キャリアアップ・資格

腎臓病患者を栄養から支える!「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」になるには?

腎臓病病態栄養管理栄養士

臨床治療や病気の予防という観点において、医療の現場では今、栄養管理や食事療法が注目されています。

とくに、病態に沿った栄養評価や代謝栄養を元にした栄養管理を行う「病態栄養学」は、糖尿病や腎臓病など、さまざまな病気の予防や治療において重要な役目を担い始めました。

病態栄養学の観点から、病気の予防や治療を推進するスキルをもつ管理栄養士が、医療チームの一員として求められています。

今回はそのなかでも「腎臓病」の分野において活躍できる「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」について解説します。

医療の現場で高度なスキルを発揮できる管理栄養士を目指している人や、医療の分野で働くことを見据えたキャリアプランを考えている人は要チェックです。

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ここでおさらい!「専門管理栄養士とは?」

そもそも、腎臓病病態栄養専門管理栄養士は「専門管理栄養士」という認定資格の一種ということをご存じでしょうか。

日本栄養士会は、各分野の専門団体と連携し、個人や集団が抱える難しい栄養管理を行い、技能を教育と研究に応用できる高度な技術や知識をもった人材を育てる「管理栄養士専門分野別人材育成事業」を実施しています。

この事業により認定された管理栄養士を専門管理栄養士と呼び、腎臓病病態栄養専門管理栄養士以外にも、以下の4つの認定資格が存在します。

・がん病態栄養専門管理栄養士
・糖尿病病態栄養専門管理栄養士
・摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士
・在宅栄養専門管理栄養士

がん病態栄養専門管理栄養士とは
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腎臓病病態栄養専門管理栄養士とは?

専門管理栄養士のひとつである「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」は、腎臓病に関する病態や栄養の知識を備え、臨床経験を重ねた管理栄養士に付与される認定資格。

腎臓病分野のスペシャリストにふさわしい技能を備えた管理栄養士の育成を目的に創設されました。

資格の認定元は「公益社団法人 日本栄養士会」と「一般社団法人 日本病態栄養学会」。
また、日本栄養士会と「一般社団法人 日本腎臓学会」とが連携した研修制度も設けられています。

腎臓病病態栄養専門管理栄養士の目標

腎臓病病態栄養専門管理栄養士には、以下の7つの行動目標が設定されています。

Ⅰ 医師、看護師、薬剤師その他の医療従事者からなる医療チームに参画できる。
Ⅱ 腎臓病患者の病態を的確に把握し、栄養状態をアセスメントし、適切な栄養補給方法を提案できる。
Ⅲ 適切な倫理的判断のもと、患者との良好なコミュニケーションを図ることができる。
Ⅳ 家庭・地域・医療および介護福祉施設との適切な情報交換を行い、栄養管理のスムーズな連携を図ることができる。
Ⅴ 腎臓病患者や家族に対して、栄養療法(食事療法・経腸栄養・静脈栄養)について指導できる。
Ⅵ 最新の栄養情報や臨床情報・ガイドライン等を、国内外のデータベースや文献情報から得て活用できる。
Ⅶ いずれのステージにおいても腎臓病治療がより効果的に行えるように、腎臓病食事療法の向上に継続的に努力する心構えと姿勢を身につける。
◆引用元:日本病態栄養学会「 腎臓病病態栄養専門管理栄養士」

医療専門チームの一員として活躍することはもちろん、自身の栄養士としてのスキルの研鑽・発展、そして腎臓病へのたゆまぬ努力が個人にも求められていることがわかります。

腎臓病は治療の難しい病気のひとつであり、専門性も高い分栄養士に求められることも多いです。
認定されれば栄養士としての専門性の高さの証明になるといえるでしょう。

申請資格は3つ

認定資格を得るには、以下の3つの「申請資格」を満たす必要があります。

①管理栄養士免許の取得者
②日本栄養士会および日本病態栄養学会の会員
③日本栄養士会が認定する「臨床栄養認定管理栄養士」あるいは日本病態栄養学会が認定する「病態栄養認定管理栄養士」の取得者

資格取得の流れ

腎臓病病態栄養専門管理栄養士を取得するおおまかな流れは、

1.管理栄養士の資格を取得する
2.研修と実地修練を受ける
3.認定試験を受ける

というものですが、1.の後と2.の中身が少し複雑なのでくわしく解説します。

管理栄養士取得後の流れ

申請資格③で記載したとおり、受験者は「臨床栄養認定管理栄養士」または「病態栄養認定管理栄養士」のいずれかを取得していることが前提です。

ただし、大学院で腎疾患に関する修士課程を取り、実務経験3年を経てから上記いずれかの資格を取得する方法も認められています。

研修・実地修練の概要

研修では、3年間で腎臓病領域の専門知識を学び、30単位の取得を目指します。

研修の主催は日本栄養士会・日本病態栄養学会・日本腎臓学会・日本透析医学会です。

実地修練は、日本病態栄養学会あるいは日本腎臓学会が認定した実地修練施設で3年間行われます。

ネフローゼ症候群・慢性糸球体腎炎・糖尿病性腎症・保存期腎不全患者(透析治療期を含む)に対し、施設で実施した栄養管理実績を提出する課題もあります。

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要確認!5年ごとの更新を忘れずに

腎臓病病態栄養専門管理栄養士は、5年ごとの更新が必要です。
過去5年にわたり、日本栄養士会および日本病態栄養学会の会員であることも条件。

更新申請料は20,000円です。

また、更新には以下の条件も関わります。

講習の受講

更新を希望する人は、講習を受ける必要があります。

日本病態栄養学会指定の講習、あるいは日本栄養士会による「生涯教育」プログラムにおける腎臓病以外の講習20単位の取得と、腎臓病専門分野研修を20単位以上取得することも求められます。

