食にまつわる仕事をしている人たちにとっては、食品を安心・安全に提供することは大きな責任です。
食の安全を担保するために、さまざまな施設や業態では「検食」が行われています。
この記事では検食・検食簿とはなにか?
具体的な実施方法は?
どのような法律によって義務づけられているのか、などをまとめて解説します。
目次
検食には2種類ある!それぞれの違いとは?
検食には2種類あり、その意味合いや実施内容もまったく異なります。
学校給食法で定められたもの
ひとつめは、「学校給食法」の定める「学校給食衛生管理基準」に基づき、給食責任者が行うもの。
異物混入や異臭の確認、加熱処理の適切性のチェックといった食品衛生点検を実施し、「検食簿」に記録をつけることで食の安全を守ります。
検査用保存食としての検食
ふたつめは、検査用保存食としての役割をもつ検食。
食中毒やその発生の恐れがあったり、異物混入、異臭や腐敗、カビの発生など食品に異常が発生したりしたときには原因究明の検査を行いますが、その際に必要なのが検査用保存食です。
つまりふたつめの検食には、非常事態に対応するための検査用保存食と、事態の原因究明から再発防止までの過程全体を指す意味合いがあるのです。
学校給食現場における検食ってどんなもの?
まずは、学校給食法による検食のくわしい内容や具体的な実施方法を紹介していきます。
そもそもなんで検食は大事なの?
文部科学省は、学校給食を提供する都道府県教育委員会や市区町村教育委員会、そして学校設置者に対し、学校給食法の遵守を義務づけています。
学校給食法には衛生管理に焦点が置かれた学校給食衛生管理基準があり、検食はこの基準に則って行われるもの。
学校給食衛生管理基準は学校設置者だけではなく、「単独調理場、共同調理場(調理等の委託を行う場合を含む)、共同調理場の受配校」など、子どもたちの食の安全に関わるすべての機関や事業所に適用されています。
子どもたちが普段なにげなく口にする給食には、多くの重要な機関や事業所が関わっており、彼らには子どもたち一人ひとりの健康や発育を守る責任があります。
だからこそ、子どもたちが安心して給食を食べられるためにも検食は重要視されており、不可欠なのです。
学校給食現場における検食の実施方法
文部科学省は、検食の具体的な実施方法も定めています。
検食の実施前に必要なのは、各調理場における責任者の決定です。
検食内容として規定されたチェックリストは以下のとおりです。
・異物混入の確認
・加熱、冷却処理の適切な実施
・異味、異臭など異常の確認
・一食分の量の適切性
・味付け、香り、色彩、形態の確認
・児童生徒の嗜好に関する配慮の確認
また、検食は食事開始より30分前までに終わらせるのが規定です。
もし食品に異常が発見されたら給食を中止し、共同調理場の受配校で異常が起きた場合は、共同調理場に速やかに連絡する必要があります。
検食後、責任者は必ず検食を実施した時間、検食者の意見と結果を検食簿に記録することも規定で定められています。
学校以外の現場でも検食は実施されている?
検食は保険医療機関や介護施設でも実施されます。
ただし、病院や介護施設における検食とは、ふたつめの「検査用保存食」を指すことが一般的。
配膳前の衛生点検という役割をもつ検食ですが、学校で実施される場合は手順や方法も決まっているのに対し、病院や介護施設での検食は施設によって異なるようです。
たとえば、ある病院における検食を見てみると、責任者を調理担当者、栄養部門担当者(栄養士・管理栄養士など)、医師、そして任意の役職者に置き、検食簿の確認や結果のフィードバックは栄養部門担当者に一任しているようです。
また、チェックリストが設けていたり、検食簿の記録もマニュアル化されたりしていることもあります。
検査用保存食としての検食は適用対象が幅広い
検査用保存食としての検食は、実施の適用対象が幅広いのが特徴です。
給食施設での実施はもちろん、製造業や飲食店営業、弁当業、仕出し屋、旅館など、食に関わるさまざまな業態や施設でも義務づけられています。
検査用保存食としての検食が必要とされている理由
検査用保存食を管理し、保存しておくことの重要性は、食中毒などの発生時の原因究明にあります。
食中毒などなんらかの異常が発生した際は食品の検査が行われ、その後再発防止の改善策が立案されます。そのために検査用保存食が必要となるのです。
また、検査用保存食としての意味合いをもった検食は「食品衛生法」と「大量調理施設衛生管理マニュアル」という法律によって定められています。
食品衛生法によれば、検査用保存食は弁当屋、仕出し屋、給食施設においては72時間以上の冷蔵保存が定められています。
1回50食以上の仕出しや調製を行う事業所も同様です。
また、弁当屋や仕出し屋は配送先と配送時刻、配送量の記録と保存も必要です。
検査用保存食としての検食の実施方法
検査用保存食としての役割をもつ検食の実施方法は、厚生労働省が示している「大量調理施設衛生管理マニュアル」に記載されています。
大量調理施設衛生管理マニュアルによる規定はふたつです。
・検食の対象とする食品は、食品ごとに50g程度ずつ、清潔な容器に入れて密封し、-20℃以下に設定した専用冷凍庫で2週間以上保存すること(潜伏期間が2日~11日までの病院物質もあるため)。
・使用した原材料の洗浄・殺菌は行わず、購入時の状態のままにする。また、調理済みの食品は配膳後の状態で保存すること。
注意点として、採取モレがないことや二次汚染の予防対策が必要です。
検査用保存食の品目、採取の日付、廃棄の日付を記録しておくことも忘れないようにしましょう。
◆参考:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」の改正について」
なお、検食で使われる容器はビニール袋やキットなど、検食専用品があります。インターネットで購入することもできます。
もし事故が発生したら?事前の備えと対応策
食中毒など食に関する事故が発生したり、苦情があったりした場合は、健康被害の防止のためにいちはやく原因究明に努めるようにします。
検食はそのために存在するものですが、検食以外の領域でも事前の備えをしておくことや、対応策を講じておくことも大切です。
たとえば、千葉県では「事故発生時の対応」として以下のマニュアルを定めています。
① 事故発生時の責任者を決めておく。
② 食中毒事故発生時の対応方法、苦情処理手順及び製品の回収方法を定める。
※原因の究明、情報伝達、製品の回収、改善策、再発防止、保健所への報告・協力、被害者への説明の方法等について、いつ・誰が・何をどうするのかといったように、具体的に定める。
③ 処理経過について記録する旨を定める。
◆引用元:千葉県「12検食又は保存用検体の保存」
事故が発生した際には、解決に向けた行動や施策をすばやく実行することが不可欠。
検食以外の部分でも、事態の収束を早めるためのマニュアルはあらかじめ決めておく方が得策でしょう。
まとめ
検食とはなにか? その役割や裏づけとなる法律、そして実施方法を見てきました。
学校給食を代表するように、給食の現場における衛生点検が中心となる検食もあれば、検査のための検食もあります。
学校かそれ以外の施設かなど、どんなところに就職するかによって、栄養士・管理栄養士が検食時にするべきことは異なります。
どのような施設や業界で働くにせよ、検食は食に関わる現場であれば実施の義務が発生するものとして覚えておくとよいでしょう。
参考文献・サイト
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