栄養士・管理栄養士の資格を取得し、いよいよ就業……という前に、今一度チェックしておきたいのが「栄養士会」の情報です。
栄養士会とは、栄養士・管理栄養士の資格をもつ人たちが入会できる公益社団法人。
といっても、意外とその活動やメリットなどはきちんと認識していない人もいるはず。
そこで、
「どのような活動を行っているのか?」
「どんな目的の元に運営されているのか?」
「入会することでどんなメリットがあるのか?」
など、「栄養士会」の気になることを全解説しました。
目次
国民の「健康な毎日」を守ることが栄養士会の存在意義
そもそも栄養士会とは、栄養や「食の営み」によって国民が「健康な毎日」を送ること、自己実現が達成されること、「健康でよりよく生きる」ことを支援する公益社団法人。
栄養士会には、「日本栄養士会」と「都道府県栄養士会」の2つがあります。
「日本栄養士会」は国民を支援し、「都道府県栄養士会」は都道府県民を支援する目的があります。
それぞれ、どのような仕組みのもとに運営されているのでしょうか。
第一に、日本栄養士会と都道府県栄養士会は互いに連携しながら、日本栄養士会会員と都道府県栄養士会会員に対し、研修・情報提供・育成を行います。
そして研修などによって教育を受けた日本栄養士会会員は国民に対し、都道府県栄養士会会員は都道府県民に対し、栄養を通じた支援を行うのです。
栄養士会では、国民の健康を守るために、このような3段階式の支援が組まれています。
「日本栄養士会」の概要!運営目的は栄養士・管理栄養士の資質向上
栄養士・管理栄養士には、「栄養の指導」を通じて国民の健康維持・向上をはかる役割があります。
健康な体づくりはもちろん、生活習慣病や重病化の予防にも関わる重要な存在です。
日本栄養士会では、そんな役割をもつ栄養士・管理栄養士の資質向上や生涯教育を行うことで、栄養士・管理栄養士のスキルアップやステップアップを支援しています。
また、健康な食生活を支援する制度整備にも取り組んでいます。
「健康日本21(第二次)」に基づく活動や食育など、国民の食環境整備に取り組むことで、国民の健康と福祉を増進させることも日本栄養士会の目的です。
栄養士法や診療報酬、介護報酬の改定に対する要望を提出したり、業務規範を策定したりなど、栄養士・管理栄養士の地位や身分の向上を目指す活動も行います。
また、活動は国内に留まらず、栄養に関する知識や技能を通じて発展途上国への支援も行うなど、国際的な活動と活躍を支援するのも日本栄養士会の特徴です。
日本栄養士会が掲げる5つの事業内容
以下は、日本栄養士会が行う5つの事業です。
①「食と栄養の科学に関する調査・研究・技術開発事業」
栄養士・管理栄養士の業務上の専門分野の技能向上を目的とした調査・研究を行います。
専門分野ごとの人材育成や業務規範の作成も実施。
文献探索システムといった技術開発も担っています。
②「食・栄養改善人材育成事業」
栄養士・管理栄養士が養成施設を卒業した後も継続して技能を保てるような研修制度を設けています。
技術や学術向上を目指した制度を運営し、「生涯教育研修事業」や「食育別研修事業」を展開している事業です。
栄養士・管理栄養士に関連する資格である「公認スポーツ栄養士」や「在宅訪問管理栄養士」の認定も行っています。
公認スポーツ栄養士、在宅訪問管理栄養士について詳しく知りたい人はこちらの記事もどうぞ。
③「食生活自律支援事業」
情報発信やコミュニケーションの促進を目指し、情報誌やしおりを発行したり「健康づくり提唱のつどい」を開催したりしています。
栄養ケア・ステーション事業を運営したり、災害支援を行うチームを育成したりすることも事業内容のひとつです。
栄養ケア・ステーションについては後で詳しく解説します。
④「食環境整備事業」
国民の食環境の整備促進のため、日本栄養士会と国民とが連携・協働できるような制度を作る事業です。
具体的には、「プライマリ・ヘルス・ケア」に基づいたネットワークを形成したり、栄養士・管理栄養士の業務過誤に関する損害賠償責任保険の管理を行ったりしています。
⑤「国際公衆衛生向上事業」
ベトナムやカンボジアなどの発展途上国に対し、公衆衛生や公衆栄養を通じた支援を行う事業です。
その他、国際栄養士連盟・アジア栄養士連盟加盟国として国際交流などの活動を行ったり、海外留学を支援したりしています。
日本栄養士会の注力事業とは?
