保育園や介護施設などで、給食の内容を検討したり改善点などを話し合う「給食会議」。
すでに導入している施設に勤めている栄養士・管理栄養士には身近でしょうが、すべての給食提供施設で導入されているわけではないため、なじみがない人もいるかもしれませんね。
とくに、新人の栄養士さんは、どういったことを話し合うのかわからなかったり、議事録の作成に苦労したりしているのでは?
これから給食会議を導入予定の施設職員にとっても、運用の基本となるような情報は勉強しておきたいところですよね。
そこで、この記事では、給食会議の初心者が知っておきたい会議の基本をまとめます。議事録作成のポイントやコツもぜひチェックしてみてください。
目次
「給食会議」は主に福祉施設で行われている
「給食会議」は、給食責任者や関係職員によって、施設における給食の目的が達成されていることを確認したり、給食の内容の評価や検討を行ったりする会議です。
給食会議が開かれる職場としては、保育園や幼稚園・認定こども園・高齢者施設・病院・障害者施設といった福祉施設が多いです。
給食会議は、主に以下のような目的で行われます。
・栄養管理の基準の取り決め
・給食内容、献立に関する意見の交換
・施設利用者のアセスメントなどの評価
・(主に保育園で)離乳食・アレルギー食・肥満・やせなど、個別対応が必要な子どもの検討
・衛生管理の見直しや取り決め
・食育の実施や計画など
会議の開催頻度は月1回程度が推奨されており、毎日のミーティングや打ち合わせとは違うものです。
その施設の特色によって参加者に多少の違いはありますが、以下の職種は給食会議の参加者に選ばれる傾向があります。
・施設長(園長)/副施設長
・栄養士/管理栄養士(委託・直営問わず)
・調理師
・保育士/幼稚園教諭など保育関係者
・介護職員
・看護師
・保健師
・事務職員
とくに施設長は施設運営の方向性を決定づけるポジションにいるため、給食の方向性についてもリーダーシップをもって定めていく必要があります。
また、栄養士・管理栄養士の配置がない施設では、調理師が給食責任者に任命されることもあるようです。その場合は、保健福祉事務所などに所属する栄養士・管理栄養士が調理師を指導します。
給食会議の開催は義務づけられてはいないが、自治体への「栄養管理報告書」に記載あり
現状、給食会議の開催義務は、国の法令などに明記されていません。
例外として、保育所での給食提供に関しては、厚生労働省による「保育所における食事の提供ガイドライン」で給食会議の実施を推奨している箇所があります。
とはいえ、都道府県や市区町村が給食施設に提出を求める栄養管理報告書のフォーマットを見ると、書式や名称にばらつきはあるものの、給食会議に関する欄が設けられています。
一例を挙げると、東京都のフォーマットでは「給食会議」という名称で欄が設けられており、埼玉県では「給食管理などに関する検討会」がそれに該当します。
また、フォーマットは異なるものの、給食会議の欄には、大抵の場合開催有無を選択する欄があります。
開催していない施設は「無」を選べるので、やはり国が制度として義務化しているわけではないようですが、「有」を選んだ場合は、給食会議の頻度や構成職員、内容などの記載を細かく求められる場合があります。
栄養士・管理栄養士は自治体の栄養管理報告書を要チェック!
ところで、栄養管理報告書とは健康増進法などの法令によって自治体に提出が義務付けられている、特定給食施設における栄養管理の提出書類です。
都道府県や市区町村によって書類の名称やフォーマットは異なり、さらに提出元の施設によっても記入内容やフォーマットに差があります。
そのため栄養管理報告書を作成する際は、自分が所属する施設で用意したフォーマットと自治体が指定しているフォーマットが合致しているか確認が必要です。
「保育所なのに介護施設用のフォーマットで作成してしまった」などの、初歩的なトラブルには気をつけてください。
給食会議の議題は多岐にわたる
給食会議をこれから行う予定の施設では、会議にふさわしい議題の選び方がわからないところもあるでしょう。
一方、給食会議を実施中の施設でも「本当にこの議題でよいのか」と疑問に思うことがあるかもしれませんね。
そこで、以下の議題を参考にしてみてください。
・給食計画(年間や月間など、どのような内容にしていくか?)
