栄養士・管理栄養士なら、一度は食育に関することを勉強した経験がありますよね。
職場によっては食育への取り組みが必須だったり、これから積極的に取り組もうと計画を立てていたりするかもしれません。
とはいえ、食育の導入や実践方法、そして理念などをいざ業務に取り入れようと思ったときに、何から手をつければよいのか迷う人も多いことでしょう。
そこで毎年6月に実施されている「食育月間」を通じて、改めて食育について学んだり、詳細に触れてみたりしてはいかがでしょうか。
この記事では、6月に実施される食育月間の概要と、いざ食育を実践するときのために参考になるサイトや書籍を紹介します。
目次
「食育月間」は毎年6月の食育の一大行事!
食育は子どもたちが正しい食の知識や食事を選択する力を養い、栄養を通じて健やかな心身と豊かな人間性を育み、いきいきと暮らしていくことを支援する教育です。
農林水産省は、食育を集中的に行い推進を強化する月間を「食育月間」と呼び、実施期間を毎年6月と定めています。
農林水産省が食育を推進する理由は、食育が「生きるうえでの基本」であり、「知育・徳育・体育の基礎となるもの」として重要視されているから。
国民生活や個人の人間性を健康的かつ文化的なものにする食育を積極的に推進することが、社会に活力を与えると解釈しています。
そのため政府は食育月間を農林水産省だけではなく、内閣府・消費者庁・文部科学省・厚生労働省といった食育に関係する関係省庁や地方公共団体、関係団体と協力して行っています。
そもそも何で「6月」に実施されるの?
食育の基本的理念を定めた「食育基本法」は2005年6月に制定されました。この制定月が6月=食育月間となったきっかけのひとつです。
また、「国をあげて取り組みやすい時期はいつか?」という観点から、新学期・新生活がはじまって身辺が落ち着き始める6月がふさわしいとされたことも、食育月間が6月に選ばれたことの理由。
食育にもっとも取り組みやすい6月を通じ、多くの国民に食育に対する関心を高めてもらうことが農林水産省をはじめとした関係省庁のねらいといえるでしょう。
2019年度の食育月間はどのように行われる?
2019年度6月の食育月間は、6月1日(土)~30日(日)の1ヶ月にわたって行われます。
農林水産省・内閣府・消費者庁・文部科学省・厚生労働省・地方公共団体・関係機関・団体が中心となって食育月間を取り仕切ります。
実施予定の主なイベントや活動は以下のとおりです。
食育推進全国大会
6月29日(土)、6月30日(日)に山梨県甲府市で第14回食育推進全国大会が開かれます。シンポジウムやワークショップ、展示会などがメインとなる予定です。
イベントの開催
全国各地域において、シンポジウム・講習会・展示会・調理や生産といった食育体験活動などのイベントが開催されます。
関係省庁・地方公共団体、関係機関、団体などがイベントの主催です。
広報媒体を通じた食育の普及啓発
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ホームページ・SNSといった媒体を通し、食育が普及啓発されます。
「食育ガイド」に示されるような世代別の食育実践例を紹介したコンテンツが広く発信されることになっています。
日常的な活動場所での普及啓発
教育・保健、医療・保健、農林漁業、食品関連事業といった活動が行われる場所や機会を活用することも食育月間の取り組みのひとつ。
関係省庁、地方公共団体などが主催となり、さまざまな日常の場において食育を普及啓発します。
2019年度の食育月間で重視されることは6つ
食育の普及啓発に際して、2019年の食育月間では以下の指針が重点事項です。
「食を通じたコミュニケーションの促進と子供の生活リズムの向上」
食のコミュニケーションを促進するためにも、食事の作法・マナー・食文化といった食に関する知識と習慣を教えます。
朝食を食べることや早寝早起きといった生活習慣を身につけることや、共食が難しい家庭で育つ子どもを対象に、地域やコミュニティといった場所で共食体験を育むこと(子ども食堂の開設など)も施策のうち。
広い観点から、子どもが生活習慣や健全な人間関係を身につけられることに取り組みます。
「健康寿命の延伸につながる健全な食生活の実践の促進」
「食生活指針」・「食事バランスガイド」・「食育ガイド」を通じ、国民の健康寿命延伸をはかります。
たとえばメタボリックシンドローム・肥満・やせ・低栄養といった疾病の予防と改善に取り組み、健康的で健全な食生活を実現することが目的です。
「食の循環や環境への意識の醸成」
農林・漁業の体験、食品調理の体験といった活動や食事のあいさつ習慣化を通じて、生産者と食に携わる人々への感謝の心を育むのがねらいです。
また、国や地方公共団体、食品関連事業者、消費者が連携し合って食品ロスの問題に取り組めるよう、「もったいない」精神の普及にも努めます。
「伝統的な食文化に関する関心と理解の増進」
郷土料理・食事のマナー・伝統的食文化の保護や継承を増進することで、国内の伝統的な食文化への関心や理解を促します。
「食品の安全性に関する情報提供と食品情報に関する制度の普及・定着」
食品に含まれる放射性物質など、食品の安全性を証明する情報提供を行うことで、消費者に食品の安全性を担保し、安全な情報が理解できるよう促します。
「都道府県・市町村が作成する食育推進計画の普及」
都道府県や市町村が主体となって「食育推進計画」を作成し、計画書を地域の教育関係者や農林漁業者などの食に関係する人々に共有します。
これは、地域内の食の関係者が食育の課題と取り組み内容を互いに共有したうえで、連携・協働を進めていく目的があるからです。説明会や広報誌、機関誌がその手段とされています。
◆参考:厚生労働省「平成 31 年度(2019 年度)「食育月間」実施要綱 」
食育月間に欠かせない!「第3次食育推進基本企画」とは?