日本栄養士会の主な事業内容を先述しましたが、日本栄養士会ではそこからさらに注力している事業・政策を5つに絞っています。
①「人材育成」
栄養士・管理栄養士一人ひとりの各ライフステージにおいて、国民が健康維持・増進できる社会になるため、日本栄養士会は国民の疾病予防や治療支援を行う栄養士・管理栄養士の資質向上を目指しています。
保健・医療・福祉・教育などの分野で必要な技能を習得する「基幹教育」と、専門性の向上を目的とした「拡充教育」を行う生涯教育制度を敷いているのです。
基幹教育と拡充教育を受ければ、栄養士・管理栄養士は生涯教育制度で認定されている各分野の認定栄養士・認定管理栄養士を名乗れるようになります。
スキルアップ・、キャリアアップにつながる点がこの生涯教育制度のメリットです。
②「管理栄養士・栄養士の役割拡大」
全国の栄養士・管理栄養士からの意見や要望を集め、国や各自治体、国民、企業、他職種に要望書を提出する取り組みです。
例えば、2015年8月には行政栄養士の配置率100%を目指す要望活動を進めることが発表されています。
同じく2015年6月には、管理栄養士が病棟において担う役割の認知拡大や栄養食事指導の評価を充実させることへの意見が集まりました。
診療報酬改定に関連する上記の要件をまとめた要望書は、日本栄養士会から厚生労働省に提出された経緯があります。
③「栄養ケア・ステーション」
栄養ケア・ステーションとは、地域住民の食生活を支援する拠点地のこと。
運営元の多くは都道府県栄養士会や医療法人、民間企業です。
栄養ケア・ステーションでは、地域住民の食の課題を解決するようなサービスが提供されています。
日々の栄養相談や特定保健指導、セミナー、研修会、調理教室などを通じ、地域住民への安定的な栄養支援と指導を行っています。
栄養ケア・ステーション開設認定に必要な要件や必要書類、申請マニュアルなどの詳細情報は、日本栄養士会のWebサイトから確認できます。
④「栄養ケア寄り添い型ソリューション事業」
在宅療養者への食事提供や栄養支援を行う人材の確保を目的に、全国規模で整備が進められている事業です。
人材確保と並行して、在宅療養を必要とする人のもとへ継続的に人材を派遣できる土壌づくりも推進されており、関係機関・職種との連携強化も目標となっています。
ところで、要介護者や高齢者が地元地域で生涯暮らせるように、住まいや医療、介護、介護予防、生活支援を一体的に提供する支援体制を「地域包括ケアシステム」といいます。
この地域包括ケアシステムに栄養士・管理栄養士が参画することも、日本栄養士会の重要な政策です。
地域包括ケアシステムに栄養士・/管理栄養士が協力することで、安定的なサービスの提供ができるように取り組みを進めています。
⑤災害支援
東日本大震災をきっかけに作られた注力事業です。
被災地での栄養・食生活支援活動のため、日本栄養士会では「日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)」というチームが設立されました。
国や被災地と連携した形で、国や被災地の都道府県、あるいは日本栄養士会から出動要請を受けた場合に出動します。
自ら出動することも可能です。
被災地では、情報収集や栄養補給といった人的支援と物的支援を行い、栄養・食生活の観点から被災地を支えます。
入会にかかる各種費用は4つ!日本栄養士会会費のみ一律
日本栄養士会に入会するには、日本栄養士会のWebサイトから手続き可能です。
その際に自分の居住地や勤務地がある都道府県の栄養士会を選択すると、入会費用が確認できます。
つまり、都道府県栄養士会に入会すれば、自動的に日本栄養士会にも入会できるという仕組みになっているのです。
入会費用の内訳は、
・初年度会費
・初年度入会金
・日本栄養士会会費
・各都道府県の会費
以上の4つで構成されています。
このうち、日本栄養士会会費のみ一律で6,500円です。
初年度会費・初年度入会金・各都道府県の会費は都道府県によって異なります。
各種費用のおおまかな目安は以下を参考にしてください。
・初年度会費:1万5千円~2万円前後
・初年度入会金:千円~3千円前後
・各都道府県の会:5千円~1万円前後
・総合費用:1万千円~3万3千円
「都道府県栄養士会」の運営目的は地域住民の健康増進
次に解説するのは、都道府県単位で設置されている「都道府県栄養士会」です。
都道府県栄養士会は、各都道府県民と地域住民の健康維持や増進に関する事業を行う公益社団法人です。
地域住民の疾病や重病化の予防、都道府県内の栄養士/管理栄養士の資質向上にも取り組んでおり、日本栄養士会と連携・協働する形で活動しています。
例えば、栄養ケア・ステーション事業や災害支援事業などは、日本栄養士会と都道府県栄養士会が役割を分担したうえで運営されています。
入会費用に関する説明でも言及したように、日本栄養士会への入会=都道府県栄養士会への入会です。
