栄養士の職種・職場

歯科医院で働く栄養士・管理栄養士のお仕事とは?

管理栄養士の就職先として「病院」は王道的な選択肢といえるかもしれませんが、近年は産婦人科など特定の診療科に就職を選ぶ管理栄養士が増えつつあるのをご存じですか?

そのひとつに、歯科医院に就職するという選択肢もあります。

「歯科医院で管理栄養士が働く」と聞くと少し意外な印象を受けるかもしれませんが、口腔ケアや低栄養状態の改善が治療で重要な役割を果たすこともあるため、実は歯科学と栄養学とは、密接な繋がりがあるのです。

とはいえ、「具体的にどのように活躍できるの?」と気になる人もいることでしょう。
今回は、管理栄養士の新しい活躍場所である歯科医院での仕事内容や働き方などを紹介していきます。

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なぜ今歯科医院で管理栄養士が求められている?

歯科医院 管理栄養士
「歯科医院で管理栄養士が働く」と聞くと少し意外な印象を受けるかもしれませんが、歯科医と管理栄養士との連携は、徐々に注目されています。

その理由として、歯科医師の診療成果の指標が変化しつつあることが挙げられます。

それまで歯科医師が成果設定していたのは咀嚼機能の改善のみでしたが、日本が世界でもトップクラスの超高齢社会にあるという背景から、高齢者などの摂食機能そのものの改善と、それに伴った栄養状態の改善も求められるようになったのです。

結果として、咀嚼機能に沿った食形態を提案したり、咀嚼機能に応じた栄養指導を行ったりすることも、今後の歯科医院に求められるサービスのひとつとなってきました。

そこで心強い協力者として歯科医院での採用ニーズが高まっているのが管理栄養士なのです。

栄養指導がメイン!歯科医院での仕事内容

歯科医院で働く管理栄養士の主な仕事内容は、栄養指導(食生活指導)口腔カウンセリングです。

問診票などをもとに、患者さんの食習慣をヒアリングしていきます。

ヒアリングの一例

・普段の食事で調理を行っている人
・味付けの濃さ
・アルコール/たばこといった嗜好品の摂取状況
・口にする機会が多い飲み物/菓子類
・健康状態
・食生活のアセスメント
・食事の回数

このような項目をもとに、患者さんの口腔の健康と全身の健康を把握し、改善を促していきます。患者さんの栄養状態に応じ、摂取するべき食材や調理法の指導を行うことも。

食生活が原因で生活習慣病が引き起こされたり、食事形態と口腔機能や状態のミスマッチによって重大な病気を発症してしまったりと、口腔の健康は全身の健康にも影響を与える可能性が高いと言われています。

従って、管理栄養士は、その知識と技術を活用して栄養状態や生活習慣のチェックと口腔機能のチェックの双方を行うことが主な業務となります。

歯科医との連携も重要な仕事

栄養指導にあたっては、歯科医との連携も欠かせません。

たとえば在宅訪問サービスを行っている病院では、依頼を受けた患者さんの家に歯科医や歯科衛生士とともに管理栄養士も訪問し、上記に挙げたような問診を行います。

問診の結果、食事形態と口腔機能や状態のミスマッチが発見された際は、歯科医から管理栄養士に栄養指導のバトンタッチが起こることもあるようです。

また、職場によっては歯科助手としての業務や受け付け業務を一部任されるところもります。

どんな人を対象にするのか

咀嚼障害摂食嚥下障害をもった患者さんなどが、栄養指導の対象者です。糖尿病や歯周病といった生活習慣病を抱える患者さんを相手にすることもあります。

ほかには、発達期にある子どもの栄養相談を行う機会もあります。

どんな人と働くのか

歯科医院で働くスタッフには歯科医のほかに歯科衛生士や歯科助手、言語聴覚士、受け付けなどの事務職員が在籍していることが多いです。

治療を行うのは歯科医師、口腔の予防メンテナンスを行うのは歯科衛生士。

そのなかで管理栄養士は、口内環境の整備を支える役割を担っています。

三者が担う役割や仕事内容は異なりますが、患者さんをサポートするにあたり、互いに連携し合うことは重要です。

ちなみに、『日本老年歯科医学会』が行ったある調査によると、調査対象となった歯科診療所(病院を除く)で働く管理栄養士の7割超が正規雇用で雇われており、歯科医院に常駐して働く管理栄養士が多くいることがわかります。

◆参考:『老年歯科医学第33巻2号』「歯科と栄養が出会うとき」菊谷 武

咀嚼機能に応じた食事の方法や栄養指導、生活習慣病予防の知識など、管理栄養士が得意とする分野の知識や技術は、歯科医院における業務に役立つことが浸透し始めているのかもしれません。

