児童養護施設で働く職員には、入所している子ども達の養育者という一面もあります。
さまざまな事情を抱えた子ども達を保護し、育てるのが児童養護施設職員の責務。
栄養士・管理栄養士もまた、養育者として子ども達を栄養面からサポートし、彼らの成長に関わることができます。
この記事では、児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士の役割や仕事内容、やりがいなどをまとめました。
目次
児童養護施設の栄養士・管理栄養士の役割は「養育者」
児童養護施設での栄養士・管理栄養士が担う役割は、子どもの発育と発達を栄養面からサポートすること。
いずれ退所していく子ども達が安定的な生活水準を保てるよう、食育推進も行います。
また、児童養護施設で働く場合、職種を問わず必要とされるのは、子ども達を全職員で「養育」するという心構えです。
スタッフ全員が子ども達の「養育者」なのです。
なかには、入所時に基本的な生活習慣が身についていない子どももいます。
栄養士・管理栄養士は、そのような子どもに対しても養育者として直接的に関わり、いちから食事指導を行ったり、生活習慣改善のサポートをする役割を担っているのです。
「食育推進」が重要とされる児童養護施設での仕事内容
児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士の主な仕事は、子ども達の年齢や発育、発達なども含めた栄養アセスメントをもとに、食事計画を作成し、実施すること。
食材の発注や献立作成、調理業務も行います。
また、「社団法人日本栄養士会」は『児童養護施設における【食生活の自立支援マニュアル】』において、「養育」のなかでも食育は重要な項目と発表しています。
◆参考:社団法人日本栄養士会「児童養護施設における『食生活の自立支援マニュアル』」
「社団法人日本栄養士会全国福祉栄養士協議会」は平成20年度、児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士が注力すべき食育推進を、以下の3点に集約しました。
・「食育の計画」
・「食育の視点を含めた自立支援計画(個別)」
・「食事提供に関する計画」
食育の計画
退所時に「どのような子どもに成長していて欲しいか」という目標を立て、食育計画を作成します。
食育計画は、子ども達一人ひとりの生活や発育に関する状況と課題を把握したうえで立案されるものです。
食育の視点を含めた自立支援計画(個別)
子ども達一人ひとりが「自立」できる食生活を支援することも求められます。
「食育の視点を含めた自立支援計画(個別)」は、前項の食育計画とはまた異なる計画書です。
食育計画と比べて目標設定のスパンが細かく、短期的・中期的な目標も年度ごとに決めるのが特徴。
年度末には栄養士・管理栄養士をはじめ、他職種のスタッフとともに効果検証を行い、次年度の課題整理や確認に活かされます。
食事提供に関する計画
児童養護施設での食事提供におけるポイントは、子ども達一人ひとりの栄養アセスメントを把握すること。
児童養護施設の子ども達には、性別や年齢、生活状況などに個人差があります。
そのため、一人ひとりの成長と照らし合わせた献立作成や栄養目標量を設定することが欠かせません。
食事のマナーを教えたり、行事食や郷土料理などの食文化に子ども達を触れさせたり、調理と栄養の知識を伝えたりなどの指導も行います。
また、児童養護施設における栄養士・管理栄養士は同じ養育者として他職種のスタッフとの密な連携も不可欠。
食育計画の立案や効果検証、食に関する行事などは、パートナーである他職種のスタッフとも協働します。
どんな人が仕事の対象?
児童養護施設に入所している子ども達を相手に仕事をします。
児童養護施設では一般的に0歳から18歳までの子どもが入所しているため、一人ひとりの個性や生育環境が異なることを念頭に置くべきとされています。
児童養護施設に入所する子ども達にはさまざまな事情や背景を抱えた子が少なくありません。
不適切な養育環境下にいたり、虐待の被害者だったりと、心身に傷を負っている子どももいます。
健康的な食生活や人と食卓を囲む経験は、健やかな心身の発達と人間関係の作り方にも影響を与えると考えられています。そのため、美味しく楽しい食事の体験は子どもにとって重要なのです。
こうした視点も鑑みたうえで、児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士は、施設が彼らにとって安全基地であると感じてもらえるような取り組みに励んでいく必要があるでしょう。
どんな人と働くのか?
