飲食業界で活躍する「調理師」は、ただ料理を作るだけでなく、仕入れや衛生管理、チームのマネジメントなど、多岐にわたる業務をこなします。おいしい料理を提供するために、どのような仕事をしているのか気になる方も多いのではないでしょうか。また、「調理師になるには資格が必要なの?」「未経験からでも目指せる?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
ここでは、調理師の具体的な仕事内容や求められるスキル、就職状況のほか、調理師になる方法について詳しく解説します。
【この記事でわかること】
●調理師と名乗るためには国家資格である調理師免許を取得する必要がある
●病院、宿泊施設、学校など施設ごとに調理師の具体的な仕事内容は異なる
●調理師の給与・待遇は、就職先やポジション、地域で差がある

調理師として転職を考える際は、「自分がどんな料理を作りたいか」「どのような環境で働きたいか」を明確にすることが大切です。飲食店、宿泊施設、病院や学校など、職場によって求められる技術や働き方が異なります。例えば、レストランでは創造性やスピードが求められ、病院では栄養管理の知識が必要になります。
目次
調理師は調理師免許を取得しなければ名乗れない
調理師として働くためには、「調理師免許」の取得が必要です。これは法律で定められた資格であり、飲食業界で働いていても、免許がなければ「調理師」と名乗ることはできません。ただし、調理師免許がなくても飲食店の厨房で働くことは可能で、調理補助や見習いとして経験を積みながら、後に調理師免許を取得するケースもあります。
調理師免許は、厚生労働省が管轄する国家資格であり、以下の3つの能力を証明する免許です。
●食材の安全な取り扱い:食品の衛生管理や保存方法を理解している
●調理技術:基礎的な調理技術や専門的な技術を持っている
●栄養に関する知識:食材の栄養価やバランスの取れた食事の提供ができる
調理師免許があれば、調理に関する知識と技術を一定以上備えていることを証明でき、就職やキャリアアップにも有利になります。
調理師の仕事
調理師は、食材を調理し、安全でおいしい料理を提供するのが主な仕事です。そのために、調理だけではなく食材の仕入れや仕込み、衛生管理など、一連の業務を担当します。ここでは、調理師が行う具体的な仕事内容について解説します。
調理
調理師の主要な業務は、料理を作ることです。レストランやホテル、病院、学校の給食施設など、勤務先によって作る料理の種類やスタイルは異なりますが、基本的には食材のカットや下ごしらえ、調理、盛り付けなどを行います。
一般的な飲食店では、注文を受けてから調理を開始するため、スピードと正確さが求められます。一方、病院や学校給食で求められるのは、大量に調理する技術や栄養バランスを配慮した献立作成の知識などです。
食材の仕入れ・仕込み
料理をスムーズに提供するためには、食材の仕入れや仕込み作業が欠かせません。仕込みの段階で食材の鮮度を見極め、保存方法を工夫することも調理師の大切な役割です。また、無駄を出さないように効率よく食材を使う工夫も求められます。
衛生管理
調理師には、衛生管理を徹底することが求められます。特に食中毒を防ぐために、手洗いや消毒の徹底が必要です。また、食材の正しい管理や、厨房器具の清掃も重要なポイントになります。正しい管理や清掃を徹底することで、安全でおいしい料理を提供するだけではなく、食中毒や異物混入などのリスクを防げます。
調理師の就職先
調理師の活躍の場は幅広く、さまざまな業界で求められています。就職先によって、仕事内容や求められるスキルが異なるため、自分に合った職場を選ぶことが重要です。ここでは、調理師の代表的な就職先について解説します。
飲食店
調理師の就職先として多いのは、レストランや居酒屋などの飲食店です。飲食店には、チェーン展開している大規模な店舗から個人経営の小規模な店舗まで、さまざまな種類があります。飲食店での主な業務には、調理や盛り付けをはじめとして、食材の仕入れや在庫管理、メニュー開発、店舗の清掃や衛生管理などが含まれます。
飲食店で働く魅力は、料理の技術を磨けることや、新しいメニュー開発に携われることです。また、経験を積むことで、独立開業を目指すこともできます。
宿泊施設
調理師の就職先として、宿泊施設も挙げられます。宿泊施設のレストランや宴会場では、和食・洋食・中華など幅広いジャンルの料理が提供されており、バイキング、コース料理の提供、さらには結婚式や宴会向けの特別メニューの調理などが主な業務となります。
