栄養士の基礎知識

国民の健康課題をチェック!栄養士が見るべき「国民健康・栄養調査」とは?

国民健康・栄養調査 栄養士 管理栄養士

「国民健康・栄養調査」は1945年から続く、国内の歴史ある全国調査です。

戦後の貧困にあえいだ日本が海外の食糧援助を得るためにはじまったのが国民健康・栄養調査。

調査はいまや国民の健康と栄養の状態を把握するために毎年実施されており、栄養士・管理栄養士にとって貴重な情報と知識が得られる資料として参考にされています。

今回は国民健康・栄養調査の最新版である2017年度の結果のポイントをおさらいするとともに、栄養士・管理栄養士が調査結果をチェックするべき理由について解説します。

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国民健康・栄養調査とは?

国民健康栄養調査とは

「国民健康・栄養調査」は厚生労働省が毎年実施する全国調査で、現在の調査は平成14年に施行された健康増進法に基づき実施されています。

調査結果は国民の食生活に関する状況や栄養素の摂取状況、身体・血液検査、飲酒、喫煙、運動の習慣に関する統計情報を表しています。

国民の健康維持や健康増進をはかることが調査の目的です。

業務にも活かせる!栄養士・管理栄養士は調査結果を見るべし!!

国民健康・栄養調査は、国民の身体状況、生活習慣、そして栄養の摂取状況を把握するための調査です。

栄養士・管理栄養士は国民の健康を支えているため、常に国内の健康状況や栄養摂取状況にアンテナを張る必要があります。

国内における健康知識や栄養の問題は常にインプットし、情報をアップデートすることが時代や職場のニーズに応える健康管理に繋がるでしょう。

なかでも食事摂取状況の調査結果は栄養士・管理栄養士必見。

調査員である管理栄養士たちが最新の国民の食生活を細かく分析したものが食事摂取状況となるので、業務に直結する可能性のある知識や情報をたくさん発見できるでしょう。

調査対象の世帯・世帯員は条件付き

2017年に行われた国民健康・栄養調査は、約6万1千世帯・約15万1千世帯員を対象に行われました。

調査の対象からはじかれた世帯の条件は、

・世帯主が外国人
・3食にわたって集団的給食を配給されている
・単独世帯で住み込み、まかない付きの寮あるいは寄宿舎に居住

以上の3つ。

世帯員に関しては、

・1歳児未満の乳児
・流動食もしくは薬剤のみの摂取や投与をされている在宅患者
・食生活が共通していない人
・「単身赴任者、出稼ぎ者、長期出張者(おおむね3ヶ月以上)、遊学中の者、社会福 祉施設(介護保険施設含む)の入所者、長期入院者、預けた里子、収監中の者、 その他別居中の者 
◆引用:厚生労働省「平成 29 年国民健康・栄養調査結果の概要」

以上の項目に当てはまる人が除外となりました。

3つの調査が国民健康・栄養調査の柱

国民健康・栄養調査の柱となるのは、「身体状況調査票」「栄養摂取状況調査表」「生活習慣調査票」という3つの調査です。

身体状況調査票

身長や体重、血圧などを記入します。また、特定の体調や体質に応じた薬の服用の有無や糖尿病に関する指摘と治療の有無、そして運動習慣について尋ねる問診にも応じる必要があります。

栄養摂取状況調査表

食事状況や食物の摂取状況について、家庭食・外食・料理名・食品名などの項目に該当する答えを記入します。1日の運動量や世帯状況に関する回答も必要です。

生活習慣調査票

20歳以上を対象とした調査。
「食生活、身体活動、休養(睡眠)、飲酒、喫煙、歯の健康等」を記述します。
2017年の調査では、高齢者の生活習慣調査が「重要項目」として付け加えられました。

なお、
「厚生労働省ー都道府県・保健所設置市・特別区ー保健所ー国民健康・栄養調査員ー対象者」
という順序に従って調査は行われます。

国民健康・栄養調査員のなかには栄養士・管理栄養士が含まれている点も覚えておきたいところです。

2017年度調査の3つのポイント

国民健康栄養調査 ポイント

2017年の調査結果のポイントはどのような点だったのでしょうか。

「公益社団法人日本栄養士会」は栄養士・管理栄養士も注目しておきたい点を以下の3つに絞っています。

①はじめて高齢者に焦点が当てられた結果が算出

2017年の調査の特徴は、高齢者の栄養状況や生活習慣の概要がはじめて明らかにされた点です。

たとえば、栄養素摂取に関する調査では60歳代の高齢者がもっとも多くエネルギーやたんぱく質を摂取していることがわかりました。

エネルギー摂取に関しては脂質量の摂取割合は高齢者ほど低く、炭水化物量の摂取割合は高齢者ほど高い傾向があります。
たんぱく質の場合、高齢者は魚介類から摂取する割合が高く、肉類からの摂取割合は低い傾向が見られました。