・献立の内容
・喫食状況の調査(残食や喫食の記録など)
・検食簿の確認や改善
・施設利用者の様子や状況の共有
・施設利用者の家族や保護者からの要望や意見の確認と検討
・施設内設備の不具合や建て直し
・衛生に関する問題や改善
・栄養指導・生活習慣指導・食育に関する相談や提案
・給食運営全般に関すること
このように見ると、給食会議における議題は意外と多岐にわたることがわかりますね。
保育園での給食会議の様子
それでは、給食が提供される施設ではどのようにして給食会議を運用しているのか、保育園の給食会議の例を見てみましょう。
とある保育園での給食会議例①
園長・主任・栄養士・保育士の4名のもと毎月1回給食会議を開いており、給食の献立の味や量、園児たちの喫食状況などを毎月振り返って、課題や方針、改善策について話し合っている。
議題は、園児たちの「残食量が多い」こと。
ご飯の量を少し減らし、主菜や副菜を積極的に食べるよう促していく対応策を決めた。
また、議題の目的は「残食を減らすこと」だったが、園の方針として子どもたちが自主的に給食のおかずを食べられるよう職員がサポートすることも大切にしているため、保育士・栄養士による給食時の園児への声がけを積極的に行うことになった。
次月には今回決めた対策の効果(残食量の変化)も確認し、対策をブラッシュアップしていくことを取り決めた。
上記のように課題に対する対応策の検討だけでなく、実施した対策の成果検証を行ってよりよい給食提供を行っていくことも重要です。
とある保育園での給食会議例②
毎月1回、園長・主任・副主任・クラス担任・栄養士が参加する給食会議を行っている。議題は毎回持ち回りでクラス担任からあげてもらっている。
この月は、「①ある園児が特定の食材を毎回残してしまっている」「②低年齢児のクラスで食具をまだ上手く使えない子が多い」という2つの議題があがった。
①の議題について、栄養士は事前に保育士に「家庭では食べている」ことを確認してもらっていたので、その食材の調理方法(大きさや他の食材)を変えることを検討した。
②の議題については、担任の保育士からクラスの園児達の状況を確認し、「食具の使用は必須とせず、一旦手づかみ食べに戻す」ことに決めた。また、低年齢児のクラスは手づかみ食べでも問題ない食材の調理法で調理することとした。
給食会議では、栄養士以外の他の職種との情報共有も重要になります。保育園であれば保育士、高齢者施設であれば看護師や介護職員など、他職種と連携が上手く取れていれば食会議の質も上がっていくでしょう。
議事録作成の初心者もバッチリ! まずは議事録作成の基本を抑えよう
給食会議で出た議題や会話の内容、決定された方針や対策は、議事録にして整理することが推奨されています。
栄養管理報告書の作成時や保健所による監査のときなどに役立ちますし、給食会議の振り返りや改善に活用できるからです。
ここからは、議事録を作る際の心構えや作成のポイントを紹介していきます。
議事録を作る意味は「周囲への情報共有」!
そもそも、議事録を作る意味と目的はなんでしょうか?
