現在、日本人の6人に1人が糖尿病もしくは糖尿病予備軍であるといわれています。
厚生労働省の2016年国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる国内の成人と糖尿病の可能性が否定できない予備軍の推計ともに1000万人だったことがわかりました。
糖尿病が強く疑われる成人の推計は、調査をはじめた1997年の690万人から増え続けており、今回初めて1000万人に達しました。
尿の量が多くなったり、のどが渇いたりするなどの症状がある糖尿病ですが、自覚症状がある人は少ないです。
そのため知らず知らずのうちに病気が進行し、失明したり命に関わる症状を引き起こしたりするような合併症になることから、別名サイレントキラーと呼ばれています。
これらの合併症を未然に防ぐためには、体重や血圧、血糖値のコントロールが重要です。
しかし患者さんによっては血糖値のコントロールが上手くいかなくて悩んだり、そもそも合併症の危険性を把握していなかったりする人などがいます。
そのような患者さんのサポートをするのが「糖尿病療養指導士」です。
管理栄養士のステップアップとして、気になっている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、糖尿病療養指導士の定義や資格の種類、試験や取得のメリットなどをご紹介します。
●病院で働きながら実際に「糖尿病療養指導士」の資格を取得したライターのみりんさんの記事も要チェックです!(↓)
目次
糖尿病療養指導士について
糖尿病療養指導士(CDE)とは、糖尿病とその療養指導全般に関する高度な専門知識を持って、糖尿病患者の生活を理解し、適切な自己管理や療養を指導する医療スタッフのことです。
CDEとは〝Certified Diabetes Educator〟の訳で、直訳すると〝認定糖尿病教育者〟といった意味となります。
アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでは1970年代のはじめ専門的な糖尿病療養指導と認定について検討された結果、1986年にCDEの資格制度が設けられました。
医療は日々進歩し、資格の認定後も最新の知識や技能を身につける必要があるため、CDEの認定制度は5年毎の更新制です。
糖尿病療養指導士の意義、必要な理由
冒頭で記載したとおり、糖尿病はおそろしい合併症を引き起こすおそれのある病で、その患者数は増え続けています。
合併症の予防や病気の症状を抑えるためには、正しい知識と日々の治療が不可欠です。そこで活躍するのが糖尿病療養指導士です。
糖尿病に関する幅広い専門知識をもち合わせ、糖尿病の臨床における生活指導のエキスパートであるため、糖尿病療養指導士の担う役割は大きいものでしょう。
糖尿病療養指導士資格の種類(LCDEとCDEJ)
糖尿病療養指導士(CDE)には、2つの認定制度があります。ひとつは「Japan」のJが付いたCDEJ(日本糖尿病療養指導士)。
もうひとつは「Local」のLが付いたLCDE(地域糖尿病療養指導士)です。
CDEJは「一般社団法人 日本糖尿病療養指導士認定機構」が認定を行っています。CDEJは全国で研修を行い同じ試験で認定をするため、認定者のレベルは一定化されます。
一方LCDEは、各都道府県や各地区といった地域によって独自に認定が行われているため、認定者のレベルがバラバラになりがちです。
CDEJは研修や試験などの時間や費用がかさむため、個人の負担が大きくなる傾向にありますが、LCDEは移動距離や費用が少ないです。
より地域に密着した糖尿病治療や予防の対応ができるのはLCDEといえるでしょう。
CDEJは資格認定や認定更新のために一定の基準を設けられているため、他者からも一定の評価を得られます。
これらの違いを踏まえて、自分に合ったCDEを選んでみてください。
CDEJの資格認定機構について
CDEJの資格認定を行っている「日本糖尿病療養指導士認定機構」は、以下の3つの学会が母体となって2000年に設立されました。
略称は「CDEJ認定機構」で、英文名は「Certification Board for Diabetes Educators in Japan(CBDEJ)」です。
2012年、日本糖尿病療養指導士認定機構は「任意団体」から「一般社団法人」となりました。
糖尿病療養指導士の主な職場
糖尿病療養指導士のほとんどが、病院やクリニックで働いています。
特に、糖尿病専門のクリニックや糖尿病外来のある職場で活躍されています。
