栄養士の基礎知識

初めての離乳食!歯の生える順番から見た各段階ごとへのステップアップ、幼児食への道のり

保育園で働くのが初めてという栄養士さん。
低月齢児から年長児まで幅広い年齢の子ども達に給食を提供しますが、とくに0歳児から始まる「離乳食」は保育園で働く栄養士さん特有の調理課題かもしれません。

「離乳食ってどの食材を使えばいいの?」
「どうやって作るの?」
「歯が生えていないのに離乳食を始めて平気なの?」

などと分からないことがたくさんありますよね。

私も保育園で働き始めた頃、食材選びや食材の大きさ、硬さなどで悩みました。
子ども達の保護者からも「うちの子前歯がまだ生えないんですけど、離乳食はどうしたらいいですか?」と相談されることがあり、受け答えに悩んでしまうこともありました。

保育園で働いて5年、新人の頃から経験のある栄養士の先輩や保育士さんに相談したり、研修に参加したり資格を取得したり自ら離乳食について勉強してきた私の経験を元にみなさんに「離乳食」についての基本を解説したいと思います。

保育園で初めて働く栄養士さんは参考にしてみて下さい。

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初めての人もまずはここから~離乳食とは?~

離乳食とは

離乳食とは母乳やミルク以外の食品から栄養を取り入れ、幼児食へと移行する過程の食事の事です。

生まれてから約半年間は母乳や粉ミルクをメインに栄養補給をしてきた赤ちゃんですが、おおよそ生後5~6ヶ月頃から十分な栄養補給をするための離乳食を開始する必要があります。

「歯が生えていないのに離乳食を始めて平気なの?」
「前歯だけ生えて噛みくだくことができるの?」

いろいろな疑問がありますよね……。

いきなりだと固形の物が食べられないので、なめらかにすりつぶしたポタージュ状の食べ物から開始し約1年間にわたり赤ちゃんの成長に合わせながら食べる練習を積み重ねていきます。

「歯の成長」がわかれば調理のヒントに!

離乳食を開始する頃でもほとんどの子はまだ歯が生えていません。離乳食を開始して2ヶ月くらい経った頃に前歯が生え始めます。

歯が生えていない状態だと舌で食べ物を取り込んで飲み込み、慣れてきたら舌と歯ぐきを使って食べ物を押しつぶし飲み込むようになります。

このように、歯の成長具合によって食材の大きさや硬さを調節することが大切です。

そこで参考になるのが「歯の生える順番」です。

細かな成長具合は一人ひとりの子どもで異なりますが、おおよそ以下の順番で歯が生えてくることを覚えておくと、子ども達の歯の成長も想像でき離乳食の調理ヒントになります。

歯の生える順番(乳歯)

乳歯の生え方
①7~9ヶ月頃 下の前歯(乳切歯)2本
②8~10ヶ月頃 上の前歯(乳切歯)2本
③10~12ヶ月頃 下の前歯の隣の歯(乳側切歯)2本
④11~13ヶ月頃 上の前歯の隣の歯(乳側切歯)2本
⑤1歳3ヶ月~5ヶ月頃 生えそろった上下4本の前歯の1本隣を抜かした歯(第1乳臼歯)4本
⑥1歳6ヶ月~7ヶ月頃 上下間を抜かして生えていなかった歯(乳犬歯)4本
⑦2歳3ヶ月~6ヶ月頃 上下の奥歯である歯(第2乳臼歯)4本
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離乳食を始めるサイン

生後5~6ヶ月頃から離乳食を始めるといってもその月齢になったからすぐ始めるのでなく、あくまで子どもの様子に合わせることが大切です。
一般的に離乳食を始めるサインとして以下のものがあります。

・首が座り、支えがあればおすわりができる
・哺乳反射(※)が減少し口に指を入れても舌で押し出さないようになる
・大人の食事に興味をもちよだれを流したりする
・授乳の時間が一定になる

これらのサインを目安に離乳食を開始してみましょう。
低月齢の園児は入園して数ヶ月してから保育園での離乳食を開始することがあります。

※哺乳反射とは

生まれつき持っている反射反応の1つで、口に入ってきたものを強く吸う反射のこと。
赤ちゃんが母乳を吸えるのはこの反応が備わっているため。

【ゴックン期】離乳食はここから始まる!