児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士は、入所している子ども達の養育を支え合うためにも他職種のスタッフとの連携が非常に重要です。
たとえば児童指導員や心理療法士、保育士、看護師、保健師、ケアワーカーなどが挙げられます。
児童養護施設の給与・休み・待遇とは
「栄養士のお仕事」では、栄養士・管理栄養士向けに児童養護施設の求人情報を掲載しています。
その他の求人サイトも参照のうえ、児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士の待遇面を調査しました。
正社員・契約社員・パート(アルバイト)の雇用形態によって変動はありますが、一例を紹介します。
正社員
正社員の給与は17万~20万円前後が相場のようです。昇給や賞与、退職金制度を設けている職場もあります。
休暇に関しては、正社員の場合115日~119日程度取得できるようです。
有給休暇や育休・産休制度がある求人も見当たります。
施設独自のカレンダーによって休暇日数が決まるパターンもあります。
宿直制があったり、行事のさいは出勤が必要な施設も。
シフト制を採用している職場もあれば、勤務時間固定制の職場もあるようです。
社会保険完備・交通費支給ありの求人がほとんどです。
契約社員
契約社員で働く場合、給与の目安は16万~25万円前後ととらえておくとよいでしょう。
休暇は月8日制を基準としている施設もありました。
勤務形態はシフト制が基本のようです。早出出勤がある職場もあります。
待遇面に関しては正社員と同じく社会保険完備・交通費支給の求人もあり、なかには寮の提供や食事補助まで用意のある求人も。
正社員登用制度を採用しているケースもあります。
パート(アルバイト)
パート(アルバイト)として児童養護施設で働く場合は、調理員としての募集も多く見られます。調理担当のみの場合は、資格不問の募集もありました。
給与は17万円前後が目安です。
シフト制、早出出勤ありのパターンが多く見られます。
休日日数に関しては、一例として、4週7休と公表している求人があります。
また、パート(アルバイト)社員も宿直を担当する場合もあるようです。
社会保険完備・交通費支給の求人がほとんどですが、職場によっては住宅手当や宿直手当などが支給されるところもあります。
上記の情報は2019年3月時点での掲載情報より作成しており、就職・転職での条件を保障するものではありません。ご了承くださいませ。
児童養護施設で働くには子どもの成長と真剣に向き合う力が必要
児童養護施設で働く栄養士・管理栄養士に求められるスキルは、子ども達一人ひとりの成長状況を把握しつつ、適切な栄養補助をすること。
子ども達は一人ひとり年齢も性別も異なります。
成長曲線や体格指数などを理解したうえで、発達段階に応じた量の食事を提供したり、スタッフに情報共有したりする必要があります。
また、スポーツを日常的に行う児童がいる場合は、それを踏まえた栄養補助も考えなければなりません。
このため、栄養士・管理栄養士は子どもの心身の発育や発達に関する知識や成長の変化を見逃さない観察眼が大切です。
子ども達に寄り添い、スタッフと円滑な業務を行うために、コミュニケーション能力も必要でしょう。
子ども達が退所した後のことも考慮して、子どもが自分の栄養状態や健康維持に関心を持てるよう、栄養の知識を教える「栄養教育」を行うスキルも求められます。
調理技術や食事のマナー、食文化を教えることも栄養教育の一環です。
このように、子ども達の退所後の生活力まで見据えたサポートも行うため、子ども達の成長や養育と真剣に向き合う熱意は欠かせません。
児童養護施設で働くやりがいとは?
子どもが社会へ巣立つまでの成長過程を見守り続けられる点は、児童養護施設で働くことならではの特徴。
保護者の代わりともいうべき養育者として、育ててきた子ども達を社会に送り出すときの感動や感慨はひとしおでしょう。
自分が考案し、調理した料理を食べて子どもが育っていく姿そのものにやりがいを感じる人もいるかもしれません。
責任や役割は大きい仕事ですが、だからこそ手塩にかけて育てた子ども達が退所していくときの喜びも大きいでしょう。
児童養護施設へ転職希望の管理栄養士さんへ
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