栄養士さんの就職先として「給食調理のある学校」というのはよく聞くと思います。
ですが、給食調理ではなく「食育の授業がある学校」という就職先があるのを知っていますか?
食育授業というと、保育・幼稚園や小学校で行われるものと思われがちですが、私が担当になったのは私立の中高一貫校。
私が勤めていた委託会社としても食育授業の委託は初めての試みで、当時としてもかなり珍しい取り組みでした。
今回は、私の経験から食育の授業のある学校で働く栄養士の仕事を紹介したいと思います。
目次
学校の売店運営と食育アシスタントの二足のわらじ
私の場合、一般的な給食調理を行う栄養士として委託会社に臨時社員として勤め、数年間は調理業務を主に行っていました。
その後、委託会社の方針で「学校での食育授業」の委託に注力することになり、私も食育授業のアシスタントをすることになりました。
「食育授業のアシスタント」といっても、それだけが業務ではありません。
実際には、学校の売店も委託会社が運営を請け負っており、その売店運営業務半分、食育授業のアシスタント業務半分といった感じで働いていました。
①学校の売店運営
仕入れるお弁当の選定/販売業務/経理業務など
②食育授業アシスタント
授業テーマ決め/提供する食事の検討・試作/当日のアシスタント業務など
毎回異なるテーマで行う食育授業
ここからは、私が携わっていた食育授業の内容を主に紹介したいと思います。
学校毎に違いがあるかもしれませんが、私が働いていた中高一貫校での食育の授業は、
「毎回異なるテーマで作った料理を、お昼に食事をしながら授業をする」というものでした。
食育の授業は1回1クラス、ひとつのテーマでもおおよそ2週間かけて中高の全クラスを回っていました。
●日本の伝統料理(お正月料理/郷土料理)
●健康を意識した料理(夏バテ予防や風邪予防)
●世界の料理(交換留学生の母国の料理/修学旅行先) など
中高の生徒達に、健康に生活を送るための食の知識を教えたり、マナーや伝統食について学ぶ機会を提供したりするのはもちろん、食習慣を身につける時期である中高生のうちに食事を楽しみながら「食」について考えるという意識を持てるように、と始まった授業でした。
アシスタントでも準備から当日までやることはたくさん!
当日、食育の授業で話をするのは管理栄養士さんの担当でしたが、私を含むアシスタントの栄養士も準備から一貫してかかわるので、その業務量は少なくありません。
例えば、先程いくつか挙げた食育のテーマを決めるにあたって、どんなメニューにして、どんな授業にするかを管理栄養士さんや調理スタッフと一緒に会議することから始まります。
さらに、そのメニューを試作してどのくらいの時間で作れるのか、原価計算していくらで作れるのかを算出することも栄養士の業務。また、厨房に入って授業で使うメニューを調理スタッフが慣れるまで一緒に作って教えるのも、日々の準備業務のひとつです。
こうして準備が終われば、いざ当日の食育授業となります。
食育授業当日の流れ
食育授業は「料理を食べながら授業をする」という形式だったので、お昼時に始まります。
あるテーマの授業では、生徒達には配膳から手伝いをしてもらい、それも一つの授業としていました。
例えば、お茶碗に決まった量のご飯を計量して入れてもらいます。そこで生徒自身に「その量がどのくらいのカロリーになるのか」「今自分に必要な量なのか」などを、配膳しながら考えてもらいます。
配膳が終わったら着席し「いだだきます」と声を合わせて食事を始め、そこから管理栄養士が食育の授業を始めます。
管理栄養士が解説するマナーや季節の料理、海外の文化など多種多様なテーマを聞き、実際に料理を食べならがら、そして楽しみながら学んでいくのです。
アシスタントの私はというと、栄養士として生徒達の質問に答えたりする事もありましたが、基本的に授業の間はサポートや違う業務にまわる事が多かったです。
食事と授業が終わったら、生徒達の残食確認です。生徒達が何を残し、なぜ残したのかを話し合いながら下膳していきます。
午後は、次回の授業のためにどうした方がいいか、何か対策はあるのか会議し、次の日に使う食材の確認をして、授業当日は終わります。
生徒達の「授業が楽しみ!」がやりがいに
食育のアシスタント業務は、毎回考えることも多く、これまでの私の経験では難しく感じる部分もありましたが、食育の授業に携わっていると、調理業務とはまた違ったやりがいも感じられます。
ある放課後に、中学部の生徒と話す機会がありました。
その生徒から「いつもお菓子とか菓子パンばかり食べていたけど、食育のおかげでもっと色々な物を食べてみようと思った」と言われました。
じっくり話を聞いてみると、その生徒の家庭では外食が多く、お昼はいつもコンビニで自分の好きな物ばかり買っていたそうです。
そんななか、食育の授業で食べる料理は初めてばかりで「毎回授業の時が楽しみで、毎日だったらいいのに!」と熱心に伝えてくれた時は、「この仕事をしていて良かった!」と思いました。
失敗から栄養士として反省することも……
もちろん、上手くいくことばかりではありません。
世界の料理というテーマで「ビーツ」を使ったボルシチ(スープ)を提供した時の話です。
食育を行う私達としては、「ビーツを使って可愛い赤色のスープにすれば、見た目が珍しく取っ掛かりとしては最適では」と思いメニューを決めました。
ところが、当日その赤色のスープを出すと、生徒達は手をつけない子の方が大多数。おいしい・おいしくない以前にほとんど口をつけてもらえませんでした。
この時はさすがに授業後の反省会でも、みなが口々に「失敗した……」とつぶやくほどに意気消沈。
当たり前のことに気づかされた
このときは私自身も「栄養士としてまだ未熟なのだ……」と反省しました。
私達が安心して料理を食べられるのは、調理される前の食材を知っているからこそ。
そもそもビーツが何かもわからない生徒の目線で見れば、見たこともない赤色のスープは恐怖でしかありません。
しかも、元の食材が想像できないスープの状態では「未知の食べ物への恐怖」が勝ってしまい、食べてみるという気すら起きないのは当たり前、ということに気がつきました。
ですが、もし同じような機会があるなら、「ビーツという食材が何か」から「どういう色で、どういう風に調理して食べるのか」まで丁寧に解説して、見た目にもビーツだとわかるような調理方法でリベンジしたいと思っています!
最後に
栄養士の学校に通っていた時の職場体験で、小学生に栄養について教える機会があり、そこで「教える」という事の楽しさを知りました。
その後、「栄養士として何か教えたり発信したりを仕事にできないか」と考えていましたが、勤めていた委託会社が食育の授業に力を入れるタイミングで、私も食育に携わることができました。
ですが、今では栄養士の仕事は多様化しており、学校で正式な授業として食育を行う「栄養教諭」の制度もありますし、食育の授業を行う学校も増えてくるでしょう。
栄養士として「教える」という仕事に携わりたい栄養士さんは、今回紹介した「食育の授業のある学校」を就職先・転職先として探してみてもいいかもしれません。
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