他には薬局や給食会社、特別養護老人ホームなどの介護施設や保健センターなど、さまざまな職場で勤務されています。
糖尿病療養指導士の仕事内容
病院やクリニックでは、糖尿病の知識を活かして主に栄養指導や糖尿病教室(糖尿病患者や、糖尿病に関心のある方を対象とした糖尿病を学習する場)などの業務を行います。
他には学会で発表したり、地域や病院で糖尿病患者向けの会があれば参加したりする場合があります。
糖尿病療養指導士の給料
糖尿病専門のクリニックや糖尿病科のある病院などの求人情報には「糖尿病療養指導士の有資格者は優遇します」と明記しているところがあります。
一般的な管理栄養士の給料よりも高い給与での採用が可能になったり、資格手当として月給にプラスされる職場もあったりします。
働く職場によりますが、資格を取得することで給与面でのメリットが期待できるでしょう。
CDEJの認定までの流れと受験資格
先述したとおり、糖尿病療養指導士には「CDEJ」と「LCDE」という2つの認定制度があります。
それぞれの地域で認定を行うLCDEの場合、認定までの流れや受験資格も地域によって異なります。LCDEの受験資格についてご確認されたい方は、ご希望の地域の認定先にお問い合わせください。
ここでは、「CDEJ」の認定までの流れと受験資格をご紹介します。
認定までの流れ
下記の流れに沿って、資格取得を目指しましょう。
受験者用講習会のお申し込みが必須となっていますので、まずは講習会を申し込みましょう。
受験資格
下記の4つの要件を満たすことで、認定試験を受験することができます。
- 看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士のいずれかの資格を有すること
- 定められた医療施設において、過去10年以内に継続2年以上(通算1,000時間以上)の糖尿病療養指導を行ったこと
- 「2」の期間に自分が携わった糖尿病療養指導の自験例が10例以上あること
- 日本糖尿病療養指導士認定機構が開催する講習会を受講し、受講修了証を取得していること
(定められた医療施設とは、糖尿病患者の「外来診療」「教育、食事指導」が行われ、「日本糖尿病学会専門医もしくは常勤の日本糖尿病学会の会員医師が、糖尿病療養指導にあたり受験者を指導している」施設のことです。)
受験資格の詳細情報を確認したい方は、日本糖尿病療養指導士認定機構のホームページをご覧ください。
注意点
受験資格要件認定には基準日(例年12月5日)があります。うっかり過ぎてしまわないように、基準日までに受験資格である上記の4項目を満たしましょう。
受験資格は変更になる場合があります。変更された場合は、 日本糖尿病療養指導士認定機構のホームページでお知らせされますので、こまめにチェックしましょう。
受験者用講習会について
資格取得のために必要な、受験者用講習会についてご紹介します。
受験者用講習会は、平成29年度までは日本各地をブロック毎で分け、各会場にて開催されていましたが、平成30年度からは「eラーニング」のみでの開催となりました。
会場での開催は廃止されましたのでご注意ください。
eラーニング講習会について
「eラーニング」とは、おもにインターネットを利用して行う学習のことです。
日本糖尿病療養指導士認定機構のeラーニング講習会では、パソコンを使って、あらかじめ収録された講義を好きな時間に受講できます。
すべての講義の受講後に表示されるアンケートを、受講期間終了日までに回答することで「受講終了」となります。タブレット端末や携帯電話では受講できないため、ご注意ください。
※事前に、ご自分のパソコン環境で視聴可能かどうかや操作の流れ等を確認することができます。eラーニング講習会の申し込みをする前に、「日本糖尿病療養指導士認定機構」のホームページ上にある「受験者用eラーニング型講習会:デモ画面にログイン」のバナーをクリックしてご確認ください。
申し込み方法
日本糖尿病療養指導士認定機構のホームページ上から申し込みます。
まず、ホームページから「開催要項」をダウンロードし、WEB受付サイトにて仮登録をします。
その後、受講料の支払いを終えると正式登録され、メールで「eラーニング」のIDとパスワードが届きます。
受験料
30,000円
日程
平成29年度の日程は、10月2日(月)~11月25(土)でした。
資格認定試験について
日本糖尿病療養指導士の認定試験の詳細について、ご紹介します。
試験の内容、形式
