10年後、管理栄養士としてどのような未来を描いていますか?
病院に勤める管理栄養士の主な業務内容が献立考案だった時代は終わり、栄養管理の結果をもって病院経営に貢献できるマネジメントスキルを兼ね備えた管理栄養士が求められています。その役割を果たせるのが「栄養経営士」です。
10年後も管理栄養士として必要とされるために、「栄養経営士」の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
ここでは、栄養経営士の定義や必要なスキル、主な活躍の場や資格取得の方法などについてご紹介します。
目次
栄養経営士とは
栄養管理のチームマネジメントに関する臨床スキル、コミュニケーションスキル、リスクマネジメント、コンプライアンス、人材育成など多岐にわたる知識を習得し、かつ、実務の現場において広くその知識・経験を発揮できる、「栄養管理の経営」を担う専門職です。
〈出典:一般社団法人 日本栄養経営実践協会〉
上記の定義のとおり、栄養経営士は栄養管理チームにおけるマネジメントや経営についての専門家です。
栄養経営士は一般社団法人 日本栄養経営実践協会が主催・認定している民間資格です。
2014年5月に日本栄養経営実践協会が設立され、2015年11月に第1回「栄養経営士」資格認定試験が実施されました。
認定者数
2015年の第1回資格認定試験から2017年6月に実施された第4回資格認定試験までの累計は以下のとおりです。
累計合格者数:573 人
累計受験者数:750 人
合格率:76.4%
年齢別の数字
受験者数や合格者数、合格率を年齢別にみていきましょう。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
29歳以下 | 127 | 108 | 85.0% |
30歳以上39歳以下 | 290 | 241 | 83.1% |
40歳以上49歳以下 | 227 | 159 | 70.0% |
55歳以上59歳以下 | 97 | 61 | 62.9% |
60歳以上 | 9 | 4 | 44.4% |
受験者数を年齢別に見ると30代が38.7%で最多、次いで40代が30.3%です。20代は16.9%と比較的少ない傾向にあります。
これは、20代前半では受験資格の「管理栄養士としての実務経験2年」を満たしている人が少ないことや、20代の管理栄養士は実践的な経験を積む段階で、経営的な視点の必要性を感じはじめるのが30代以降であることが多いといった点が要因だと考えられます。
年齢別の合格率を見ると、年齢が上がるにつれて合格率が低下していることがわかります。
職場別の数字
受験者数や合格者数、合格率を職種別にみていきましょう。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
病医院 | 605 | 490 | 81.0% |
介護福祉施設等 | 100 | 56 | 56.0% |
栄養関連企業 | 18 | 9 | 50.0% |
行政関連施設 | 7 | 4 | 57.1% |
その他 | 20 | 14 | 70.0% |
職場別に見てみると、受験者数・合格者数ともに病医院だけで80%以上を占めていることがわかります。
栄養経営士に必要な能力
認定元である一般社団法人日本栄養経営実践協会では、栄養経営士に必要な能力として以下の六つを挙げています。
現状分析・評価能力
院内・施設内において所属の栄養部門の立ち位置や求められていることを明確に認識する能力が必要です。
目標設定能力
所属の栄養部門としての目標を設定する能力が重要です。目標設定することで、各チームメンバーは適切な研鑽を行うことができます。
適材適所の人事能力
メンバーの性格を的確に把握し、成長していけるように適所へ配置する能力が求められます。例えば、傾聴することに適した性格のメンバーは栄養指導に適し、高い業務処理能力と瞬時の判断に優れたメンバーはICUなどのスピードを要する業務が適しているでしょう。
人事評価能力
各メンバーを適正に評価する能力が必要です。成果やスキル、努力などを適切に評価することでメンバーのモチベーションを高めることができます。
アウトカムの評価・分析能力
仕事の結果を客観的に評価し、良かった点と悪かった点を認識し、その原因を分析してプランの見直しをする能力が大切です。このサイクルを繰り返すことによって、チームの仕事の質を高めることができます。
病態把握能力・教育
さまざまな症状が絡み合う患者の病態を適切に把握する能力、またその知識を医療の専門教育を受けていてないチームメンバーに伝える教育スキルが求められます。
栄養経営士の活躍の場
