取材・インタビュー

「栄養士はもっと柔軟で多様であっていい」母子支援を行う管理栄養士が考えるフリーランスという働き方

mamaful 隅弘子 フリーランス 栄養士 取材 インタビュー

隅弘子(すみ ひろこ)さんは、食や食育を通じた母子支援を行っているフリーランスの管理栄養士。mamaful(ママフル)という屋号で活動されています。

現在は首都圏を中心に、育児に奮闘中の保護者を対象にした食事相談、子どもの食に関するセミナー・講座で活動中。

「こども成育インストラクター」や「母子栄養指導士」といった資格も複数お持ちです。

「フリーランスの管理栄養士として、お母さんたちの食育支援を行っているってどういうこと?」
「フリーランスという形で働く選択肢もあることは知っているけれど、どんなふうに仕事をしているの?」

など、隅さんの活動内容やフリーランスとしての働き方が気になる栄養士もいるでしょう。

そこで今回は、隅さんがお母さんたちから栄養相談を受けるうえで大事にしていることやフリーとしての働き方についてなど、くわしくインタビューしてきました!

シリーズ「Nu:Leaders」とは
栄養士業界でも新しい取り組みやユニークな活動をする栄養士さんにフォーカスした取材シリーズです。

偶然入った管理栄養学科が運命の分かれ道に。そして委託会社で働くも……

―――隅さんはもともと料理が好きだったり、得意だったりしたんですか?

隅:
その質問が実は一番汗をかいてしまうタイプの質問なんですが(笑)、実は全然そんなことなかったんです……!

―――なんかすみません(笑)。そこから、どうして管理栄養士になろうと……?

隅:
今でこそ管理栄養士として働いていますが、最初は全然進路を考えていませんでした。私が管理栄養士という仕事につくことになったのは、偶然だったんです。

本当は、音大に進学するか、社会科の授業が好きだったので社会学部がある大学に行こうか、その二択で進路を考えてました。

―――音楽か社会ですか。意外ですね。

隅:
音大に行きたかった理由はずっと音楽をやっていたからなんですが、家庭の事情もあって諦めざるを得なくなってしまって。

社会学部に関しては、歴史や政治、人の暮らしなど、どの分野も面白いと思っていたことと、人や世の中のことを考えたり観察したり、人とコミュニケーションを取ることが好きだったので興う味があったんです。

―――一見、隅さんの選択肢のなかに栄養学が入ってくるようなスキがなさそうですね……。

隅:
そうなんです……。結果だけを言ってしまえば、大学受験の際にご縁を頂いたということなんです。
今となっては、運命的な引き合わせだったなと思っていますが。

―――では、大学に入ってから栄養学を活かして仕事をしていくことを意識したということですか?

隅:
入学した大学の専攻クラスは人数がすごく少なかったので選択科目以外は「みんなで一緒に」という学び方でした。
最初は生物や化学といった学問を苦手していた日々もありましたが、自然に4年間を過ごしてきた栄養士課程での学びを活かせる仕事を考えるようになっていましたね。

隅弘子さん mamaful①▲最初は偶然だったかもしれない栄養の世界が今では「運命だったのかも」

―――新卒ではどんな仕事に就いたんですか?

隅:
料理に対する苦手意識があったので、調理業務のない仕事を探しつつ、栄養学や食に関連する企業を中心に就職活動をしました。

就職活動を通して自己分析を重ねる日々の中で、やっぱり私は人とコミュニケーションを取ったり、人を観察したりすることが好きと感じたので、委託給食会社の営業職に就職先を絞ったんです。

―――なるほど! 確かにその業界・職種ならば、今仰っていた条件がそろいますね。

隅:
でも、新卒入社して1年と少し営業部で働いているうちに、栄養士の資格を持っているにも関わらず、現場経験がないことがネックになってきてしまったんですね。

それから考えた末に他部署に異動を希望し、調理現場のスタッフをまとめたり先方との連絡調整を行う役割に就き、2年間現場経験を積みました。

やっぱり、現場を知らないとモノって言えないんですよ。
現場経験のないまま人をマネージメントするのはかなり難しかったので、パートさんの欠員が出たときなど、タイミングを見つけては調理場に入って、現場の仕事も覚えはじめました。

―――調理現場に入る以外には、どんなお仕事をしていたんですか?

