食にまつわる資格は多くありますが、その中でも自分の作った料理で人に喜んでもらえる「調理師免許」はやりがいがあり、人気のある資格です。しかし、調理師免許という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような資格で、どうしたら取得できるのかわからない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、調理師免許の概要や取得方法、免許を持つメリットのほか、調理師試験について詳しく説明します。
【この記事でわかること】
●調理師免許を取得するには、調理師養成施設を卒業する方法と、実務経験を積んだ後に受験する方法がある
●調理師免許を取得すると、就職や転職で有利になったり、資格手当がもらえたりするなどのメリットがある
●調理師試験に合格するためには、すべての科目を均等に学習する必要があり、独学が不安なら通信講座を受講する方法もある

調理師免許は、料理の専門知識と技術を証明する大切な資格です。資格を取得することで、就職やキャリアアップに役立つだけでなく、食品衛生や栄養学などの知識を深めることができます。試験に向けては、すべての科目をバランスよく学ぶことが重要です。
目次
調理師免許とは?
調理師免許とは、調理に関する基本的な技術と栄養、衛生管理に関する知識を持っていることを証明する資格です。「調理師法」にもとづく国家資格で、試験に合格すると「調理師」を名乗ることができます。また、調理師免許を持っていると飲食店の開業・運営に必須である「食品衛生責任者」の講習も免除されます。そのため、多くの職場で重宝され、調理師免許を持っていればキャリアアップに役立つことも少なくありません。
調理師免許を取得する方法
調理師免許を取得する方法としては、調理師養成施設を卒業する方法と、実務経験を積んだ後に調理師試験に合格する方法の2つです。それぞれの方法には金額や期間、サポート体制に違いがあるため、自分の状況や目指すキャリアに合わせて選択することが重要です。
調理師養成施設を卒業する
調理師養成施設を卒業することで、試験を受けなくても調理師免許を取得できます。調理師養成施設とは、調理師の育成を目的とした専門学校や調理科のある高等学校のことです。これらの施設では、プロの調理師から直接技術を学び、かつ体系的な知識教育を受けることができるため、未経験者や基礎からしっかり学びたい人にとって最適な選択肢となるでしょう。
実務経験を積んだのち調理師試験に合格する
飲食店での実務経験を積んだ後に、調理師試験に合格することで調理師免許を取得する道もあります。この場合、飲食店などで2年以上の実務経験を積む必要があります。
アルバイトやパートの経験でも、条件を満たせば実務経験として認められることがあるので、事前に確認するといいでしょう。多くの都道府県では「週4日以上かつ1日6時間以上」の勤務が基準となっていますが、茨城県や山形県など一部の地域では「週5日以上かつ1日5時間以上」でも認められているなど、条件は地域によって異なるため事前の確認が必要です。この方法は、実際の職場で経験を積んでから免許を取得したいと考える人や、学費の負担を抑えたい人に向いています。
■調理師免許を取るまでの流れ
調理師免許を取得するメリット
調理師免許を取得すると、調理のスキルを証明するだけでなく、キャリアの幅を広げるきっかけにもなるなど、さまざまなメリットがあります。ここからは、調理師免許を取得するメリットについて詳しく紹介します。
●就職に有利な場合がある
●待遇面で良くなる場合がある
●申請を行うだけで食品衛生責任者になれる
●専門調理師・調理技能士を目指せる
●免許取得の勉強によってさまざまな知識が身につく
●顧客からの信頼度が上がる
就職に有利な場合がある
調理師免許を持っていると、料理専門の職場や飲食サービスを提供する企業において、就職活動が有利に働くことがあります。病院や学校など公共性の高い施設では調理師免許を応募条件としていることが多く、調理師免許を持っていれば応募先の選択肢が広がるでしょう。
関連情報:【大量調理も大変だよね~】第1話 私が病院の調理師になったわけ
