キャリアアップ・資格

在宅訪問管理栄養士とは?必要とされる理由や仕事内容、資格の取得方法

高齢化が進む日本において、高齢者の健康管理に対するニーズが非常に高まっています。それに伴い医療サービスの多様化が進み、近年では病院に通わなくても、自宅で医療ケアや介護が受けられるサービスの普及が推進されています。栄養管理の分野でも、通院が困難な方に向けて在宅で栄養指導や食事指導を行う「在宅訪問管理栄養士」が注目されはじめています。
ここでは訪問栄養食事指導のプロフェッショナルである「在宅訪問管理栄養士」について、定義や仕事内容、資格取得の方法などをご紹介します。介護や医療に関してご興味のある方をはじめ、「訪問する」という新しい管理栄養士の働き方を、選択肢のひとつとして検討する際に、ぜひご覧になってみてください。

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在宅訪問管理栄養士とは

「在宅訪問管理栄養士」は、「療養者が在宅での生活を安全かつ快適に継続でき、さらにQOLを向上させることができる栄養食事指導(支援)の技術を備えた管理栄養士」であることの認定です。
〈出典:公益社団法人 日本栄養士会

すなわち在宅訪問管理栄養士は、療養者が住み慣れた自宅で安心して生活できるように、食事の面からサポートする専門職です。時にはそのご家族や介護者がもつ、療養者の食事や栄養面についての悩みや心配事に耳を傾け、生活の質が向上するように支援を行っていきます。高齢者が増えたいま、全国各地でこの取り組みの充実が期待されています。
「在宅訪問管理栄養士」制度は、公益社団法人 日本栄養士会と全国在宅訪問栄養食事指導研究会(現・一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)による認定で、2011年度からスタートしました。平成29年までの認定者数は684人で、認定者は全国各地の医療機関などで活躍されています。

なぜ今、在宅訪問管理栄養士が必要とされているのか?

高齢者が住み慣れた地域でその人らしい生活を長く続けていけるように、地域が広範囲で支援・サポートする体制が近年注目されています。このような体制は「地域包括ケアシステム」と呼ばれ、2025年までの実現を目指して国を挙げてシステムの構築が進められています。この取り組みの影響もあり、自宅で生活をする高齢者が増えています。
また、自宅で暮らす高齢者は、栄養指導を受ける機会や食事を提供してもらえる機会が少なく、介護施設や病院で生活している高齢者よりも低栄養状態やフレイル(健康な状態と要介護状態の中間)になりやすい環境にあります。
そのため、自宅で栄養ケアサービスが受けられる「在宅訪問栄養指導」は、ニーズが高まっているサービスの一つといえます。

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在宅訪問管理栄養士の主な活躍の場

在宅訪問管理栄養士の主な職場は、病院・クリニック・診療所といった医療機関です。医療機関に勤めている管理栄養士は医師の指示のもと、対象となる方に対して訪問栄養食事指導を行います。
管理栄養士が訪問栄養食事指導を行えるのは、上記の医療保険適用の在宅患者訪問栄養食事指導ができる事業所(病院や診療所など)のほかに、介護保険適用の指定居宅療養管理指導事業所があります。基本的に訪問栄養食事指導を行うためには、この二つの事業所のどちらかに従業していることが必要ですが、事業所と契約して行うことも可能です。日本栄養士会が運営する栄養ケア・ステーションに所属している管理栄養士やフリーランスの管理栄養士は、指定事業所と契約することで訪問栄養食事指導を行っています。
最近では薬局が在宅訪問栄養指導のための管理栄養士を採用するなど、徐々に活躍の場は広がっています。

下記のサイトでは在宅療養支援診療所について検索することができます。検索する都道府県によっては、在宅訪問栄養食事指導についての検索結果がない場合もありますが、ぜひご参考にしてください。
【在宅療養支援診療所のご紹介サイト 「日本訪問診療機構」

在宅訪問管理栄養士の具体的な仕事内容

在宅訪問管理栄養士は、自宅にお住まいの患者さんに対して訪問栄養食事指導を行います。訪問栄養食事指導には、介護保険適用サービスである「居宅療養管理指導」と、医療保険適用サービスである「在宅患者訪問栄養食事指導」の2種類があります。どちらも医師の指示に基づき、月1~2回患者さんの自宅へ訪問して30分以上の栄養指導を患者さんやそのご家族へ行います。
患者さんによって、食欲の有無や嗜好、栄養状態、嚥下機能などは大きく異なるため、在宅訪問ならではの生活環境を加味した栄養食事指導を行う必要があります。例えば、料理が苦手な方には冷凍食品やレトルト食品を活用した調理指導、嚥下機能が低下した方にはご自宅の調理器具を使ってトロミのつけ方の指導やむせにくいメニューの提案、近くにコンビニしかない場合はコンビニでの商品選びのポイントをレクチャーするなど患者さんに合わせた指導をします。
訪問栄養指導終了後は、医師や看護師、ケアマネジャーなどの他職種と連携して栄養ケア計画書の作成・見直しや評価を行い、継続や終了の判断をします。