隅:
メインは現場の管理ですね。
私は東京都23区を中心に東部エリアを任され、主に学校給食を中心に担当を持ち、先生方や栄養士さん、調理責任者、パートさんなど、たくさんの学校給食関係者とコミュニケーションを取る仕事に変わりました。

そこでありがたいことに、働く栄養士さんから学校給食のイロハや栄養士として覚えておいた方がよい知識などを教えて頂く機会にも恵まれました。

当時の学校給食の流れや地域による給食の特徴、調理師さんと栄養士さんの役割の違いなど、現場に立たないと見えてこない話も学べましたね。

そういった経験も得つつ、社内でパートさん向けに衛生管理の講習会の企画、開催をはじめ、現場を安全かつ潤滑に運営するための仕事を任され始めていたんです。

ですが、この後全然違う業界に一般職で転職することになります……。

一般企業に転職したから分かった「普通の女性の」リアルな悩み

―――なぜ、管理栄養士として仕事ができていたのに一般職に転職を?

隅:
きっかけは、結婚でした。委託会社では、土日祝日問わない不規則な仕事で、休みの日も時間も関係なく電話がかかってくることも多かったので、結婚するとなるとどうしても厳しい労働環境になってしまったんですね。

そこで、フランチャイズ事業の立ち上げ支援をする会社の営業事務職に就きまして。

栄養士とは関係のない一般企業に転職してみると、使われる言葉も環境も仕事のルールも何もかもが違う環境で、本当にたくさんの刺激を受けました。

自分がそれまで栄養士として栄養や食の業界にいたからこその衝撃もありましたね。

―――それはどんなことでしょうか?

隅:
それまで私がいた栄養・調理の業界では、やはり栄養や健康に関する正しい知識をきちんと持っていて、玉石混交な健康や栄養の情報に惑わされない人が多かったんですね。

そこからいわゆる一般の若い女性たちが働いている職場に転職した途端に、世の中の「一般の女性」が食や健康に対して持っている知識や健康管理の意識、リアルな体調の悩みなどを初めて知ったんです。

つまり、ダイエットサプリを飲んだり体にいいと言われているジュースを飲んだり、健康や食、美容にすごくアンテナを張って色々な方法を試しているのに、失敗してしまう。情報を集めて、頑張って試しているのに、常に不調を抱えている。

こんなふうに、今まで知る機会がなかったごく一般の女性の普段の体調を知ったり、美や健康に関する意識を聞いたりしているうちに「なんかおかしいな?」と思い始めたんです。

―――それは、隅さんがそれまで栄養や食の世界にいたからこそ感じたギャップや衝撃だったんでしょうね。

隅:
はい。自分がこれまでに培ってきた栄養士としての食に対する知識と、世間のリアルな人たちとが持っている知識の間に、ズレや違和感を感じたんですね。

だからこのとき、「もう一度ちゃんと食について学びたい」と思いました。

この時感じた「正しい食や栄養というものを、世間一般の女性に届けるために何かできないかな?」という思いが、のちにフリーランスとして、お母さんたちを対象に仕事をすることに繋がったなと思っています。

「ママを笑顔いっぱいに、ママの気持ちを豊かにしたい」mamafulに込めた思い

―――ここで改めて、隅さんの現在のお仕事の内容を教えて頂けますか?

隅:
今、私はmamaful(ママフル)という自身で立ち上げた屋号を通して仕事をしています。

mamaful サイト▲mamafulのホームページ。管理栄養士としての隅さんの想いが詰まっている

隅:
最初は隅弘子として名前を全面に出す活動の仕方も考えたんですが、いわゆる「屋号」のようなイメージがあった方がいいなと思い、自分の名前とは別に考えました。

名前には「ママの笑顔がいっぱい(ful)になってほしい」「ママの気持ちが豊かになってほしい」という想いを込めました。

―――お母さんたちに寄り添いたいという隅さんの気持ちが入った名前なんですね。mamafulとしては、今どんなお仕事を引き受けていらっしゃるんですか?