試験の内容は、「筆記試験」と「糖尿病療養指導自験例の記録」があります。
この2つの評価が合格水準に達すると合格できます。
筆記試験はマークシート方式で、問題数は150問あります。糖尿病療養指導自験例の記録は、受験申請時に10症例提出し、評価マニュアルに則って評価されます。
試験開催日時、開催時間、料金
(平成29年度…10時~12時、13時30分~15時30分)
(平成29年度…札幌・仙台・東京・名古屋・京都・岡山・福岡)
受験申込方法
受験者用講習会を受講し、受験申請書類を用意します。受験料を支払い受験申請書類を提出後、受験資格審査が行われ、「受験資格あり」と判断された方には受験票が送られます。
CDEJ資格取得の難易度
先述したとおり、「LCDE」は各地域によって認定が行われるため、資格取得の難易度も各地域で異なります。ここでは「CDEJ」の資格取得の難易度についてご紹介します。
有資格者数
1万9399人(平成29年6月7日時点)
※内訳…看護師・准看護師8978人、管理栄養士・栄養士4711人、薬剤師2969人、臨床検査技師1571人、理学療法士1170人(2004年度までは准看護師や栄養士も対象)
資格更新者数
2380人(平成28年度)
※内訳…看護師・准看護師1115人、管理栄養士・栄養士578人、薬剤師364人、臨床検査技師224人、理学療法士99人(2004年度までは准看護師や栄養士も対象)
受験者数、合格者数、合格率(全職種と管理栄養士)
平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
全職種 | 受験者数 | 2260 | 2152 | 1861 | 1939 | 1782 |
合格者数 | 1678 | 1745 | 1585 | 1626 | 1588 | |
合格率(%) | 74.2 | 81.1 | 85.2 | 83.9 | 89.1 | |
管理栄養士 | 受験者数 | 480 | 470 | 413 | 447 | 395 |
合格者数 | 381 | 416 | 378 | 407 | 373 | |
合格率(%) | 79.4 | 88.5 | 91.5 | 91.1 | 94.4 |
過去5年の合格率は、約75%~90%を推移しており、高いといえるでしょう。
これはハードルの高い受験資格をクリアした、一定の経験年数や知識のある人が受験するためだと考えられます。
合格率が高いからといって、一概に試験が容易とはいえないでしょう。
管理栄養士の受験者数は全体の約20%の割合です。
管理栄養士の合格率は、全体と比較すると高い傾向にあります。
オススメの勉強方法
日本糖尿病療養士認定機構より「糖尿病療養指導士ガイドブック」という本が出版されており、原則としてこの本に沿って出題されます。
そのため、まずはこの本の内容を把握することが大切です。
本を購入する際は、CDEJ認定機構のホームページを確認して1番新しい年度のものを購入するようにしましょう。
ガイドブックに関しては日本糖尿病療養士認定機構の 「糖尿病療養指導士ガイドブック」をご確認ください。
試験対策として、過去問題集や試験対策問題集がいくつかの出版社より販売されています。
上記のガイドブックを読み終わった後は、理解度を確認するために問題集を解くこともオススメです。
間違えた箇所をチェックして問題を反復し、分からない単語はガイドブックで調べるようにすると効果的です。
認定試験の3月上旬(予定)にあわせて、ご自身のスケジュールを確認しながら勉強の計画を立てておくと、モチベーションを上げやすいでしょう。
栄養士が糖尿病療養指導士の資格を取得するメリット・やりがい
糖尿病療養指導士の試験を受けるためには、一定の実務経験や自験例の記載などさまざまな準備が必要で、大変だと思われる方も多いかと思います。
しかし、自験例の記録によりご自身の糖尿病患者への療養指導の経験を振り返る貴重な時間になることかと思います。
講習会等で自分だけでは得られないような糖尿病についての最新知識を学べることも、メリットのひとつでしょう。
「糖尿病療養指導士」になると、専門知識を持った管理栄養士として信頼を得られ、転職活動においても今まででは考えられなかったような職場に巡り合えるかもしれません。
また同じ志を持った方との交流が増えることで、より一層、自分の業務にやりがいを感じることができるのではないでしょうか。
参考文献・サイト
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