また、たんぱく質の摂取量が多い者ほど骨格筋指数の平均値は高く、肉体労働の時間が長い人ほど、男女を問わず骨格筋指数が高い傾向を記録しています。

低栄養状態の調査結果に関しては、65歳以上で低栄養状態にある人の割合は16.4%を記録し、男性は12.5%で女性は19.6%。

ただし、この10年間の間に大きな有意差はみられておらず、80歳以上の男女約2割は低栄養傾向にあるとのことです。

また、日本栄養士会は高齢者の健康と生活習慣、そして栄養状況を把握するうえで、運動量・四肢の筋肉量・歯・口腔の状態も注目に値すると述べており、栄養士・管理栄養士は結果内容を確認することを推奨しています。

②20代女性の「やせ」の割合は高傾向

女性のBMIの数値結果から「やせ」とされる割合が高い点が課題として浮き彫りになりました。

20歳から59歳までの女性のうち、やせと認定された人の割合は10.3%。

年齢別にみると、このうち20代の21.7%がもっとも高く、日本栄養士会によれば20代女性のうち「約5人に1人」がやせに該当するといいます。

20代の次に高い割合は30代の13.4%、次いで40代の10.6%、50代の10.1%です。

日本栄養士会は女性が抱えるやせの課題と朝食の欠食率の関連性も指摘しており、もっともやせの割合が高い20代の女性の欠食率は23.6%でした。

健康障害や発育障害などを引き起こす、偏った食生活やダイエット志向による女性のやせの課題は、「食」に一番近い専門家である栄養士・管理栄養士にとって重要課題のひとつといえるでしょう。

40代の睡眠不足は50%前後!?

また、睡眠不足に関する健康状況も無視できません。

2017年の平均的な睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合がもっとも高い傾向がみられました。このうち、男性は35.0%で女性は33.4%。

また、6時間未満の割合は男性が36.1%、女性が42.1%でした。年代別の結果を見るともっとも睡眠不足に陥っているといえるのは40代で、男性が48.5%、女性が52.4%でした。

ここ1ヶ月のうち、「睡眠で休養が十分にとれていない」と回答した割合がもっとも高いのも40代で30.9%とのことです。

食(栄養)のサポートだけでなく、「生活習慣の改善」という広い視点からのサポートを考えるうえでは、この睡眠不足という問題も意識しておくと栄養士・管理栄養士としての幅がもてるかもしれません。

◆参考:厚生労働省「平成 29 年国民健康・栄養調査結果の概要」

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管理栄養士は調査員として働ける

管理栄養士 国民健康栄養調査

ところで、管理栄養士は国民健康・栄養調査の調査に協力する仕事ができます。

調査の集計・解析・公表を実施しているのは国立健康・栄養研究所。この研究所で、栄養士・管理栄養士は調査の一員として関わることができます。

国立健康・栄養研究所の公式サイト上では不定期に公募が行われており、採用期間は一般的に5年間です。

◆参考:国立健康・栄養研究所「栄養疫学研究部 国民健康・栄養調査研究室 室長又は研究員募集(任期付・招聘型)」

求人情報はこちらのページから確認可能です。

◆参考:国立健康・栄養研究所「採用情報」

公募者にはフリーランスで活動する管理栄養士が多い傾向があるようです。

調査員となった管理栄養士の仕事内容

国民健康・栄養調査に携わる管理栄養士に任されるのは、栄養調査の結果処理

結果を表すデータの確認・集計・解析が行われ、このうち管理栄養士が密に関わるのはデータの確認です。

国民健康・栄養調査のデータ確認に関わる管理栄養士たちは「栄養調査室」所属となり、室長のもとに総勢10数人という大人数で業務にあたります

とくに食事摂取状況調査は管理栄養士としての手腕が発揮される調査。

管理栄養士は、各世帯の食事の内容から分量、調味料、調理法の記入漏れがないか細かく確認することが求められ、外食や惣菜といった調理済みの食品が記入されている場合は内容の分析も行います。

意外と知られていないこの調査員という仕事、興味のある方は国立健康・栄養研究所のホームページから求人情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

まとめ

最新版である2017年の国民健康・栄養調査の概要と、調査結果をまとめる栄養士・管理栄養士の仕事内容をまとめました。

国民健康・栄養調査は、栄養士・管理栄養士にとって業務のうえでも自己研鑽のうえでも役立つ知識と情報が詰まっています。

国民の健康と栄養を食事から支える仕事をしているからこそ、栄養士・管理栄養士は国内の栄養をめぐる現状や課題の把握が大切ですね。

参考文献・サイト

  • 厚生労働省「平成 29 年 国民健康・栄養調査結果の概要」(2019年5月15日)
  • 公益社団法人 日本栄養士会「【厚生労働省】平成29年「国民健康・栄養調査」の結果を発表」(2019年5月15日)
  • 国立健康・栄養研究所「国民健康・栄養調査」(2019年5月15日)
  • 「国民栄養の現状」レポート「国民栄養調査」とは(2019年5月15日)
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