2019年に実施される食育月間は、食育基本法と「第3次食育推進基本計画」に準じた内容。
第3次食育推進基本計画は、2016年から5年間の間にわたって適用されることとなっており、「実践の環を広げよう」というコンセプトのもとに作成されました。
具体的には、以下の5つの「重点課題」が掲げられています。
① 若い世代を中心とした食育の推進
② 多様な暮らしに対応した食育の推進
③ 健康寿命の延伸につながる食育の推進
④ 食の循環や環境を意識した食育の推進
⑤ 食文化の継承に向けた食育の推進
◆引用:
厚生労働省「第3次食育推進基本計画(概要)」
このほかにも、「国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成」や「食に関する感謝の念と理解」、「子供の食育における保護者、教育関係者等の役割」といった方針が定められています。
困ったときにチェックしたい!食育の実践に役立つ参考サイト・書籍5選
食育月間に取り組むことになり、参考となる媒体をチェックしたい栄養士・管理栄養士や栄養教諭、調理師も多いことでしょう。
そこで、ここからは食育の実践時に役立つサイトや書籍を紹介します。
食育月間にかかわらず、日頃から食育に関する業務を行っている栄養士・管理栄養士にももちろんオススメ。ぜひ役立ててくださいね。
HAPIKU
HAPIKUは、乳幼児の食に役立つ情報を発信するWEBマガジンです。
保護者や栄養士・管理栄養士、保育士、調理師といった保育に関わる人たちに役立つレシピやコラムなどのコンテンツが勢ぞろい。
子どもの栄養相談を投稿できる掲示板や食と保育の専門家・企業へのインタビュー記事、保育に役立つ商品の紹介もあります。
畑も所有しており、野菜づくりの様子やHAPIKU畑で採れた野菜を作ったレシピの様子まで見られるなど、食育総合サイトといった印象です。
イキキラ
栄養教諭制度の創設に関わった経験のある田中延子氏がプロデュースする食育のサイト。
食に関する指導や授業の進め方、教材、資料、給食管理のノウハウといった学校ですぐに使える食育の知識を動画で配信しています。
サイトの利用対象者は栄養教諭、教員、学校栄養職員、栄養士・管理栄養士の養成施設の教員、学生、食育関係者、学校給食関係者。
動画はそれぞれ「食育」・「教材作り」・「給食管理」・「人間力・教師力向上」・「歴史・海外事情」・「講演・その他」といったジャンルに分かれています。
利用料金は月額850円(税抜き)で、会員であれば動画は何度でも見られます。
食育ずかん
「ずかんや絵本を見ている様な感覚」で食育を学べるのが食育ずかん。
子どもも大人も楽しく食育を学べることがコンセプトとなっており、イラストが多様されたコンテンツが多いのが特徴です。
各都道府県の市町村の名産品を紹介するコーナーもあり、名産品と一緒にオススメの食べ方や生産者の声まで載っています。
その他、子どもの成長や野菜の栄養成分を解説するコラムや食育に役立つレシピコーナーも。
シンプルで見やすいレイアウトが特徴のサイトなので、子どもと一緒に見るのもオススメです。
保育所で行われる食育を中心に、さまざまな食育の実践例を解説している一冊。
保育士向けとうたわれていますが、栄養士・管理栄養士、調理師にも役立ちます。
年齢ごとの食育の年間計画や食育計画のサンプルがたくさん掲載されており、食育だよりの作成例も紹介されています。
食育だよりに関しては使い回しができるよう12ヶ月分用意されているため、実務に直結できる本です。
食育に積極的に取り組んでいる保育園のレポートも載っており、これから食育に力を入れていきたい園関係者は参考になるでしょう。
基礎からわかる・授業に活かせる 食育指導ガイドブック
こちらは、月刊誌「学校給食」の連載企画をもとに書籍化したガイドブックです。
とくに小学校の栄養教諭・学校栄養職員にとっては「現場で役立つ」一冊でしょう。
内容は、主に小学校3年生~6年生を対象とした食育の授業で使えるワークショップなど、授業の実践例を具体的に紹介しています。
ゲーム感覚で取り組めるワークショップや実際の調理実習の進行といった実践例、調査課題に取り組む生徒たちの様子が掲載されており、さまざまな切り口から食育の授業の作り方が学べるでしょう。
栄養教諭として働く人は参考になる一冊です。
まとめ
積極的に食育に取り組みたいけれどもいつから始めようか迷っているという人は、ぜひ6月の食育月間を機に食育に力を入れてみてはいかがでしょうか。
食育の問題に関心が高かったり、業務上取り組む必要があったりする職場で働く栄養士・管理栄養士は、ぜひ今年の食育月間で発信される情報やイベントをチェックしてみてくださいね。
参考文献・サイト
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