栄養士・管理栄養士の就職先として、病院は人気が高く、従事者も多い職場です。
総合病院や急性期病院を就職先として思い浮かべる人もいるでしょうが、特定科の専門病院も就職の選択肢のひとつ。
たとえば、精神科病院を選ぶ栄養士・管理栄養士もいます。
ただし、精神科病院は、総合病院などと比べると少しマイナーな印象もあるため、スキルアップの方法はあまり知られていないかもしれません。
そこで今回は、精神科治療に関わる管理栄養士のスキルアップに役立つ「日本精神科医学会認定栄養士」という認定制度を紹介します。
現在精神科病院へ勤務している人も、精神科への転職を志望する人もチェックしてみてくださいね。
目次
精神科医療のスキルアップにピッタリ!「日本精神科医学会認定栄養士」とは
「日本精神科医学会認定栄養士」は、精神科医療の質向上や精神障害者の人権擁護、社会復帰の支援を目的とする「日本精神科病院協会」が主催する認定制度です。
日本精神科病院協会では精神科医療に関わる人たちに向けて研修会や通信教育といった活動も行っており、そのなかのひとつに「日本精神科医学会職種認定制度」があります。
日本精神科医学会職種認定制度とは、精神科医療に従事する人たちの知識や技術、資質の向上をはかる制度のこと。
日本精神科医学会認定栄養士は、この職種認定制度の一環として設けられました。精神科病院をはじめとした医療施設や保健福祉施設などに常勤する管理栄養士を対象としており、精神科医療に関わる管理栄養士としての役割認識や素養、技能や見識のブラッシュアップを目的としています。
日本精神科医学会認定栄養士の取得方法
日本精神科医学会認定栄養士を取得するには、所定の要件を満たし、審査に合格する必要があります。
認定期間は5年となっているため、更新も必要です。
万が一更新の手続きを行わなかった場合や日本精神科医学会の会員資格が失くなった場合は、資格が停止・失効になります。
また、主催元から資格の保有者として不適格だと判断された場合は取り消しになることもあります。
取得には4つの要件をすべて満たす必要あり
日本精神科医学会認定栄養士の取得要件は、以下のとおりです。
1)現在、日本精神科医学会会員(正・準)であること。
2)現在、医療保健機関等に勤務する常勤の管理栄養士であり、管理栄養士の臨床経験が
通算 5 年(60 ヶ月)以上あること。
3)日精協主催の通信教育「STANDARD コース」《旧・基礎コース》を修了していること。
4)日本精神科医学会主催「日本精神科医学会認定栄養士研修会」を5年以内に修了して
いること。
※平成 27 年度から通信教育のコース名称が変更になりました。
◆引用元:公益社団法人 日本精神科病院協会「日本精神科医学会認定栄養士~認定申請のご案内~」
日本精神科病院協会の会員病院か、その併設施設に勤務中の人は日本精神科医学会の正会員として認定されます。
それ以外の病院や医療施設に勤務中の人は、準会員として日本精神科医学会に入会する必要があります。
また「臨床経験5年」とは、管理栄養士として病院に従事していた年数が5年間あることを指すため、精神科病院以外の病院での勤続年数も含まれます。
ただし、管理栄養士ではなく「栄養士」としての勤続年数である場合は、要件を満たさないので注意が必要です。
たとえば、最初の2年間を栄養士として働き、その後管理栄養士の資格を取って3年間働いたとしても、臨床経験5年の要件は満たせないことになっています。
純粋に管理栄養士として勤続した年数のみが要件のため、ご注意ください。
通信教育で精神科医療の基礎を習得!