下記では、訪問栄養食事指導を利用できる対象者や対象食の例、実施内容についてご紹介します。

対象者

通院(居宅療養管理指導の場合は〝通所〟も含む)が困難な方のうち、食事管理が必要で在宅療養されている患者やその家族

対象食の例

  • 腎臓病食、肝臓病食、糖尿病食、高血圧に関する減塩食などの特別な食事管理が必要な方
  • 嚥下困難者のための流動食
  • 低栄養状態に対する食事
  • がんに対する治療食(在宅患者訪問栄養指導の場合)など
  • 実施内容

  • 居宅療養管理指導・・・医師や看護師などの関連職種とともに栄養ケア計画を作成し、情報提供・指導やアドバイスなどを30分以上行う。栄養ケア・マネジメントに沿って栄養状態のモニタリングや栄養ケア計画の見直しを行う。
  • 在宅患者訪問栄養指導・・・以下の通りです。
  • ※地域包括ケアシステムの取り組みの強化や在宅患者それぞれに応じた適切な指導ができるように、診療報酬の改定が行われました。
    平成28年度の診療報酬改定により「在宅患者訪問栄養食事指導」の実施内容と対象食が変更されています。

    以前まで 平成28年度から
    実施内容 調理を介して実技を伴う指導を30分以上行う 食事の用意や摂取などに関する具体的な指導を30分以上行う(調理実技は必須としない)
    対象食 厚生労働大臣が定める、特別食を必要とする患者 厚生労働大臣が定める特別食を必要とする患者、がん患者、摂食機能もしくは嚥下機能が低下した患者または低栄養状態にある患者

                            
    参考: 厚生労働省保険局医療課 平成28年度診療報酬改定について

    在宅訪問管理栄養士の資格を取得することで給料が上がるのか?

    在宅訪問栄養指導を行うこと自体は、管理栄養士であれば実施可能です。しかし、日本栄養士会と全国在宅訪問栄養食事指導研究会が認める「在宅訪問管理栄養士」を名乗るためには、認定試験を受けて合格する必要があります。
    この資格は、2011年度にスタートしたばかりで現在普及が進められている段階です。そのため在宅訪問管理栄養士の求人数は少なく、資格手当や資格取得者の優遇などの待遇アップの記載はほとんどないのが現状です。しかし国は現在、介護保険制度で「地域包括ケアシステム」の実現を強化しているので、今後、在宅訪問管理栄養士の待遇がアップする可能性はあるでしょう。

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    在宅訪問管理栄養士になる方法

    在宅訪問管理栄養士になるためには、どのようなステップが必要なのでしょうか。流れに沿ってみていきましょう。

    認定までの流れ

    ①日本在宅栄養管理学会ホームページより資料請求

    在宅訪問管理栄養士になるために、まずは下記の日本在宅栄養管理学会ホームページより資料請求をしましょう。資料をよく読み、認定試験の受験資格や諸々の費用、試験の開催場所などを把握してから申し込むようにしましょう。
    「資料請求の申し込み」

    ②在宅訪問管理栄養士インターネットカレッジの受講

    資料請求後、下記の受講料を入金し、インターネットカレッジの受講を開始します。このサービスはパソコンを使用して研修を受講できるシステムで、ご自身の都合のよい時間や場所を自由に設定して視聴することが可能です。このプログラムの受講を修了することが「在宅訪問管理栄養士」の受験資格の一つとなります。

    受講資格

    〝在宅訪問栄養食事指導に興味のある管理栄養士〟 
    ※資格認定試験には後述の要件が必要です。

    受講期間

    2018年4月6日(金)~ 2019年3月31日(日)
    ※12月の認定試験を受験する場合は、9月30日(日)までにファーストステップまでの学習を修了する必要があります。

    申込締切

    2018年8月31日(金)
    ※12月の認定試験の受験を希望する方で、9月30日(日)までにファーストステップまでの受講が修了可能と判断された場合は、申込み締切日を延長することもあります。

    受講料

    日本在宅栄養管理学会会員:33,800円(税込)
    日本在宅栄養管理学会非会員:42,800円(税込)(入会金、年度会費含む)※申し込みと同時に日本在宅栄養管理学会へ入会する必要があるため