宿泊施設での仕事では、一度に大量の料理を作るスキルが求められます。さらに、繁忙期と閑散期の差が大きいため、忙しい時期を乗り越えられる体力や、暇な時期にも前向きに働けるメンタルの強さも大切です。状況に応じて柔軟に対応できる人に向いています。
教育機関
小学校や幼稚園などの教育機関でも、給食を作る調理師が活躍しています。子どもたちに安全で栄養バランスの取れた食事を提供することが主な役割です。具体的な業務としては、給食の調理と提供をはじめ、食材の仕込みやカット、栄養士と連携した献立作成などが挙げられます。
学校給食の仕事は、基本的に朝から昼過ぎまでの勤務が多く、夕方以降の勤務が難しい人に向いています。
病院・介護施設
病院や介護施設でも、調理師は欠かせない存在です。管理栄養士と提携しながら、患者や高齢者のための健康的で消化に良い食事を提供することが求められます。主な業務は、患者や入居者の状態に応じた病院食の調理をはじめ、食事の配膳や片付け、食材の管理や仕込み、厨房の清掃や食器洗浄などです。
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調理師の仕事の1日のスケジュール
調理師の仕事内容は、就職先によってさまざまです。例えば、飲食店で働く場合と学校給食の現場で働く場合では、勤務時間や業務の流れ、求められるスキルにも違いがあります。ここでは、それぞれの現場に所属する調理師の1日のスケジュール例をご紹介します。
飲食店の場合
飲食店で働く調理師は、営業時間に合わせて仕込みや調理、接客などを行います。店舗の規模や営業形態によって異なりますが、一般的にはランチタイムとディナータイムの営業に合わせ、早番と遅番に分かれて2交代制になっています。長時間労働になることもあり、不規則な勤務スケジュールになりがちなので、時間に融通がきく人、体力がある人に向いています。
■飲食店の調理師の1日のスケジュール例
教育機関の場合
教育機関の調理師は、子どもたちに安全で栄養のバランスの取れた食事を提供することが役割です。朝から昼過ぎまでの勤務が一般的で、決まった時間帯に給食を作り、規則正しいスケジュールで働けるため人気があります。ワークライフバランスを重視する人に向いています。
■教育機関の調理師の1日のスケジュール例
調理師免許を取得する方法
調理師として働くためには、調理師免許の取得が必要です。調理師免許を取得するには、以下の2つの方法があります。それぞれの状況に応じて適した取得方法は異なるので、自分にはどちらが向いているかチェックしてみましょう。
調理師養成施設を卒業する
調理師養成施設(専門学校や高等学校の調理科)を卒業すると、調理師免許が取得できます。2~3年の通学が必要になりますが、料理の基本技術だけでなく、食品衛生や栄養学などの知識も学ぶことができ、卒業後の就職のサポート体制も充実しています。卒業すれば自動的に調理師免許が取得できるため、確実に資格を得たい人におすすめです。
実務経験を積んだのち調理師試験に合格する
実務経験を積んだ後に、各都道府県が実施する「調理師試験」に合格することで調理師免許を取得できます。調理師試験の受験資格を得るには、飲食店や給食施設などで2年以上の実務経験があり、週に4日以上、1日に6時間以上働いていることが必要です。
調理師試験は6科目から出題され、合計得点が6割以上で合格となりますが、1科目でも平均点を著しく下回った場合は不合格となるため、まんべんなく勉強することが重要です。独学でも試験に合格可能ですが、調理師試験の対策講座や通信講座を活用することで、効率的に学習を進めることができます。
●食文化概論
●公衆衛生学
●食品学
●栄養学
●調理理論
●食品衛生学
関連情報:調理師免許とは?取得する方法や調理師試験の概要を解説
調理師の待遇
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、飲食物調理従事者の平均年収は約340万円です。給与は、勤務先、雇用形態によって差があり、特に都市部の飲食店では高い傾向にあります。
調理師の給与水準は、勤務先や雇用形態によって変わります。一般的な正社員調理師の場合、月給は20万~35万円程度が目安とされており、アルバイトの時給は1,100~2,000円程度が一般的です。