先ほど述べた職場別の合格者数から、多くの栄養経営士が病院で活躍していることが推測できます。二番目に多いのは、介護福祉施設です。
栄養経営士は、食材のコストや人件費、栄養指導件数などを適切に把握しマネジメントをすることによって、病院や介護福祉施設の経営に貢献しています。このように経営の視点やマネジメントができる職員がいま必要とされているのです。
どの職場においても収益や経営に関することは大事な知識であり、その知識を兼ね備えた栄養経営士は必要な存在といえるため、今後はさらに活躍の場を広げていくことでしょう。
栄養経営士の給料
栄養経営士は2015年にはじまった新しい資格のため、給料についての情報は見当たりませんでした。
民間資格であることから資格手当は望めないかもしれませんが、資格取得者の今後の活躍によっては採用時に優遇されたり、基本給をアップしてもらえたりすることがあるかもしれません。
資格を保有していることで任される業務の幅が広がり、そこで活躍することによって、今後のキャリアアップにつながる可能性があります。
栄養経営士の資格取得方法
栄養経営士の資格の取得方法をご紹介します。
認定までの流れ
栄養経営士資格認定基礎講習の内容
認定試験の受験資格の一つである、栄養経営士資格認定基礎講習。その内容について詳しくみていきましょう。
栄養経営士資格認定基礎講習とは
自身の業務を振り返りながら、今後栄養管理の専門職として生き残るためにどうすべきかを「栄養経営」の概念に基づいて考えていくことを目的とした講習です。
資格、年齢、学歴、職業、国籍等は問わず、誰でも受講できます。
受講のスタイル
直接講義を受ける「会場受講」と、自宅で視聴できる「DVD受講」があります。
会場は決定次第、日本栄養経営実践協会のホームページに掲載されます。会場受講とDVD受講の詳細は下記のホームページをご確認ください。
日本栄養経営実践協会
▼会場受講を選択したい方は下記のホームページからエントリーができます。
会場受講のエントリー
▼DVD受講を選択したい方は下記のホームページからエントリーができます。
DVD受講のエントリー
講習料
8,000円(税込)
時間
10:00~17:00の予定(会場受講の場合)
講習内容
「栄養経営士」に必要な能力について
- 院内・施設内における栄養部門の現状分析
- 目標設定能力と達成に向けた実践的アプローチ
- 業務の質を高めるためのアウトカム分析
- 「栄養経営士」に求められる教育と人事能力
- 適材適所の組織マネジメント
- 病態の把握能力
レポートの提出
DVD受講の場合は、レポートの提出が必要です。同封してある専門用紙に、映像の途中で表示される課題についてレポートをまとめます。
提出期限までに日本栄養経営実践協会へ郵送してください。
認定試験の受験資格
「栄養経営士」資格認定試験を受験するには、以下の二つの受験資格を満たす必要があります。
- 「栄養経営士」資格認定基礎講習の修了
- 栄養経営士資格認定試験実施日に管理栄養士としての実務経験が満2年経過していること
認定試験の詳細
認定試験について詳しくご紹介します。
試験時間
[試験開始時間] 10:15(開場/9:30、着席/10:00)
[試験終了時間] 11:35
出題科目
- 病棟業務管理
- コスト管理
- 組織マネジメント
- 人材教育マネジメント
- 多職種協働コミュニケーション
- 病態栄養
試験時間・出題形式等
[制限時間] 80分
[出題形式] 五肢選択方式、マークシート形式
[出題問数] 50問
合格基準
総得点の6割程度
受験料
8,000円(税込)
書類の提出
受験料の支払いと書類の提出をもって、受験申込完了となります。
試験日程・開催頻度
6月・11月頃 毎年2回
合格発表
7月・12月頃
合格発表日より2週間、日本栄養経営実践協会のホームページに合格者の受験番号が掲載されます。
管理栄養士が栄養経営士の資格を取得するメリット、やりがい
資格を取得することによって、病院や施設全体のことを考えられるようになり、他職種からの信頼を得やすくなるでしょう。
経営や人材育成の知識があることによって、起業やフリーランスといった道を選択することもでき、働き方の選択肢が広がります。
現在必要とされているマネジメントスキルが学べ、医療施設の中枢となれるような人材育成を行う栄養経営士。注目度はますます上がっていくことが予想され、管理栄養士のステップアップとしておすすめの資格といえます。
参考文献・サイト
栄養士の就職・転職なら「栄養士のお仕事」におまかせ!
栄養士/管理栄養士の転職をサポートする『栄養士のお仕事』にはさまざまな求人情報を掲載しています。
あなたにピッタリの求人や好条件の非公開求人などもあるので、気になる方は下の画像をクリック!