病院やクリニックで働く管理栄養士の中には、コメディカルの一員として「何か専門資格を取りたい」と思っていても、実際管理栄養士の業務は多く、資格を取るまでの体力・気力が続かないことも……。
在勤中に「糖尿病療養指導士」の資格を取得した私も色々と苦労しました。
ですが、病院やクリニックで働く管理栄養士にとって、資格取得は自分の経歴に「+α」の価値をつけるチャンスです!
そこで今回は、病院の管理栄養士として勤務していた私が、「糖尿病療養指導士」の資格を取るまでに行った準備や資格を取って感じたメリット、資格を取る過程で感じたことなどの経験談をまとめました。
※糖尿病療養指導士についてくわしく解説した記事はこちらから。
目次
準備はなる早で! 資格取得を他部署に伝えておくと◎
糖尿病療養指導士を受験するには、
①看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士のうち、取得している資格があること
②過去10年以内に継続2年以上(通算1,000時間以上)、指定の医療施設で糖尿病療養指導を行った経験があること
③ 自分が携わった糖尿病療養指導の症例が10例以上あること(②の期間の間に)
④「日本糖尿病療養指導士認定機構」による講習会を受講し、受講修了証を取得すること
以上の4つを満たす必要があります。
管理栄養士として糖尿病療養指導士を取得する場合にハードルとなるのは、②の「継続2年以上(通算1,000時間以上)」と③の「栄養指導10症例」です。
私の場合、いち早く病院や栄養管理部に貢献したいと思っていたこともあり、資格取得に向けて勤務3年目の年に受験することを病院の入職時に決めていました。
そのこともあり、病棟の看護師長や他部署のコメディカルにも「糖尿病療養指導士の資格を取る予定だ」と伝えていたので、栄養指導の対象となる患者がいれば、教えてもらうことも。
実際、管理栄養士だけでは分からない患者情報も聞け、無事に受験までに③もクリアできたので、他部署とコミュニケーションをとっていて本当に良かったです。
それでも、糖尿病の教育入院の患者があまりおらず、③の症例を集めるのには結局苦労しましたが……。
みなさんも、症例などが必要な資格取得を目指す場合は、積極的に資格取得の予定を他部署に伝えておくのがオススメです。
糖尿病療養指導士を取って感じたメリットとデメリット
メリット・デメリットはそれぞれありますが、結論としては、メリットのほうが多いと思います。
【メリット①】食事療法以外の糖尿病に関する様々な知識を得られる
糖尿病療養指導士の試験は、管理栄養士が関わる食事療法だけでなく、薬物療法や運動療法についても出題されます。
これら糖尿病患者に関わる別分野の知識も勉強できることは、大きなメリットだと思います。
例えば、「どんな薬を使って、どのように血糖値が下がるのか」という薬物療法を知っていなければ、患者さんに適切な食事療法を提案することが難しくなります。
私自身、資格取得前は糖尿病教室や栄養指導時に「もっとこの分野の知識があれば」と知識不足を感じていました。
そんななか、必然的に別分野の知識を勉強することになったので良い機会となりました。
【メリット②】管理栄養士としての「+α」ができた
さらに糖尿病療養に関して管理栄養士として専門的な+αの知識を得られたことで、糖尿病教室で話したり、患者さんに栄養指導をしたりする時にも、より深い知識を患者さんに提供できるようになり、管理栄養士としてのレベルアップにつながりました。
【メリット③】「糖尿病チーム」のメンバー選抜につながり自信になった!