待遇面で良くなる場合がある
職場によっては、調理師免許を持っていることで資格手当が支給されることもあります。基本給がアップするだけでなく、スキルに見合った待遇を受けられる可能性も高まるでしょう。資格手当の有無や金額は各企業で異なるため、就職先の条件を確認することが重要です。
申請を行うだけで食品衛生責任者になれる
調理師免許を持っていれば、追加の講習を受けることなく「食品衛生責任者」として業務を行うことができます。通常、食品衛生責任者になるには、食品衛生責任者養成講習会を受講しなければなりませんが、調理師免許があればその必要がありません。
専門調理師・調理技能士を目指せる
調理師免許を取得すれば、厚生労働大臣から認められる「専門調理師・調理技能士」といった、さらに専門性の高い上位資格を目指すことが可能です。専門調理師・調理技能士には、調理師学校の教員資格も与えられます。より責任あるポジションや専門性を活かした仕事に就くことができ、キャリアアップを図る上で大きなステップとなります。
免許取得の勉強によってさまざまな知識が身につく
調理師試験の勉強を通じて、公衆衛生学や栄養学、食品衛生学、そして調理理論など幅広い知識を身につけることもできます。この知識は試験合格後も、日常業務やキャリア全般において役立つスキルとなるでしょう。
顧客からの信頼度が上がる
自分で飲食店を開業する場合やフリーランスの料理人として活動するときは、調理師免許を持っていることで顧客からの信頼を得やすくなります。調理師免許は技術と知識の証明であり、顧客に安心感を与え、集客にもつながるでしょう。
関連情報:調理師の仕事を徹底解説!仕事内容や調理師になるための方法を紹介
調理師試験の概要
調理師試験を受験するには、まず概要を把握することが大切です。調理師試験は都道府県が実施しており、受験資格や試験内容が定められています。
受験資格
受験資格としては、中学卒業程度の学歴、および飲食店などで2年以上の実務経験を積むことが条件となります。また、実務経験としてみなされる職歴や期間には細かな規定があります。
●飲食店営業(旅館や簡易宿泊所を含む)
●魚介類販売業
●惣菜製造業・複合型惣菜製造業
●学校や病院などの給食施設
パートやアルバイトとしても、週4日以上かつ1日6時間以上の勤務であれば実務経験として認められます。ただし、詳細な条件は都道府県によって異なるため自身の受験地で確認が必要です。
受験資格として認められない職歴
調理業務に携わっていても、以下のケースのように受験資格として認められない職歴もあります。受験を考えている方は、職歴の証明ができるように勤務証明書の取得を忘れずに準備しておきましょう。
●調理補助、接客、配達など調理業務に直接関わらない業務
●喫茶店営業での勤務
●食品衛生法による営業許可を受けていない施設での勤務
●短期間のアルバイト・パートで勤務日数や時間が条件を満たさない場合
実施時期
調理師試験の実施時期は都道府県によって異なりますが、多くの地域では年に1回実施されています。調理師試験は住民票のある住所地以外でも受けられ、同じ年に複数回の受験も可能です。
例として2025年度の主な都道府県の試験日を見てみましょう。
■調理師試験の実施例
都道府県 | 2025年度の試験日 |
---|---|
東京都 | 10月25日 |
大阪府 | 7月13日 |
神奈川県 | 7月13日 |
愛知県 | 10月25日 |
福岡県 | 10月25日 |
これまで神奈川県では年に2回実施されていましたが、2025年度以降から年に1回の実施に変更となりました。実施日程はその年によって変わるため、最新の日程は各都道府県の公示を確認してください。
受験手数料
受験手数料は都道府県によって異なり、約6,000~6,500円前後です。金額は変更になる場合があるため、最新の受験手数料は都道府県の公示を確認してください。例として、2025年度の主な都道府県の受験料を見てみましょう。
■受験料の例
都道府県 | 2025年度の受験手数料 |
---|---|
東京都 | 6,400円 |
大阪府 | 6,100円 |
神奈川県 | 6,130円 |