そのため、日本栄養士総会に出席する代議員は各都道府県栄養士会で選出された栄養士・管理栄養士であり、まさに日本栄養士会と都道府県栄養士会が一体となる運営体制が敷かれています。
全国各地の都道府県栄養士会一覧
以下に、全国の都道府県栄養士会の一覧を地域別にまとめました。
北海道・東北地方
北海道栄養士会 |
青森県栄養士会 |
岩手県栄養士会 |
宮城県栄養士会 |
秋田県栄養士会 |
山形県栄養士会 |
福島県栄養士会 |
関東地方
茨城県栄養士会 |
栃木県栄養士会 |
群馬県栄養士会 |
埼玉県栄養士会 |
千葉県栄養士会 |
東京都栄養士会 |
神奈川県栄養士会 |
北陸地方
富山県栄養士会 |
石川県栄養士会 |
群馬県栄養士会 |
福井県栄養士会 |
甲信越地方
新潟県栄養士会 |
山梨県栄養士会 |
長野県栄養士会 |
東海地方
静岡県栄養士会 |
愛知県栄養士会 |
岐阜県栄養士会 |
三重県栄養士会 |
近畿地方
大阪府栄養士会 |
兵庫県栄養士会 |
滋賀県栄養士会 |
京都府栄養士会 |
奈良県栄養士会 |
和歌山県栄養士会 |
中国地方
岡山県栄養士会 |
広島県栄養士会 |
鳥取県栄養士会 |
島根県栄養士会 |
山口県栄養士会 |
四国地方
徳島県栄養士会 |
愛媛県栄養士会 |
高知県栄養士会 |
香川県栄養士会 |
九州・沖縄地方
福岡県栄養士会 |
佐賀県栄養士会 |
長崎県栄養士会 |
熊本県栄養士会 |
大分県栄養士会 |
宮崎県栄養士会 |
鹿児島県栄養士会 |
沖縄県栄養士会 |
栄養士会に入会するとトクする?5つのメリット!
日本栄養士会によれば、栄養士会の会員になると以下の5つのメリットがあるとされています。
①キャリアアップを目指せる
人材育成を目的とした生涯教育制度を行う栄養士会に入会すれば、キャリアアップにつながる各種研修会や講習会に参加できます。
参加費用に関しては、会員割引価格を適用できる点もメリットです。
最新の業界の動向を知ることで、自分が働く施設で起こっている問題を解決するヒントが得られたり、新たな課題発見ができたり、職場環境を改善するアイディアが学べる機会にもなるでしょう。
また、年に一度開催される「全国栄養士大会」の参加費も割引されます。
全国栄養士大会は、二日間にわたりさまざまな栄養に関する講演会やランチョンセミナーなどが開催され、スキルアップや今後のキャリアなどを考えるきっかけにもなります。
参加費の割引は、事前予約で2万円→1万円となるのでなんと半額!
毎年参加する予定であればそれだけでも大きなメリットとなります。
参加費は平成30年度の全国栄養士大会のものです。
②会報誌から最新の情報を受け取れる
会報誌「日本栄養士会雑誌」を毎月購読できます。
最新の業界ニュースや新制度、実践資料、研修会の情報などが確認でき、他の分野や職場で働く栄養士・管理栄養士の活動内容も知ることができます。
自己研さんや勉強に役立つでしょう。
③コミュニティが作れる
栄養士・管理栄養士の仲間を作りたい人や交流の機会が欲しい人は、栄養士会の研修会などを通じて知り合いを作ることも可能です。
同じ地域で働く同業者とも顔見知りになっておけば、いざというときに助け合えるかもしれません。
横のつながりを作っておくことで、仲間が働く現場の最新情報を聞くこともできます。
悩み相談をし合ったり、助言を聞いたり、仲間との交流でモチベーションアップにつなげたりなど、栄養士・管理栄養士同士の交流にはメリットがたくさんあります。
また、会員同士の情報交換から求人先を紹介してもらうケースもあるようです。
④栄養士賠償責任保険に加入できる
保健、福祉、医療関連の分野で働く栄養士・管理栄養士は、責任も重くなりがち。
予想外の事故、万が一の事故が生じたときに頼れる保険として、「栄養士賠償責任保険」に加入できます。
保証額はひとつの事故につき1億円までで、希望する人には3億円まで保証されます。
⑤就職・転職支援を受けられる
都道府県栄栄養士会の各Webサイトでは、企業や団体の求人情報が紹介されていることがあります。
日本栄養士会の会員になれば、各都道府県栄養士会に直接問い合わせて求人照会を行うことも可能です。
まとめ
栄養士会を構成する日本栄養士会と都道府県栄養士会の特徴を見てきました。
栄養士・管理栄養士は、一度資格を取ったら終わりではありません。
働き始めてからも学ぶ姿勢が重要となる職業です。
入会のメリットにもあったように、栄養士会が開催する研修会や講習会、情報誌の存在は、働く栄養士・管理栄養士の心強い味方となってくれそうです。
入会に興味を持った人は、まずは自分の住んでいる都道府県栄養士の栄養士会Webサイトをチェックしてみてください。
参考文献・サイト
栄養士の就職・転職なら「栄養士のお仕事」におまかせ!
栄養士/管理栄養士の転職をサポートする『栄養士のお仕事』にはさまざまな求人情報を掲載しています。
あなたにピッタリの求人や好条件の非公開求人などもあるので、気になる方は下の画像をクリック!