簡単にいうと、議事録には会議の内容・経過・結論を、出席者以外の人にも伝えるというねらいがあります。
ポイントは「参加していない人にもわかるように、情報を共有する」という点。
目的は情報の共有なので、自分にしかわからないような書き方や短すぎるメモ書きでは見る人に伝わらない可能性を考慮し、避けるようにしましょう。
ポイント① 決定事項・Todoリストを忘れずに
議事録を作成するにあたり、必ず記録すべき事項は以下のとおりです。
・基本の情報:会議名、議題、日時、場所、参加者
・会議の目的や前提
・会議で話し合ったこと
・決定事項
・実行策/Todoリスト
このうち、最低限必ず記録しておきたいことは、決定事項と今後の実行策、つまりTodoリストです。
このふたつは、いわば会議で出た「結論」を指し示す事項になるため、議事録の作成で悩んでいる人は、まずは決定事項とTodoリストを書くことから始めてみてください。
会議の報告は、結論の共有が基本です。
会議で話し合ったことは、結論を出すまでの「過程」にあたる部分ですので、後から記述する形でも問題ないでしょう。
ポイント② 事前準備で作業の効率化につなげる
議事録の作成に慣れないうちは、会議の前に事前準備をしておくとよいでしょう。
例えば、会議に必要な資料やデータの内容を把握しておくと、議事録の作成時に要点をスムーズにまとめられます。
また、過去の議事録を参考にして事前に議事録のフォーマット(記載する予定の項目一覧)を作っておくことも事前準備としてオススメです。
議事録に記載する項目には、基本となる情報や会議の目的、決定事項、Todoリストなどの一覧を入れておきましょう。記入スピードが上がるほか、記載漏れの防止にもつながります。
また、その日のうちか次の日の早い時間帯など、記憶の鮮度が保たれているタイミングで共有することが原則です。
ポイント③ メモの「主語」と「目的語」はハッキリと
議事録を書くにあたり、メモの記録は欠かせません。
手書きよりもPCでタイピングする方が速い人は、会議にPCを持ち込んでも良いか確認したうえで、PCを持参しましょう。
給食会議が長い場合や後から不明点が生じそうなときなどは、ICレコーダーを利用する手もあります。
ただし、なかにはICレコーダーの利用は就業規則などで禁じている職場もあるため、こちらも事前の確認が必要です。
また、メモをうまく取るには、
・会議中に出た疑問点や質問
・それに対する回答や決定事項
・誰がそれを発言したのか
など、重要な箇所を記録するようにします。
また、メモは整然とした文章ではなくてもいいので、「主語」や「目的語」をハッキリと書くことがポイントです。また、納期などの情報も要約して入れるといいでしょう。
例.
・7月の食材発注→■日までの手配で問題ないか?(●●さん)
・■日はナシ ▲日まで(主任)
・発注の手配は会議後に。担当者は××さん
手書きでメモを取る場合も同様に、主語や目的語など「何を書いているのか」がわかるように短い言葉で書き留めるか、文章化が難しい場合は図式化するのもひとつの手です。
会議中にホワイトボードを使うことがあれば、携帯電話の持ち込みが認められている場合、メモとしてホワイトボードの写真を取っておくこともオススメです。
議事録の作成時に活用することができます。
また、聞き取れなかったり、話の内容についていけなかったりなど、不明瞭なことは必ず会議中に確認することも忘れずに。
いざ議事録の作成時に困ることがないよう、不明点はできるだけその場で解決しましょう。
ポイント④ 議事録の文章は5W2Hを意識して書く
議事録の意味と目的のおさらいですが、議事録は自分だけにわかればいい雑記ではなく、上司や先輩、後輩、同僚など、周囲の人たちにも共有する記録です。
そのため、簡潔で要点がわかりやすい文章を心がけましょう。
要点を整理するうえで、とくに大事にしたいのは「5W2H」です。
5W2Hとは…
When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・What(何を)・Why(なぜ)・How(どのように)・How much(いくら)
例.
・今回の給食会議の要点は何か?(What)
・誰が課題を挙げているのか?(Who)
・対策はどのように練る必要があるのか?(How)
5W2Hに照らし合わせた記録はわかりやすくまとまるので、準備段階で5W2Hを明瞭にしておくと会議の内容にもついていけますし、議事録の作成がラクになります。
また、会議中の発言をそっくりそのまま書き起こす必要もないため、発言の中にあった決定事項だけを抽出すれば問題ありません。
例.
主任:「食材発注の納期ですが、■日だと少し懸念があるので、そうですね……▲日までにしておきましょうか」
→食材発注の納期は▲日まで(主任)
まとめ
給食会議の運用が慣れないうちは、議題の決定や議事録の作成などに苦労することもあるかもしれません。
しかし、この記事を読んだみなさんは、会議のポイントや議事録の作成の要領がつかめたのではないでしょうか。
会議は回数を重ねていくうちに慣れていくものですので、準備や会議後の対応に気をつけて、頑張ってくださいね!
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