離乳食は、おおよそ生後5~6ヶ月頃のゴックン期から開始します。

今まで母乳やミルクを飲んでいた赤ちゃんですが、授乳の時と似たような少し後ろに傾けた体制で食べると赤ちゃんも飲み込みやすくなります。
この頃はまだ歯が生えていないことが多く、授乳の時と同じような口の動きをします。

この時期から食べられる食材

10倍粥(慣れてきたら7倍粥くらいにステップアップ)、玉ねぎ、にんじん、ほうれん草、小松菜、キャベツ、じゃがいも、さつまいも、大根、絹ごし豆腐、食パン、白身魚など

調理のポイント・食材の進め方

なめらかにすりつぶしたポタージュ状のものを1日1回1さじからはじめます。

最初は10倍粥をすりつぶしたものから始めいも類やにんじん、玉ねぎ、キャベツ、ほうれん草、大根などの野菜に慣れてきたら、絹ごし豆腐や白身魚(かれい、たら)、食パンをだし汁で柔らかくしたパン粥などにも挑戦してみましょう。

豆腐や食パンはアレルギーの心配もあるので、野菜類を一通り食べた後に試します。

食材をたくさん食べられるようになってきて1ヶ月くらいが経ったら食材の大きさも柔らかい小さい固形のものを残す感じに調理し、1日2回食にしてみましょう。

写真:にんじんのペースト写真:にんじんのペースト

意識するべき栄養素

まだゴックン期の離乳食だけだと必要な栄養を摂取できないので、母乳やミルクは飲みたがるだけ与えましょう
おかゆや野菜を食べられるようになってから豆腐や魚類からたんぱく質を摂取し栄養価アップしていきましょう。

次段階へのステップアップ

ゴックン期の食事に慣れてきて、

・離乳食を始めたころよりも食欲が増している
・舌を動かして、食べ物を口の奥に運び上手にゴックンができている
・食べられる食材が増えてきた
・歯が生えてきた

以上の反応がみられたら……
次のステップのモグモグ期へ行きましょう。

【モグモグ期】食べられるものがどんどん増える!

おおよそ生後7~8ヶ月頃から1日2回食を目安に開始します。

大体この頃から下の前歯(乳切歯)が生え始め、舌が前に出ない役割をしてくれます。
それにより、舌は口の中で前後、上下に上手に動くことができるようになります。そのため舌と上あごで食べ物をつぶし飲み込めるようになります。

早い子だと徐々に上の前歯(乳切歯)も生えてきて上下前歯が生えそろうこともあります。

この時期から食べられる食材

ゴックン期で使用したものに加えて、7倍粥(慣れてきたら5倍粥にステップアップ)、きゅうり、なす、ブロッコリー、バナナ、煮りんご、うどん、そうめん、鮭、しらす干し、鶏ひき肉、鶏ささみ、固ゆでした卵黄など

調理のポイント・食材の進め方

1日2回食を基本に、おかゆの形状も7倍粥くらいにステップアップし、いもや野菜も舌と上あごでつぶせる柔らかい2~3mm角の大きさからだんだんと慣れてきたら5mm角くらいの大きさにしてみましょう。

モグモグ期ではまだ調味料は使用せずに素材の味を感じることを大切にしていきます。

きゅうりやなすは皮があり、舌触りが少し気になる食材なので食べ始めのころは皮をむいて調理をすると、嫌がることなく食べられると思います。

子ども達が慣れてきたら縦のしましま模様を描くように「皮を残す→むく」を繰り返して調理していきましょう。

食パンはゴックン期のように柔らかくせず、耳の部分を切り落とし小さくカットして食べやすくしましょう。

うどんやそうめんは、離乳食用に1cmくらいの長さにカットしておくと使用しやすいのでオススメです。

きざみにんじんの煮物写真:きざみにんじんの煮物

意識するべき栄養素

ゴックン期に比べ、魚や肉類が食べられるようになるので、たんぱく質に意識を向け魚や肉は1回の食事で10~15gくらいを目安に食べられるようにしていきましょう。

次段階へのステップアップ

モグモグ期の食事に慣れてきて、前歯が生えそろいはじめ、自ら進んで食べようとする反応がみられたら……

次のステップのカミカミ期へ進みましょう。

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【カミカミ期】1日3回食を基本に栄養素のバランスにも注意

おおよそ生後9ヶ月を過ぎた頃から開始します。

1日3回食を基本に、この頃から炭水化物・たんぱく質・脂質のバランスに気を付けながら、離乳食を進めていくことが大切です。
母乳やミルクの量も朝、夜のみなどと回数と量を減らしていきます。

この頃になるとおおよそ上下前歯4本が生えそろっていることでしょう。
上下前歯4本が生えそろうことにより、上あごが広がり口の中が広くなってきます。それにより、舌や唇の動きも発達しモグモグ期よりも細かい動きができるようになります。

生えてきた歯と歯ぐきを使って食事をするのがカミカミ期です。
また、段々と上下前歯の隣の歯も生え始めて来る頃になるので、噛む練習がよくできるようになるでしょう。

この時期から食べられる食材

ゴックン期、モグモグ期で使用したものに加え、5倍粥(慣れてきたら軟飯くらいにステップアップ)ねぎ、コーン、ピーマン、ツナ、豚ひき肉、納豆、高野豆腐、固ゆで全卵1/2くらい、牛乳など