つまり、合計40単位の取得が必須です。

栄養管理指導症例の提出

ネフローゼ症候群・慢性糸球体腎炎・糖尿病性腎症・保存期腎不全(透析治療期を含む)患者に対し、日本病態栄養学会の当該施設で行われた栄養管理実績の提出が必要です。

専門管理栄養士を取るメリットは「キャリアアップ」

日本栄養士会では、管理栄養士のキャリアアップを支援する制度として「生涯教育制度」を設けています。

腎臓病病態栄養専門管理栄養士をはじめ、専門管理栄養士に分類される資格を取るには、生涯教育制度の「拡充教育」の受講が必須です。

拡充教育では、専門領域に指定される分野の高度な専門知識や技術、学術、教育と研究スキルを磨き上げるための各種研修が用意されています。

つまり、専門管理栄養士の資格を取ると、非常に高度な専門知識や技術を備えている証明になるため、転職や昇進が有利に働く可能性があるのです。

認定されること自体のハードルが高い資格ですので、一種類でも取得しておけば栄養士としてのキャリアをぐんと引き上げることになるでしょう。

ちなみに、拡充教育は研究や教育の分野におけるマネージメントや現場のリーダー職を目指す際にも役立つため、人材育成や開発に興味のある管理栄養士にもオススメです。

資格の認定時・更新時に必要な単位

腎臓病病態栄養専門管理栄養士の資格を取得するには、認定時(受験時)に20単位、更新時に40単位の取得が必要となります。

日本病態栄養学会は、以下の研修を単位に認定されるものとして挙げています。

学術集会および教育的企画への参加 参加による単位 演者による加算単位
1.日本病態栄養学会年次学術集会 10単位 5単位
2.指定講演の聴講 2.5単位/回
3.腎臓病病態栄養専門管理栄養士セミナー*注1(受験必須) 10単位
4.教育セミナー更新・糖尿病透析予防指導セミナー 5単位
5.関連学会の年次学術集会*注2 2.5‐5単位 5単位
6.関連学会の腎臓病療養指導士セミナー 5単位
7.関連学会の地方会 1単位 1単位
8.関連学会の研究会等*注3 0.5‐1単位 1単位

注1)受験時には、腎臓病病態栄養専門管理栄養士セミナー受講は必須とする。
注2)開催日数に応じた参加単位を付与する1日2.5単位,2日以上5単位
注3)3時間未満0.5単位,3時間以上1単位

◆引用元:日本病態栄養学会「 腎臓病病態栄養専門管理栄養士」

「演者」とは、講演会やセミナーの講演者です。それらの会におけるポスターの発表者であることも指します。

演者による加算単位が認められないケースは、参加した研修がシンポジウムやワークショップである場合です。

また、同一の学会で複数回発表を行ったとしても加算されるのは1回のみです。

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認定試験(審査)の申請方法と概要

腎臓病病態栄養専門管理栄養士を取得するには、認定試験(審査)に合格する必要があります。

以下に、受験の手順や試験の概要を説明しましょう。

まずは申請書類を書いて受験を申し込み!

認定試験(審査)を受けるには、はじめに申請書類を提出し、受験資格を認めてもらうことが不可欠です。

申請書類は、日本病態栄養学会の事務局宛てに必要事項を記入したものをEメールあるいはFAXで送りましょう。

必要事項の内容や送付先は以下のページより確認できます。

◆参考:日本病態栄養学会「 腎臓病・糖尿病病態栄養専門管理栄養士」

ちなみに申請にかかる料金は30,000円です。

認定試験(審査)の概要

認定試験では、筆記試験症例審査が行われます。

記述と論述の問題を問うのが筆記試験。
試験時間は60分です。

症例審査では指定の「症例用紙」に則って、「腎臓病患者の栄養管理実績症例」を各1分野ずつ、計5つの症例を報告します。

症例の対象となるのは、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、保存期腎不全、末期腎不全です。

症例審査の提出先や症例用紙のダウンロードなど、くわしい情報の確認は以下のページから。

◆参考:日本病態栄養学会 「 腎臓病・糖尿病病態栄養専門管理栄養士」

まとめ

腎臓病病態栄養専門管理栄養の取得には、数々の研修参加や報告書の作成、実地修練など、自らの学びを深めるための積極的な行動が求められます。

なかなか容易に取得できる認定資格ではありませんが、「腎臓病に悩む患者さんを救いたい」という気持ちがあったり、「腎臓病について理解を深めたい」という興味や意欲をもっていたりすることが、キャリアアップへつながるカギとなるかもしれません。

管理栄養士として成長する目標があり、病態栄養学の知識と技術を医療に役立てたいという人は、ぜひチャレンジしてはいかがでしょうか。

参考文献・サイト

  • 日本病態栄養学会「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」(2019年5月7日)
  • 公益社団法人 日本栄養士会「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」(2019年3月21日)
  • 公益社団法人 日本栄養士会「現場のジェネラリストを目指す方へ」(2019年3月21日)
  • 日本病態栄養学会「病態栄養専門(認定)管理栄養士」(2019年3月21日)
  • 日本病態栄養学会「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」(2019年3月21日)
  • 公益社団法人 日本栄養士会「専門領域のスペシャリストを目指す方へ」(2019年3月21日)
  • 日本病態栄養学会「腎臓病病態栄養専門管理栄養士」(2019年3月21日)
  • 日本病態栄養学会「腎臓病・糖尿病病態栄養専門管理栄養士」(2019年3月21日)
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