    内容

    1. 事前学習プログラムと確認テスト(30問)
    2. →在宅療養者(高齢者・障がい者)の実態、関連法令(介護保険・医療保険)など

    3. ファーストステップ学習プログラム(約7時間30分)
    4. →在宅での他職種連携の意義と方法、訪問栄養食事指導の流れなど

    ③セカンドステップ学習&認定試験受験申し込み

    在宅訪問管理栄養士インターネットカレッジの受講を終えると、次はセカンドステップ学習および認定試験の受験申し込みを行います。認定試験の受験資格や開催場所・日時・申し込み期間などを確認の上、期日までに忘れずに申し込むようにしましょう。

    認定試験の受験資格

    1. 日本栄養士会の会員および日本在宅管理学会の正会員で管理栄養士であること
    2. 管理栄養士の登録後5年以上経過し、病院・診療所・高齢者施設などで管理栄養士として働いた日数が合計900日以上(約3年6ヶ月以上の期間)であること
    3. インターネットカレッジの受講を修了していること

    申込期間

    2018年10月1日(月)~31日(水)

    受験料

    10,800円(レポート審査料を含む)

    ④セカンドステップ学習・認定試験の実施

    申し込みを終えたら、次はセカンドステップ学習と認定試験を受けます。セカンドステップ学習は、事例による実戦形式トレーニング(例:腎臓病の訪問栄養指導など)を用いたワークショップ形式で行われます(1.5日約9時間)。認定試験は60分のマークシート形式で、セカンドステップ学習終了後に行われます。

    開催時期

    2018年12月1日(土)、2日(日)に関東地区で実施予定です。
    平成29年度(平成29年12月2日~3日実施)の試験概要は以下のとおりです。

    1日目:セカンドステップ研修10時~17時
    2日目:セカンドステップ研修9時30分~14時20分、認定試験14時40分~15時40分

    ⑤在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポートを提出

    試験合格後、在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポートを提出します。ご自身が実際に行った訪問栄養食事指導 1 症例に関して、具体的な指導内容などをレポートにまとめます。合格通知後、2ヶ月以内に提出する必要があります。

    ⑥「在宅訪問管理栄養士」認定

    レポート審査に合格すると、「在宅訪問管理栄養士」の資格認定となります。

    資格の有効期間

    認定日より5年 ※認定の更新あり

    認定料

    10,800円

    認定者

    公益社団法人日本栄養士会、一般社団法人日本在宅栄養管理学会

    更新料

    7,560円/5年ごと

    ※認定の更新について
    認定を受けてから更新するまでの5年間に、学会・研修会などへの参加や発表などで20単位以上を取得し、更新用レポートを所定の方法で提出する必要があります。(単位が受けられるのは、日本栄養士会および日本在宅栄養管理学会が「在宅訪問栄養食事指導において必要な知識や技術を得るのに適している」と判断されたもの)

    認定試験の難易度・合格率

    2016年度では、セカンドステップ・認定試験にて受験者の約6割が合格しています。筆記試験だけではなくワークショップまで受ける必要がある2日間の資格試験は、一般的な試験より労力がかかるといえます。高いハードルの受験資格に加えて、労力が必要な試験にも関わらず約6割の合格率は、難易度が高いといえるのではないでしょうか。
    また、2018年までに約2000名の管理栄養士がe-ラーニング(在宅訪問管理栄養士インターネットカレッジ)を受講し、そのうち684名が認定を受けています。e-ラーニングを受講した後、試験を受けなかった人もいるかもしれませんが、e-ラーニングを含めた全体の合格率は約34%です。

    管理栄養士が在宅訪問管理栄養士の認定を受けるメリット・やりがい

    資格の認定を受けると、在宅訪問栄養指導のスペシャリストとして認められたことになります。在宅訪問は医師や看護師等が付き添わず基本的に一人で栄養ケアを行います。直接同じ職場で働いていないこともあるため、技術が見えにくい側面もあるかと思います。そのようなスキルが確認しあえない環境であっても、在宅訪問管理栄養士の資格を持っていることで、他職種からも信頼を得ることができるでしょう。
    また更新に必要な研修会などで新しい知識を得ることができるため、継続したよりよい栄養指導を患者さんに行えます。転職する際やスキルアップにもおすすめの資格です。

    参考文献・サイト

  • 公益社団法人 日本栄養士会「地域における訪問栄養食事指導ガイド」(2018年2月26日)
  • 日本在宅栄養管理学会(2018年2月26日)
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