糖尿病療養指導士の試験に合格してから1年後、院内に「糖尿病チーム」が発足しました。
これは「糖尿病透析予防管理料」をとるための準備段階のチームだったのですが、糖尿病療養指導士の資格を持っていたため私もチームのメンバーとして選抜されました。
このことが、資格を取って一番役立ったことだと思っています。
また、チームメンバーとして活動する中で、医師や看護師などの他職種から「管理栄養士さんはどう思う?」と聞かれたり、頼られたりすることも多く「勉強してきて本当に良かった!」と感じたものです。
勉強を通じて得た知識や糖尿病チームに選ばれたこともあり、結果として「管理栄養士としての自分」にとても自信がついたように感じます。
【デメリット】テキストから受験費用まで全額自己負担
病院によっては受験費用を一部負担してくれることもあるようですが、私の勤務先は全額自己負担。
公式テキストの購入費用・講習会受講料・受験費用、細かいところでは資格勉強で利用していたカフェ代など、当時一人暮らしをしていた私にとって正直安くはありませんでした……。
しかし、費用を自己負担していたからこそ「絶対に落ちたくない!」という気持ちも強まったので、今となっては「モチベーションを上げるには良かったかな」と思えます。
資格を取るだけでは栄養指導自体の加算点数は変わらない
これは資格取得自体とは直接関係がないことですが、糖尿病療養指導士は「糖尿病透析予防指導管理料」をとるために必要な資格です。
ただ、管理栄養士が糖尿病療養指導士の資格を取ったからといって栄養指導単体の加算点数は変わりません。
糖尿病予防指導管理科の取得にひもづく形で、栄養指導単体の加算点数自体も変わればもっと病院に利益をもたらせる(=管理栄養士としての価値が高まる)と考えていたので、「せっかく資格を取ったのに……」と、個人的に残念に思うこともありました。
病院や施設に糖尿病透析予防チームがあるのかどうか、また、資格を取って活かせる環境なのかどうか、確認してみても良いかもしれません。
勉強時間は休憩中に確保! 業務がそのまま勉強になることも
ここからは、私が行っていた勉強方法を紹介します。
私の場合は勤務の休憩時間を使って勉強していました。
糖尿病患者への栄養指導をする際には、正しい知識を確認するためにテキストを開くこともあったので、結果的に業務自体が資格勉強にも繋がりました。
また、あらかじめ1日の勉強量の目標を決めていたほうが計画的に進められるうえに、メリハリをつけて勉強できると思っていたので「テキストの項目を1日で○項目勉強する」とルールを決めていました。
毎日勉強する習慣も身に着けたかったので、家に帰って疲れて寝てしまう前に、たった30分でもいいのでカフェに寄ってテキストを開くようにしていました。
教材は公式テキスト+大学時代の教科書
講習会やeラーニングを受講する方法もありましたが、私はeラーニングではなく、公式テキストを購入して勉強していました。
※なお、会場での講習会実施は2017年に終了しました。現在はeラーニングの受講のみ認められています。
公式テキスト以外の教材としては、自分で大学で使っていた教科書(臨床栄養・病態栄養)を引っ張り出して勉強しました。
講習会もあるので公式テキストだけで勉強することは可能ですが、公式テキストの内容が大学卒業時から変わっている点もあったので、公式テキストと大学の教科書を照らし合わせ、変更になっている点を確認しながら勉強すると、より頭の中が整理されたように感じます。
その中で、「入職後、新しい知識を得られていない」と実感することも多々ありましたが、大学卒業時で止まっている知識を現在の業務に活かせるようアップデートできる、とても良い機会でした。
業務と勉強の両立にはモチベーションが肝心
当時は、管理栄養士としての仕事だけでなく、病院の調理場が忙しければ自分の仕事そっちのけでヘルプに入ることも多々ありました。
自分の仕事がたまるうえ、厨房業務は体力勝負なので、毎日本当にくたくたでした。
まだ残業が少ない職場だったため、帰宅後に時間はあるものの、すぐに寝てしまうことも……。
あわただしい日常生活に加えて、資格を取ることの大変さに、何度も心が折れかけました。
そんな時、モチベーションを上げるために私は以下の2つを行っていました。
1.他施設で受験する友人と連絡を取り合う
2.「糖尿病療養指導士 ブログ」などで検索し、資格を取った人の経験談を読んでいた
私の場合、他施設に勤める友人のなかに同じ資格の取得を志す人がいて、連絡をとりあえたのは心強かったです。
お互いにつらいことやきついこと、仕事と勉強の両立のことで悩んでいることを共有しあえたので、「しんどいのは自分だけじゃない!」と思えたことで、気持ちがラクになりました。
また、資格取得者の経験談も、モチベーションアップの支えになったものです。「自分もこうなりたい!」と思えるので、人の成功談はよく読んでいました。
まとめ
管理栄養士は、「管理栄養士の資格を取って合格してからがスタート」と、よくいわれます。
「資格を取りたいけれど、日常生活で手がいっぱい」という人は多いでしょうが、振り返ると、大変で、何度もくじけそうになりましたが、「メリットのほうが大きい」と感じているので、糖尿病療養指導士だけでなく、ぜひ多資格取得にチャレンジしてもらいたいです。
管理栄養士として働き始めてから大切になるのは、自分に「+α」の価値をつけることだと思います。
私の経験談が、みなさんが+αをつけるための一歩を踏み出す勇気となれば幸いです。
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