調理のポイント・食材の進め方

1日3回食を基本に炭水化物・たんぱく質・脂質のバランスに気を付けながら食事を進めていきます。
この頃から少しずつさとう・塩・しょうゆ・みそなどの調味料を使い味に慣れさせていきたいですね。

いもや野菜は歯ぐきでつぶせる硬さで7~8mm角の大きさからだんだんと慣れてきたら1cm角くらいの大きさにしてみましょう。

また、この頃から牛乳にもチャレンジしていきたいですね。冷蔵庫から出した冷たい牛乳だと胃がびっくりしてしまうので、加熱した牛乳から慣らしていくようにしていきましょう。

自ら食べたい気持ちも芽生え、手づかみ食べを行うようになるので手のひらでにぎりやすいようなスティック状に切ってあげると食べやすいです。

にんじんのコロコロ煮写真:にんじんのコロコロ煮
スティックにんじん写真:スティックにんじん

意識するべき栄養素

母乳やミルクからではなく、食事から栄養素をメインに摂取していくことが理想です。そのため、炭水化物・たんぱく質・脂質のバランスに気を付けましょう

モグモグ期よりも食べられるたんぱく質の食材が増えているので、魚や肉は1回の食事で15~20gを目安に食べられるようにしていきましょう。

次段階へのステップアップ

カミカミ期の食事に慣れてきて、上下前歯4本ずつが生えそろいはじめ、おおよその必要な栄養素食事からとれるようになって来たら……

次のステップのパクパク期へいきましょう。

【パクパク期】ここまで来ればほぼ離乳完了!

この頃になると乳側切歯を含めおおよそ上下前歯8本が生えそろって、カミカミ期よりも複雑な舌の動きができるようになります。
第1乳臼歯が生え始めると今まで歯ぐきではつぶせなかったものも食べられるようになり、噛み切ることができるようになってきます。ここまでくればほとんど離乳の完了といってもいいでしょう。

カミカミ期に引き続き1日3回食を基本とし食事のリズムを大切にしていきましょう。

この時期から食べられる食材

軟飯、ごはん、レタス、きのこ類、わかめなどの海藻類、鶏肉、豚肉、ウインナーなどの肉加工品、さば、あじ、かじき、オレンジ、りんご、ぶどうなどの果物、みりん、酒、ごま油の調味料類など

上に書いたものだけでなく、大きさや硬さに配慮し、食物アレルギーの反応がなければ比較的いろいろな食材を食べることができます。
ただし、1歳前後の子はまだまだ消化器官が未熟なので食中毒にかかりやすくなります。そのため生卵や刺身などの生魚は避けてください。

調理のポイント・食材の進め方

離乳の完了といっても完全に大人と同じものが食べられるわけではないので、ごはんの形状は軟飯くらいにし、大人の食事をだし汁などで煮て柔らかくし、味を薄め小さく切ったものにします。

口の中でまとまりにくい肉や魚にはとろみをつけてあげると食べやすいです。

にんじんの煮物写真:にんじんの煮物

意識するべき栄養素

幼児食の1つ前の段階になるので、エネルギー、炭水化物・たんぱく質・脂質、塩分、その他栄養素がバランスよくとれるように進めていきたいですね。

カルシウムやビタミンDは骨の成長に関わってくる大切な栄養素なので注目しましょう。

次段階へのステップアップ

パクパク期の食事に慣れて、第1乳臼歯が生えそろい、乳犬歯が生え始めてきたら……

幼児食へと移行していきましょう。

【幼児食への移行】噛む練習には食感のある食材を取り入れるのも◎

幼児食

奥歯である第2乳臼歯が生えそろうまでは大人と同じ食事をするのは難しいので硬さ、大きさに配慮した食事にしていきます。

味付けは、大人の食事よりも薄めに、食材の大きさはスプーンにのる大きさ、噛み切りにくい肉などの食材は繊維を断ち切るように切れ目を入れると食べやすくなります。

第2乳臼歯が生えてきたら、乳歯全体で噛むことを意識できるように、徐々に大人の食事の硬さ、大きさに近づけていきます。

噛む練習のためにこんにゃくなど食感に変化のある食材も入れていけるといいでしょう。

最後に

最後

歯の生え方や食事の段階に合わせて、舌やあごの動きなどに注目し、食材の大きさや切り方に配慮してよく噛んで食べることを伝えましょう。

食事を「おいしい・楽しい」と思い気持ちが満たされるように、赤ちゃんに合わせたリズムで離乳食を進めていくことが一番大切なので、気持ちに寄り添いながら進めていきましょうね。

※この記事で示した月齢・食材などはあくまで一例です。

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ABOUT ME
すーちゃん
●管理栄養士●ベビーフードコンサルタント資格取得 大学卒業後は都内の社会福祉法人の保育園で勤務し、転職を経て現在は株式会社の保育園で勤務しています。 子ども達の目線に寄り添いながら、素敵な経験、楽しい時間を過ごせるよう食育に力をいれています。 ▼すーちゃんの記事一覧はこちら