レシピブック 「1週間分作りおき!フリージング幼児食1歳~5歳」大泉書店
・離乳食指導に使える資料「まるわかり幼児食」(合格後)
◆引用元: 母子栄養協会「幼児食アドバイザー養成講座」
また、幼児食アドバイザーでも合格後に認定バッヂとディプロマ、受講中にエプロンをもらうことができます。
費用
受講費に関しては、離乳食アドバイザーと同じ費用(リピーター受講費含む)、同じ内訳となっています。
会場情報
離乳食アドバイザー、幼児食アドバイザーともに講座の会場は同一で、母子栄養協会が指定しています。
東京都内であれば、飯田橋に3会場設けられており、開催日時によって指定される場所が異なります。ほかにも大阪、福岡会場も設けられているため、住んでいる地域に近い会場を選ぶことが可能です。
日時によってキッチンスタジオで受講する場合もあれば、貸し会議室を使う場合もあるため、参加申し込み時によく確認しておきましょう。
また、離乳食アドバイザー・幼児食アドバイザーともに受講は1日か半日×2日間。いずれかの日程を選べますが、1日講座の場合は子連れ参加ができません。
ただし、2日間半日講座の場合は平日の午前中であれば子連れ参加が可能です。
場所によっては平日であっても乳児連れの受講が不可な会場もあります。
離乳食アドバイザー・幼児食アドバイザーの開講スケジュールは、母子栄養協会のHPの以下のURLから確認できます。
◆参考: 母子栄養協会「講座カレンダー」
まとめ
子どもたちが少しでも健やかに、そして健全な成長・発達過程を踏んで、食事を楽しめるようになるには、栄養と食事のプロである栄養士・管理栄養士のサポートが欠かせません。
乳児期~幼児期にかけての子どもの成長スピードは速く、さまざまな配慮や注意点が必要となってきます。
だからこそ
「離乳食や幼児食の知識やレシピをもう一度おさらいしたい」
「保護者の相談にうまく答えられるようになりたい」
「もっと子どもの栄養に関する知識を学びたい」
という栄養士・管理栄養士は、ぜひ離乳食・幼児食アドバイザーの資格を取得してみてくださいね。
参考文献・サイト
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