隅:
主に講演・メディア出演・相談業務の3つが今の仕事の柱ですね。

mamafulではお母さん向けの食育講座や食スクールなどを提供しておりまして、例えばお弁当講座や幼児食の講座などを開いています。

ママ向けのランチセミナーなど、お母さんたちも楽しみながら、食を美味しく学べるイベントも定期的に開催中です。

隅弘子さん 2 隅弘子さん3
隅弘子さん4▲画像提供元:mamaful

ほかにも、市区町村が主催する食育の講座やセミナーの依頼をいただいたり、NPO法人、給食会社様といったような企業、団体様が主催するセミナーの講師を務めることもあります。

メディア出演に関しては、取材をお受けしたり、コラムなどを寄稿したりしています。
また、今後お母さんがたの支援をしていきたいという方のための資格養成講座の認定講師やディレクター業務といった育成事業にも携わっています。

自身も経験した「食」に関する育児の悩みに寄り添うために

―――相談業務に関しては、どのような形でお仕事を引き受けていらっしゃるんでしょうか?

隅:
子どもの食事に悩むお母さんたちを対象に、都内の子育て支援施設で定期的に栄養相談を受けたり、施設内でミニセミナーを開催したりしています。

育児って、正解がないんです。
どこまでやるべきなのかなどはじめて経験することも多い育児には、不安や悩みがつきませんし、正解がなんなのかも常に試行錯誤が続きます。

私はそういったお母さんたちに寄り添いたいとmamafulを立ち上げたので、相談業務ではお母さんたちが一番ラクになれる、育児を楽しめる気持ちを取り戻せるようなアドバイスをするように、常に意識しています。

隅弘子さん5▲子どもの食に悩むお母さんたちの相談に応じる隅さん

―――なぜ隅さんは管理栄養士としてお母さんたちを支援するような仕事がしたいと思うようになったんでしょうか?

隅:
やっぱり自分が子育てでわからないことだらけ・不安だらけな状態を経験したことが大きかったですね。

私自身も子どもとどう接していけばいいのか悩んでいたなかで、思いついたことは、食を通じて子どもと距離を縮めることでした。

子どもに食べさせるだけではなく、親である私が美味しそうに食べているところも見せるなど、子どもと食事を楽しむことを子育てのなかに取り入れていったら、偏食だった娘も少しずつ食べられるものが増えまして。

「食を通じてちゃんと子どもと真正面から向き合うって、子育てにおいて大事なんだな」と思ったんですよね。

栄養士という資格を持ちながらも子どもの食事に対してこれだけ悩みを抱えたのであれば、「周りのママ友や育児に奮闘中のお母さんたちはどうしているんだろう?」と思ったんです。

案の定、子どもの食事に関する悩みを持たない人が少ないのではという状況でした。

―――それこそ、子どもに食べさせるのがうまくいかないとか、子どもの食事がわからないという人も多そうです。

隅:
まさにそうです。「全然食べてくれない」「こんなに頑張ってるのに子どもが言うことを聞いてくれない」など、食にかかわることで育児ストレスを抱え込んでしまって、子どもへの表情も固まってしまうのか、子どもが笑ってくれないというお母さんもいらっしゃいました。

そういう光景を見ているうちに、社会学に興味があったからか、お母さんたちが孤立感を抱かなくて済むようにケアできる場所やセーフティネットのようなものが、今の社会の中に足りていないことが、さまざまな社会問題を引き起こしているのかもしれないと思いまして。

―――なるほど。

「完璧じゃなくていい」プロとして伝えたいこと

隅:
普段の育児でさえ悪戦苦闘の連続なのに、子どもの食事づくりなんて、一人で勉強してやろうと思う時間があったら、もっとママ自身休息したいと思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

栄養士だった私ですらあんなに悩んだんだから、ほかのお母さんたちはもっと悩んでて苦しいはずだな、と。

なので、「じゃあ私が、楽しく気負わずに子どもの食と向き合うコツや食事づくりのポイントを伝えられる人になればいいんじゃない?」と思ったんですよね。

そんなに歯を食いしばらなくていい。神経質にならなくても大丈夫。
食を通じてそのことを伝えられたら、お母さんたちはもっと育児を楽しく、ゆったりできるようになるんじゃないかと考え始めたんです。

隅弘子さん 6▲「食材は身近にあるもので大丈夫なんですよ」とレシピに悩むお母さんにアドバイス

隅:
「いざ、伝えよう」と思い立っても私はたった一人しか育てていない。
私のケースの場合といった視点だけ伝えようとしても限界もありますし、それぞれのケースがあります。