愛知県 | 6,400円 |
福岡県 | 6,100円 |
試験内容
試験は「公衆衛生学」「食品学」「栄養学」「食品衛生学」「調理理論」「食文化概論」の6科目です。試験時間は120分間で、主に4つの選択肢から1つの正解を選ぶマークシート方式が採用されており、マークシート方式に慣れておくことが合格へのポイントの1つとなります。
合格ラインと合格率
調理師試験の合格ラインは60%以上の得点が必要とされています。また、過去5年のデータを見ると全国平均の合格率はおおむね60%から70%の範囲で推移しています。最新の合格率については、厚生労働省の「調理師試験実施状況」からチェックしてみてください。
■調理師試験合格率(全国平均)
出典:厚生労働省「調理師試験実施状況」
調理師試験合格のポイント
調理師試験では、6つの科目のうち1科目でも得点が当該科目の平均点を著しく下回った場合は不合格となってしまいます。そのため、調理師試験に合格するためにはしっかりとした準備と戦略が必要です。以下のポイントを押さえて効率的に学習を進めましょう。
すべての科目を均等に学習する
調理師試験は「公衆衛生学」「食品学」「栄養学」「食品衛生学」「調理理論」「食文化概論」の6つの科目から構成されています。1科目でも当該科目の平均点を著しく下回ると不合格となる可能性があるため、すべての科目をバランスよく学習することが大切です。基本をしっかり押さえつつ、過去問を利用して出題傾向を把握しておきましょう。
通信講座の受講もひとつの手
忙しくてまとまった勉強の時間を確保しにくい人は、市販の問題集だけでなく通信講座を活用するのも1つの方法です。通信講座では、プロの講師が作ったカリキュラムに沿って学習ができるので、効率よく試験対策が進められます。
また、自分のペースで学べるため、仕事や家庭の事情で時間に制約がある人に向いています。必要な知識を効率よく身につけたい人や、独学に不安がある人は通信講座の利用がおすすめです。
調理の世界は、学び続ける姿勢が成功のカギとなります。調理師の資格取得はゴールではなくスタートです。常に探求心を持ち、一皿一皿に心を込めて提供することが、真のプロフェッショナルへの第一歩です。資格の取得、ぜひ頑張ってください!
概要を把握して、一発合格を目指そう
調理師免許や試験の概要をしっかりと理解し、効率よく合格に向けた準備を進めましょう。試験で出題される6科目をバランスよく学習し、苦手を作らないようにすれば、一発合格は難しいことではありません。
調理師免許を取得した後には、「栄養士のお仕事」に登録して仕事を探してみてください。資格を有効に活用してキャリアアップを目指しましょう。

よくある質問
調理師免許とは?
調理師免許とは、調理師法に基づく国家資格であり、調理・衛生・栄養面に関する専門的な能力を証明する免許です。これを取得することで正式に「調理師」を名乗ることができ、飲食業界での信頼性が高まります。
調理師免許を取得する方法は?
調理師免許を取得するには、調理師養成施設を卒業する方法と、2年以上の実務経験を積んで調理師試験に合格する方法があります。どちらの方法も、自身の状況やキャリアプランに合わせて選択することが大切です。
調理師試験の概要は?
調理師試験は、各都道府県が年1回実施する国家試験で、筆記試験(マークシート方式)により行われます。調理師試験を受験するには、中学校卒業程度以上の学歴と、2年以上の調理業務経験が必要で、卒業証明書や調理業務従事証明書、受験願書、写真などの書類を提出しなければなりません。
試験時間は2時間で、「公衆衛生学」「食品学」「栄養学」「食品衛生学」「調理理論」「食文化概論」の6科目60問が出題されます。幅広い分野から出題されるため、バランスよく学習することが重要です。
受験料や日程は、都道府県ごとに異なります。最新の試験日程や申請情報は、各都道府県の試験実施スケジュールから確認しましょう。
栄養士の就職・転職なら「栄養士のお仕事」におまかせ!
栄養士/管理栄養士の転職をサポートする『栄養士のお仕事』にはさまざまな求人情報を掲載しています。
あなたにピッタリの求人や好条件の非公開求人などもあるので、気になる方は下の画像をクリック!