また、福利厚生としては、食事提供のための食材や調理器具の提供、職場内での食事提供(まかない)を支給されるケースが多く見られます。さらに、業界によっては、社宅が用意されていたり、交通費が補助されていたりすることもあります。
調理師として働くメリット
調理師として働くことには、さまざまなメリットがあります。調理師は人々に喜びを届ける仕事であると同時に、多様な働き方ができる職業でもあります。やりがいを感じながら、自分のスキルを活かして活躍できるのが、調理師として働く大きなメリットといえるでしょう。
作った料理を喜んでもらえる
料理を通じて人々に喜びを届けられることは、調理師として働く大きな魅力の1つです。自分が作った料理をお客様がおいしそうに食べてくれる姿を目の当たりにすることで、仕事のやりがいを実感できます。特に、特別な日の料理や思い出に残る一皿を提供できたときには、大きな充実感を得られるはずです。
また、病院や介護施設などの医療・福祉分野では、単においしい食事を提供するだけでなく、栄養バランスを考慮したメニューを通じて人々の健康を支える役割を担います。患者や高齢者の回復を促したり、生活の質を向上させる食事作りに関わったりすることで、社会に貢献している実感を持てるでしょう。食事の提供を通じて誰かの生活を支え、健康維持に貢献できる点は、達成感につながります。
就職先が多様である
調理師は、幅広い職場で活躍できる職業であり、就職の選択肢が多いことは大きな魅力です。一般的な飲食店だけでなく、ホテル、病院、学校、介護施設など、幅広い選択肢があります。また、料理研究家としてレシピ開発や食のトレンド発信に携わったり、食品メーカーで商品開発をしたりする道もあります。
さらに、独立して自分の店を持つこともできるため、将来的に起業も視野に入れられるでしょう。多様な選択肢があるため、ライフスタイルやキャリアの志向に応じて働き方を柔軟に決められる職業です。
技術が一生もののスキルになる
調理師として身に付けた調理技術や食品衛生、栄養の知識は、一生使えるスキルになるのも働く大きなメリットといえます。調理師の経験を積むほど技術が磨かれ、料理のクオリティやオリジナリティを高めることができます。また、飲食業界だけでなく、食品開発や料理研究家、フードコンサルタントなど、スキルを活かした多様なキャリアパスを描くことも可能です。
調理師として働くデメリット
調理師の仕事には多くのやりがいがありますが、一方で大変な面も少なくありません。特に、勤務時間の長さと肉体的な負担の大きさは、調理師として働く上での代表的な課題として挙げられます。仕事の特性を理解し、無理なく続けられる環境を選ぶことで調理師としてのキャリアを充実させることができるでしょう。
拘束時間が長い
調理師は、早朝から深夜まで長時間働くことが多い職業です。特に、飲食店やホテルのレストランでは、ランチとディナーの両方の時間帯に勤務することもあります。そのため、勤務時間が不規則になりやすく、シフトによっては長時間労働になることも少なくありません。
休日が不規則になりやすい
飲食業界では、土日・祝日や年末年始が繁忙期となるため、調理師は一般的な休日に休みにくい傾向があります。特に、レストランやホテルに勤務する場合は、友人や家族と予定を合わせるのが難しいこともあります。シフト制の職場が多いため、勤務スケジュールを事前に確認することが重要です。
肉体的な負担がかかる
調理師の仕事は基本的に立ち仕事であり、長時間にわたって動き続ける必要があります。特に、ランチやディナーの忙しい時間帯は休憩を取る時間が限られることもあり、足腰への負担が大きくなって疲労が蓄積しやすくなります。
また、繁忙期や週末には残業が増えることもあるため、体力的な負担を感じる人も少なくありません。忙しい職場で継続的に働くためには、十分な体調管理と疲労回復のための工夫が必要になるでしょう。
調理師に向いている人
調理師の仕事は、ただ料理を作るだけではなく、立ち仕事やチームワークを必要とする職業です。自分に調理師の適性があるか、以下のポイントを確認してみてください。
料理が好きな人
料理が好きな人や、料理を通じて人を喜ばせることにやりがいを感じる人は、調理師として長く活躍しやすいといえます。新しいレシピに挑戦したり、食材や調理法を研究したりすることが楽しいと感じる人にも向いています。また、流行の料理や海外の食文化に興味を持ち、常に学び続ける姿勢があると、より成長のチャンスが広がるでしょう。
体力に自信がある人