なので、より多くのケースに柔軟に考えられるように、理論や見識を学びたい!と、書籍を読んだり、資格を取ったりして、改めて離乳食や幼児食といった成長に見合った食事のあり方についても学びなおしました。

―――ご自身が気負いすぎず、神経質にならずに食を通じて育児と向き合ったことを、理論的に整理された知識を肉付けすることで、プロとして伝えたかったんですね。

隅:
そうです。「子どものためにはこうしなければならない!」とか「絶対にこの時期はこれを食べさなきゃダメ!」とか、そういう情報に圧倒されてガチガチに緊張したり、プレッシャーで押し潰されそうになっているお母さんたちは、実際に仕事を通してとてもたくさんいらっしゃいました。

そんなお母さんがたへ、単に「大丈夫ですよ」というのではなく、どうして大丈夫と考えて良いのかを理論だって伝えたかったのです。

自信がないと思っても大丈夫!

「実は私は料理を作るのは苦手。手の込んだ料理を食卓に毎度出しているわけではありません。それでも大丈夫なんですよ。いい塩梅でやろう。頑張りすぎなくても、子どもはちゃんとママを見て育つんだよ

と伝えることで、とにかくお母さんたちに安心してもらいたかったんです。

―――そういったメッセージを伝えることも含め、隅さんがお母さんたちから相談を受ける際に気をつけていることってほかにありますか?

隅:
お母さんたちが何に不安を感じているのか? 何に困っているのかをヒアリングして、その人にとっての最適な答えを一緒に考えることですね。

私は、自分に与えられた管理栄養士としての役割は、例えば「子どもが●●期になったらコレを食べさせるべき」といったことが書かれている教科書の中から、こぼれてしまっている部分やスキマの部分の答えを拾うことだと思っているんです。

でも、逆に教科書通りの答えが欲しい人にはあえて教科書の答えを言うようにしています。なぜなら、お母さんたちやお子さんたちは、個々に違って当然だからです。

―――どういうことか、もう少しくわしく聞きたいです。

隅:
一般企業で働いていたとき、色々な業界の人や職種の人たちと関わる機会をもてましたが、そのとき改めて実感したのは「社会には本当に色んな人がいる」ということでした。

栄養や食の業界からは離れていた時期でしたが、社会は多様な人たちで出来ているんだということを知れたことは、栄養士として自分の武器になったと思っています。

もちろんお母さんたちだって、多様です。
色々な事情や考えをもったお母さんがいますし、お子さんの成長度合いだって、違って当然。私はそこを何よりも尊重したい。

なので、まずは相談に来てくれたお母さんとお子さん、そのありのままの姿を踏まえたうえで「どうしたらこの人が気持ちが楽になれるかな? 育児や食を楽しいと思えるかな?」と考えた提案をするようにしています。

食育はイベントじゃなくて毎日のこと! できる範囲のことを楽しんでやろう

―――頑張りすぎないで、心を楽にして大丈夫。育児や食は、楽しんでしまおう! 隅さんがお母さんたちに発しているこうしたメッセージは、隅さんの食育観にも反映されていそうですね。

隅:
そうですね。個人的に家庭での食育に対して思っているのは、もっと柔らかいイメージのものとして、世間に受け止めてもらいたいな、ということです。

「この食材は身体に悪い」「これを食べるのはよくない」など、やってはいけないことを前提に考えるものではなく「親子で一緒にできる」「楽しめるもの」という見方を前提にしたいんです。

―――確かに「食育」というと、なんだか難しそうとか思っている人は多いかもしれません。

隅:
私は全然そんなこないと思っていて。だって、家庭での食育ってそもそもイベントではなく日常の、毎日の食事のことなんです。

毎日のことに対して、そんなに大がかりなことって、なかなか出来ないですよね?
だからこそ、毎日の食事の範囲内でできる食育をやればいいと、私は思っています。

例えば、子どもと一緒にご飯を食べるとか、大人が食べている姿を見せてあげるとか、おはしの使い方を教えてあげることも、食育のひとつです。
一緒に買物に行くことだって、家族みんなで外食に行ってワイワイすることだって、食育ですよ。