日本精神科医学会認定栄養士を取得するには、学会が主催している通信教育を受ける必要もあります。
通信教育には受講の対象が異なるコースが4つ用意されており、日本精神科学会認定栄養士を目指す人は「STANDARD コース(旧:基礎コース)」を受講します。
STANDARDコースは精神科医療に従事する人たちの資質向上と意欲喚起を目的として、精神保健福祉士法や最新の精神科医療に関する情報、精神科における栄養学など、さまざまな観点から精神科医療の基礎を学んでいきます。
受講費用は正会員・準会員ともに52,000円です。
定員は500人で、受講期間は例年4月~翌年3月までの1年間。
教材はテキスト6冊ですが、1日間のスクーリング参加が必要です。
カリキュラムは下記をご確認ください。
1.精神障害と精神科医療
2.こころのしくみと働き
3.精神科疾患
4.精神科看護
5.精神科作業療法 / 栄養と食事
6.精神障害者の社会復帰と福祉
◆引用元:日本精神科病院協会「コース概要」
スクーリングでは病院見学、講義、グループミーティングなどを行う予定です。
受講の申し込みは公式HPから行えます。
◆参考:日本精神科病院協会「受講案内」
研修会は2日間!精神科医療に関わる人なら誰でも受講可
日本精神科医学会認定栄養士研修会の受講も、認定取得の要件です。参加を申し込むには、必要事項を記入した「受講申込書」をFAXで送信します。
認定栄養士研修会の受講自体は、日本精神科医学会の正会員・準会員以外の人もできます。
ただし、栄養士・管理栄養士以外も含む「精神疾患を有する者の医療施設・保健福祉施設等に勤務する方」が、受講できる人の条件です。
また、先着100名制となっているため早めに申し込む方が堅実でしょう。
参加費用に関しては、正会員・準会員は15,000円、それ以外の人は20,000円です。
研修会は2日間の開催となっており、講義の一例は下記のとおりです。
・精神科における栄養管理と薬の影響について
・統合失調症、うつ病、摂食障害の栄養管理と栄養指導
・「地域移行支援のために食生活を視野に入れた多職種の
役割」
◆引用元:日本精神科病院協会「認定栄養士研修会」(2019年7月3日)
講義によっては、プレゼンテーションや討論の時間が設けられています。
2日間の研修会を修了した人には、最後に修了証が発行される予定です。
認定取得には3つのステップがある
認定を取得するには、おおまかに3つのステップがあります。
①申請書類の提出・費用の振り込み
②一次審査の合格
③二次審査の合格
費用は先払いとなっており、一次審査と二次審査の費用を合わせて15,000円です。
申請に必要な書類
申請の際に提出が必要な書類は以下の一式です。
・新規申請書
・履歴書
・勤務中の医療保健機関などの施設管理者に記入してもらう出張許諾書
・通信教育「STANDARDコース」(旧名「基礎コース」)の認定証書の写し
・「日本精神科医学会認定栄養士研修会」の受講証書の写し
・写真(縦4cm×横3cm)2枚(履歴書用・認定証用)
◆参考:日本精神科病院協会「日本精神科医学会 認定栄養士」
一次審査・二次審査の概要
一次審査は書類審査のみとなっています。上記の申請書類の審査に通過すれば、二次審査の案内として受験票が届きます。
なお、一次審査で不合格となった場合、先払いしていた費用のうち二次審査にかかる料金は返金される予定です。
二次審査は面接と筆記試験で構成されており、筆記試験では小論文と選択問題が出題されます。
合格すると日本精神科医学会認定栄養士の認定証書と認定バッジが送られますが、不合格の場合は通知と一緒に申請書類が返却されます。
5年ごとの更新が必要!課題の提出も忘れずに
日本精神科医学会認定栄養士は、5年ごとに更新が必要です。
更新に際しては、所定の提出書類と一緒に「指定された研修会の受講」と「事例報告の提出」が必須となっています。
提出書類の詳細はこちらに記載があります。
◆参考:日本精神科病院協会「日本精神科医学会 職種認定制度 ~認定栄養士 更新申請のご案内~」
事例報告のテーマは、提出書類の一種である「更新申請書」に同封される形で通知があります。
また、2013年までに認定された人と2016年以降に認定された人では、研修会参加に関する条件が少々異なっているため、確認が必要です。
2013年までに認定された人
①~④までの研修会のいずれかに1回以上参加し、修了証を取得することが条件。
①日本精神科医学会学術大会
②日本精神科医学会学術教育研修会「栄養士部門」
③日本精神科医学会認定栄養士研修会
④全国精神科栄養士研修会(主催:全国精神科栄養士協議会)
2016年以降に認定された人
①~③までの研修会のいずれかへの1回以上の参加と、④に1回以上参加することが条件。くわえて、前者・後者の修了証書の取得も必要です。
①日本精神科医学会学術大会
②日本精神科医学会学術教育研修会「栄養士部門」
③日本精神科医学会認定栄養士研修会
④全国精神科栄養士研修会(主催:全国精神科栄養士協議会)(必須)
2016年以降に認定を受けた人は、④全国精神科栄養士研修会への参加が必須となった部分が、以前の条件から変わったポイントです。
なお、事例報告書のフォーマットや作成の方法は以下のURLから確認できます。
◆参考:日本精神科病院協会「日本精神科医学会 認定栄養士」
◆参考:日本精神科病院協会「日本精神科医学会 職種認定制度 ~認定栄養士 更新申請のご案内~」
更新の際は認定審査料として10,000円を振り込む必要がありますが、振り込みのタイミングは申請書類の郵送後1週間以内です。
更新にかかる審査結果は例年12月ごろに通知され、再度認定証をもらうことができます。ただし、更新の場合は認定バッジはありません。
更新の申請は1年間の延長が認められているため、延長希望の人は日本精神科病院協会の事務局まで問い合わせてみましょう。
まとめ
日本精神科医学会認定栄養士の認定は、精神科医療に関する基礎知識を学べる機会となるため、精神科医療の現場で働く管理栄養士のスキルアップにつながります。
精神疾患や障害を抱えた患者さんのなかには、低栄養状態や生活習慣病も抱えている人も少なくないといわれているため、精神科治療における栄養面・食事面からのアプローチは重要な役割を果たすこともあります。
◆参考:足立区精神科病院「東京足立病院の栄養科|入院食・入院中の食事」
精神科治療に関して、もっと自分にできることを増やしたい人や知識や技術を勉強してみたい人は、ぜひ日本精神科医学会認定栄養士の取得を検討してみてくださいね。
参考文献・サイト
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