がんの治療は積極的な栄養介入が求められる領域です。
チーム医療の一員として、多職種と連携しながら患者さんの栄養管理をする行うことができる管理栄養士が求められています。
がん病態栄養専門管理栄養士の認定は、病態栄養認定管理栄養士よりもさらに専門性が高く、がん治療に特化した知識や技術を身に付けて医療現場で活躍するための認定です。
この記事では、がん病態栄養専門管理栄養士の仕事の概要や申請方法、認定試験、やりがい、参考になるテキストについて解説します。
目次
がん病態栄養専門管理栄養士とは
がんは、日本において昭和56年より死因第1位となり、平成28年の国立がん研究センターの発表によれば年間37万人以上ががんによって亡くなっています。
生涯のうち2人に1人は、がんにかかる可能性があるといわれますが、全がんの5年の生存率は60%を超えていることから「がんは治る時代」ともいわれています。
がんの治療において、病態に応じた適切な栄養管理を行うことで、治癒力の向上が期待できるため、がんに特化した知識を持つ管理栄養士の存在が求められています。
そこで、平成26年度にスタートしたのが「がん病態栄養専門管理栄養士Certified Specialist of Registered Dietitian for Cancers(CSRDC)」の認定制度です。
日本病態栄養学会と日本栄養士会の共同で認定が行われ、平成29年度末現在で認定者数は682人となっています。
がん病態栄養専門管理栄養士は、がん患者さんの栄養管理・食事療法に関する高度な知識と技術を備え、がん治療専門の管理栄養士として、チーム医療への連携を強化することを目的としています。
どんなひとを対象にするのか
がん病態栄養専門管理栄養士が対象にするのは、がん治療を受けられている方と、闘病を支えるご家族になります。
入院中の栄養管理や食事指導はもちろんのこと、退院後の食事についても、栄養相談・指導を行い、患者さん本人とその家族をサポートします。
どんな仕事をするのか
入院中のがん患者への食事提供と栄養管理、および栄養相談がおもな仕事です。
がん患者は疾病による栄養障害に加え、治療の副作用や精神的ストレスなどによって、食欲が落ちやすく、栄養状態の悪化が頻発します。そのため、より積極的な栄養介入が求められます。
対象患者の栄養状態を把握するために、医師、看護師などの医療スタッフとカンファレンスで相談をしたり、患者本人と家族へのヒアリングを行ったりして、食べられない原因を探り、それぞれの病状に応じた栄養補給を行います。
また、栄養相談では、患者さんからの不安や疑問をできる限り解消する手助けをしながら、継続して食事療法を行えるよう、食を通じて治療期間を支えます。
どこで、だれと一緒に働くのか
がん病態栄養専門管理栄養士は、がん治療を行う病院内で、栄養サポートチーム(NST)の一員として働くのが一般的です。
栄養サポートチーム(NST)は、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、言語聴覚士などの専門職によって構成され、それぞれの専門性を生かしながら、連携して、がん患者の治療にあたります。
給与と待遇について
病院の管理栄養士の求人(月給20万円~25万円程度)に応募する際に資格を持っていると、がん病態栄養の専門知識を持つことの証明になるので、施設によっては給与が上乗せされたり、採用で有利になるところもあります。
がん病態栄養専門管理栄養士の認定について
がん病態栄養専門管理栄養士になるには、下記の条件を全て満たす必要があります。
申請するための条件
認定に必要な申請資格は以下の5つになります。
1.管理栄養士であること
2.日本栄養士会および日本病態栄養学会の会員であること
3.日本病態栄養学会認定「病態栄養認定管理栄養士」または、日本栄養士会認定「臨床栄養認定管理栄養士」を取得していること
4.医療機関において管理栄養士として通算3年以上の勤務経験があり、そのうち1,000時間以上はがん栄養療法の実務経験があること
5.(4)の施設で行ったがん患者の栄養管理実績のうち下記の5症例の治療経験があること
以下A区分より3分野4症例、B区分より1症例
A:①呼吸器がん、頸頭部・口腔がん、脳腫瘍
②消化管がん(食道、胃、大腸)
③肝胆膵がん
④婦人科がん、泌尿器科がん、乳がん
⑤内分泌系がん(副腎、甲状腺など)、血液がん、その他
B:①緩和ケア ②在宅医療
申請の方法
認定の申請は、以下の書類を「がん病態栄養専門管理栄養士制度委員会」へ提出します。
1.受験申請書、および、履歴書(日本病態栄養学会申請書類の所定様式にて)
2.がん患者の栄養管理に従事した証明書(日本病態栄養学会申請書類の所定様式にて)
3.「病態栄養認定管理栄養士」または「臨床栄養認定管理栄養士」認定証(写し)
4.日本病態栄養学会申請書類の所定様式にて5症例報告
「病態栄養認定管理栄養士」または「臨床栄養認定管理栄養士」を取得していない人も、認定の申請は出来ますが、以下の書類を追加で提出する必要があります。
1.管理栄養士登録証または免許証(写)
2.日本病態栄養学会理事推薦状(日本病態栄養学会申請書類の所定様式にて)
申請にかかる費用
申請料(受験料)30,000円
「病態栄養認定管理栄養士」または「臨床栄養認定管理栄養士」未取得者が合格した場合、病態栄養認定管理栄養士の認定料として、別途20,000円の納付が必要になります。
がん病態栄養専門管理栄養士の試験について
がん病態栄養専門管理栄養士の認定を得るためには、以下の要件を満たすことが必要です。
・研修の受講(30単位)
・がん拠点病院等の実地研修施設での研修(通算3年間)
・症例報告(5例)
・認定試験の受験
上記の条件をすべてクリアすることで、認定を得ることができます。
がん病態栄養専門管理栄養士のメリット・やりがい
がん病態栄養専門管理栄養士の認定を得ることで、がんの臨床栄養分野において、より卓越した技術と知識を修得した専門性の高い管理栄養士として認められます。
また、がんに特化した管理栄養士の資格は、今までになかったので、資格保有者の今後の活躍には大きな期待が寄せられており、管理栄養士としてのキャリアアップにも役立ちます。
がん治療の専門知識を持つ管理栄養士となり、がんと闘う患者本人やご家族に寄り添い、食べられない苦しみを取り除くことで、栄養状態の低下を改善し、治療効果を上げて回復をサポートできる仕事は、大きなやりがいとなるでしょう。
病院で働く管理栄養士として、がん治療に特化した知識や技術を身に付けたい方や、キャリアアップを目指す方は、がん病態栄養専門管理栄養士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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