―――なるほど。そうした日常のカジュアルな行為や動作も食育のひとつと捉えていいんですね。

隅:
はい。食育って、日常の小さなことの積み重ねですから。

細かいルールや禁止事項を作ってそこに子どもを当てはめることよりも、子どもが自分で生き抜く力を育てることの方が、本質に近いと私は思います。

一番大事なのは子どもが生き抜く力を育てることだと思えば、その過程でストイックになりすぎなくてもいいんじゃないかと、私は思います。

お母さん自身が追い詰められてしまったり、自分で自分にプレッシャーをかけて潰してしまいそうになったりしたら、元も子もないですから……。

資格取得で「栄養学は“食”というジャンルの中のひとつ」と気づけた

―――ここから少し話を変えて、隅さんのようなフリーランスという働き方について聞きたいのですが、「フリーランスとして働こう!」と決めたときには、まずどのようなことから始めたんですか?

隅:
私は、まず改めて食について学び直そうと思い食関連の民間資格を取得しました。

そもそも食について学び直そうと思った発端が、栄養士として自分が学んできた自分と世間一般の人たちの食に対する知識や考え方にギャップを感じたことです。
世の中の感覚にアプローチするには、民間の食の資格を取る方法が近道だと思ったんです。

―――ほかにも良かった点や資格取得が進路に活きた点などはありましたか?

隅:
まず、数年ぶりに食に関する新しい知識を得たことによって、それまで自分がもっていた常識や感覚がいい意味で壊れました。

それまでは「自分は管理栄養士で栄養学のことぐらい分かってる」という感じだったんですが、栄養学は「食」という大きなジャンルのなかのひとつでしかないということに気づきまして。

食というのは栄養学だけじゃなくて、本当に色々な分野や切り口が総合的に集まって捉えられるものなんだとわかったんです。

最終的にそれが、フリーランスとして、自分は栄養士業界のなかでどういう立ち位置で活動すればいいのか、自分には何ができるのか、ということの発見に繋がったと思っていて。

隅弘子さん 7

―――資格を取ったことが、最終的にフリーランスとしての自分の道に繋がる土壌になったんですね。でも、いきなりフリーランスとしての仕事に慣れていくのは大変だったと思います。

隅:
最初のうちは、確かに苦労したこともありました。
始めて間もないころ、ある企業様から依頼を受けて従業員向けに講義をしたんですが、私の伝え方に問題があって、クレームを受けてしまったんですね。

このとき「人に自分が伝えたいことを誤解なく伝えるのって本当に難しいんだな」と痛感して、まずは自分の伝える技術について徹底的に鍛えようと、家で講演の中身を録音して聞き返し、改善点を洗い出しては何度も録音し直して、練習していました。

話し方や伝え方に関するコツが載っている本も読みましたし、ボキャブラリーを増やすための書籍も手に取りました。

「伝えたいことが相手に伝わるように、そしてその方の行動の変容を促せるように」を目標に、講義の中にキーワードを設定したりするなど、とにかく、そのときの自分にできる工夫は積極的に取り入れていましたね。

フリーランスへの転身時に気をつけたのは、自分の立ち位置を決めること

―――実際にフリーランスとして活躍している隅さんから見て、「フリーランスの管理栄養士」という働き方はいかがでしょうか?

隅:
アイディア次第で、本当に色んな働き方ができると思います。

というのも、栄養士が主に関わる「食」っていうのは、色々な切り口からアプローチできるジャンルなんですよね。ジャンルそのものが持っている選択肢の範囲が、もともと広い。

なので、自分がどの分野に興味があるのか? 何が好きなのか? どういうことをやってみたいのか?

それを自分のなかに見つけることが、フリーランスという働き方の可能性を育てるんじゃないでしょうか。

―――隅さんのように「自分だけのキャリアや働き方」を探すためのコツなどはありますか?

隅:
人と交流することがコツかなと思います。やっぱり、人との出会いって世界を広げてくれますから。

人と出会うことによって、自分が新しく知ることとか「自分にできるかもしれない」ことも増えていきます。

自分の世界を広げたくれた人と「今度一緒に仕事ができるかも」など、仕事をどんどん横に広げていくことだって、できますよね。

ただ、私はフリーランスとして仕事を始めるにあたり、「栄養士として自分はどういう立ち位置でいこうか? どの分野で活躍しようか?」ということは最初にすごく考えて、そこを決めたらもう絶対にブレないようにしようとは思っていました。

それだけが唯一、フリーランスに転身するにあたって気をつけていたことです。

隅弘子さん 8▲フリーランスとして働くために決めていたのは「自分の立ち位置」

―――自分だけの立ち位置を考える、といいますと?