調理師の仕事は長時間の立ち仕事が基本であり、忙しい時間帯には素早く正確に動く必要があります。厨房は高温多湿な環境になることも多く、重い鍋や食材を運ぶ作業もあるため、体力に自信のある人が適しています。特に繁忙期には休憩を取る時間が限られることもあるため、ストレス耐性があるかどうかも働く上で重要なポイントです。
独立志向がある人
調理師として経験を積んだ後、自分の店を持つことを目標にする人も多くいます。独立には、料理の技術だけでなく、店舗運営や資金管理の知識、マーケティングスキルなども必要になります。独立後は、成功すれば収入アップも期待できますが、経営の厳しさを乗り越える覚悟も必要です。
調理師に必要なスキル
調理師として成功するためには、調理技術の習得だけではなく、メンタル面での柔軟性や体力、忍耐力、継続的な努力も欠かせません。飲食業界は変化が激しく、新しい調理法や食材が次々と登場するため、常に学び続ける姿勢も求められます。調理師として長く活躍するために、以下のスキルを身につけることが大切です。
柔軟性がある
調理師の仕事では、予測不能な事態に迅速かつ的確に対応する能力が求められます。例えば、仕入れた食材が不足した場合や予想以上の注文が入った際に、限られたリソースの中で最善の料理を提供するには、柔軟な発想力と適応力が不可欠です。また、顧客のニーズやトレンドの変化に素早く対応し、メニューの改善や新たなアイディアを取り入れることも重要になります。
好奇心がある
料理に対して好奇心旺盛な人は、調理師としての適性が高いといえます。料理の世界は日々進化しており、新しい技術や食材、調理法が次々と生まれているため、常に学び続ける姿勢を持ち、新しいトレンドや異国の料理に興味を持つことは、調理師としての成長に直結します。また、探究心を持って料理の背景にある文化や歴史を深く理解することで、より本格的で魅力的な料理を生み出せるでしょう。
忍耐力がある
長時間の立ち仕事や体力を消耗する作業も多いため、忍耐力が不可欠です。調理師の仕事は、厳しい上下関係や忙しい環境で行われることが多く、特に新人のうちは厳しい指導を受けることもあります。しかし、そうした状況を乗り越えることで、確かな技術と経験を身に付けることができます。
調理の仕事は体力的にハードですが、お客様の笑顔や「おいしい」の一言が大きなやりがいになります。新しい環境に飛び込む際は、スキルアップの機会を活かし、柔軟な姿勢で学び続けることが重要です。自分に合った職場を選び、理想のキャリアを築いてください!
調理師免許の取得は夢実現への大きな一歩
調理師は、料理の専門知識と技術を活かし、多様な職場で活躍できる職業です。調理師に興味がある方は、調理師免許の取得を目指し、夢への第一歩を踏み出しましょう。
調理師免許を取得したら、「栄養士のお仕事」に登録して、自分のスキルを活かせる仕事を探してみるのもおすすめです。専任のアドバイザーが転職の要望をヒアリングし、給与や就業条件などの交渉をサポートしてくれるため、安心して転職活動ができます。

よくある質問
調理師の仕事内容は?
調理師の仕事は、食材の仕入れや管理、仕込み作業、調理業務、衛生管理など、料理の提供に関わる一連の工程を担います。職場によっては、新メニューの開発やスタッフの指導・管理を任されることもあり、調理技術だけでなく運営面の知識も求められます。特に、効率的な仕込みと正確な調理が求められ、衛生管理の徹底も欠かせません。経験を積むことで、メニュー開発や経営に携わる機会が増え、キャリアの幅を広げることができます。
調理師として働くことのメリットは?
調理師の仕事は、料理を通じて人を喜ばせることができ、就職先の選択肢も豊富な点が大きなメリットです。さらに、経験を積めば独立・開業の道も開け、クリエイティブな仕事に挑戦することが可能です。ただ料理を作るだけでなく、技術を磨きながら成長できる職業であり、幅広いキャリアの選択肢があることも魅力の1つだといえます。やりがいを感じながらスキルを高め、自分の理想とする働き方を実現できるでしょう。
調理師に向いている人は?
調理師に向いているのは、料理が好きで探究心があり、体力や忍耐力に自信がある人です。長時間の立ち仕事や忙しい現場でも冷静に対応できる精神的な強さが求められます。また、厨房はチームで動くため、協調性があり、周囲と円滑にコミュニケーションを取れることも重要です。さらに、経験を積めば独立・開業の道も開けるため、将来的に自分の店を持ちたい人にとっても魅力的な職業といえるでしょう。
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