隅:
私は、栄養士業界の中でもそれぞれ必要とされている役割のようなものがあると思っています。

ある人は給食センターでの大量調理を行い保育園や学校に給食を届けること、またある人は、特定保健指導の栄養指導で健康な人を増やすことが求められている。
どちらも、栄養士が必要とされ、なくてはならない役割です。

私の役割は、お母さんたちと「ねえねえお話聞かせて」とか「どこが心配なの?教えて」と指導というよりコミュニケーションを中心にして不安を解消し、笑顔になってもらうこと。

私が目指すべき管理栄養士としての役割、そして立ち位置はそれだと思ったんです。

―――それがmamafulを立ち上げるという形で完結したということですね。

隅:
そうですね! 病院や介護施設、保育園など、それぞれが必要とされる居場所があるのと同じように、私はフリーランスという形で、お母さんたちを食を通じて支援するという居場所が見つかったんだと思っています。

「栄養士はこうあるべき!」「働ける業界は限られている」と思い込む必要はない

―――栄養士・管理栄養士というと「大量調理」や「栄養指導」ばかりが目立ちがちですが、隅さんのようにフリーランスとして育児や食の悩みに寄り添う役割も必要なんだと思います。

隅:
そうかもしれませんね。だからこそ、私のように「大丈夫大丈夫、私だって料理苦手だもん(笑)」とか「疲れてるときは休んじゃいなよ」とか言ってしまう管理栄養士がいてもいいんじゃないかな? と思うんです。

なので、栄養士業界全体に足りていない役割や立ち位置を、今私がやっているような仕事を通じて補うことで、業界全体をもっと柔軟に多様に活躍する栄養士が増え、病気になった時や、◯歳児健診など特別な状況でしか会えないわけではなく、身近な相談相手となったらもっと心身健康な社会が作られるのではないかとさえ思います。

―――栄養士業界を柔軟に、多様にですか。

隅:
はい。これもさきほどの話と繋がるんですが、私はやっぱり適材適所や役割というものがそれぞれ人によってあるはずだと思っています。

なので、活躍する場所や分野は別でも、結果的にみんなが自分にぴったり合った場所で活躍できれば、それが一番幸せだし、業界が発展していくことに繋がるんじゃないかな、と。

時代の流れも相まってのことですが、「栄養士はこうあるべきだ」とか「こういう施設で働くものだ」とか「こういうことをしないといけない」と思い込むよりも、柔軟に自分のキャリアを考えていいと思うんですね。

そうすれば、個々の能力が最適な形で活かされることになるでしょうから。

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―――では、栄養士一人ひとりが、自分に最適な働き方や仕事の場所、役割を見つけられるには、どんなことにチャレンジしたら良いのでしょうか? 最後にアドバイスをお願いします。

隅:
これもさっき言ったことと重なりますが、ぜひ栄養士のみなさんは色んな人と会ったり話したりして、他の世界を見てみることも意識してほしいですね。

栄養士って、どうしても交友関係や職場の環境が狭くなりがちです。
なので、ネットだけではなくて、リアルに人に会ってみることが大事だと思います。交流する人は、何も同じ栄養士業界の人だけじゃなくてもいいから。

色んな場所に行ったり人と会ったりすると「ああ、私は実はこういうことが好きだったんだ」とか「こういうことがしたかったんだ」とか気付けるきっかけは増えます。

そのきっかけが、自分の将来のキャリアに繋がる可能性は充分にあります。

ゆっくりで、ゆっくりで大丈夫です。
フリーランスになることに限らず、自分に合ったキャリアを築いていきたい人、自分の確固たる役割を見つけたい人は、まず人との出会いを作ることで、自分の選択肢を広げることから始めてみてください。

まとめ

「栄養士はもっと多様で、柔軟であっていいし『こうあるべき』という働き方や選択肢にとらわれることはもったいない。

自分の得意や役割を活かせるような、自分らしいキャリアの築き方もある。だから、色々な場所に行ったり多種多様な人たちと会ってみよう。」

そう語った隅さんの言葉は、栄養士としての活躍方法や自分なりのキャリア形成に悩んでいる人たちの背中を押してくれるかもしれませんね。

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