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歯科医院での給与・休み・待遇とは

歯科医院 待遇

正社員・契約社員・パート(アルバイト)など、雇用形態は選べます。

求人情報を見ていると、正社員の募集のほうが契約社員やパートと比べると多い傾向があるようです。

職場や雇用形態によって給与や待遇は異なりますが、以下を参考にしてください。

正社員

給与に関しては、18万円~30万円前後と、幅が広いようです。
給与の上限を50万円に設定している求人もありました。

昇給・賞与制度を設けている職場もありますが、貸与の回数や条件は職場によって異なります。

また、役職手当・残業手当・保育手当・皆勤手当などの各種手当てや交通費支給、社会保険完備の求人もあります。

勤務形態に関しては、シフト制の職場もあれば定時制の職場も。
土曜日も営業している職場では、平日の勤務時間とは異なるものの、土曜日出勤が定められています。

求人よっては、希望者は時間勤務もできるようです。

定休日は病院・クリニックによりますが、基本的に週休2日制のところが多く、年間休日数も120日~130日前後と、比較的多い傾向があります。

夏期休暇や年末年始休暇など、長期休暇が取得できる職場も多いです。

契約社員

契約社員の場合、給与の目安は20万円前後のようです(調べた求人は時給ではなく月給制)。

手当については、資格手当や技術手当など、能力と経験を考慮した手当を付与している職場もあります。

皆勤手当や交通費支給、残業手当、住宅手当などが設けられている職場もあるようです。

勤務時間に関しては定時制を採用している求人や土曜日の診察時間に合わせた勤務形態を展開する求人もありました。

年間休日日数も正社員と変わらず、120日前後が目安です。
有給の取得も可能だったり、長期休暇があったりと、休みに関する条件も正社員とさほど変わりません。

また、研修を受けられる機会や資格取得を支援する制度を採用している求人もあります。

パート(アルバイト)

パートに関しては、時給900円~2,000円前後が目安です。
昇給や賞与アリの職場もあります。

休日日数や長期休暇、勤務時間に関しても、正社員や契約社員と条件は同じところがほとんどです。

ただし、パートの場合は勤務時間や出勤曜日を応相談にしている求人もありました。

また、パート社員であっても資格取得支援制度や講習会費補助が受けられる職場もあるようです。

上記の情報は2019年9月時点での掲載情報より作成しており、就職・転職での条件を保障するものではありません。ご了承くださいませ。

口腔ケアの知識が患者を重病から救う!歯科医院で働くためのスキル

口腔ケア 管理栄養士

口腔環境の乱れが病気を引き起こすリスクになり得ることから、口腔ケアの知識や指導は、歯科医院の管理栄養士にとって重要なスキルとみなされているようです。

口腔環境の乱れが原因で引き起こされる重病の代表に、摂食嚥下障害や誤嚥による肺炎があります。

嚥下の機能低下を招く要因のひとつは、低栄養状態です。

そもそも低栄養とは、食事形態と口腔状態のミスマッチから食事摂取が不能になり、それが重症化した状態のこと。

そのため、摂食嚥下障害を根本的に予防するには、低栄養状態になる前に口腔ケアを行うことが重要とされているのです。

低栄養や低栄養予備軍の患者さんに対して口腔ケアを正しく指導することは、嚥下障害の予防になるだけではなく、介護予防にも繋がります。

口腔状態の劣化に拠らない嚥下障害のケアも

食事形態と口腔状態のミスマッチ以外の原因で嚥下障害を発症している患者さんには、管理栄養士による栄養指導がなおのこと重要になります。

嚥下障害により摂取カロリーや食べる意欲が下がっている患者さんに対し、管理栄養士は栄養の不足分を補い、食べる意欲を向上させるための栄養指導を行う必要があります。

患者さんの嗜好や介護者の負担軽減も視野に入れつつ、最適な調理方法を提案したり、介護者の不安をケアしたりといった仕事は、食のプロである管理栄養士だからこそできる業務でしょう。

まとめ

まとめ

管理栄養士の活躍場所というと、従来は給食の委託会社や保育園、高齢者施設などが中心的なイメージがありますが、比較的新しく登場した就職先が歯科医院です。

登場が新しいからこそ、管理栄養士が活躍できる環境や制度(診療報酬や介護報酬など)の
さらなる整備が必要、という課題もあります。

しかし、活躍場所として新しく注目されている職場で実力を発揮してみたい人や違うジャンルの知識も勉強してみたい人にとっては、歯科医院での勤務はひとつの選択肢になります。将来的に、歯科医院で得た経験を介護の分野で活かすとも可能です。

自分が目指すキャリアプランを念頭に置きながら、歯科医院での就職を検討してはいかがでしょうか。

参考文献・サイト

  • 「イーエヌ大塚製薬「『栄養』に歯科が取り組む意義と在宅訪問管理栄養士との連携」(2019年9月9日)
  • そよかぜ歯科クリニック 中志段味「そよかぜ歯科クリニックでは管理栄養士の栄養指導が受けられます!」(2019年9月9日)
  • 日本老年歯科医学会「『歯科医師と管理栄養士が一緒に仕事をするために』学会の立場表明」(2019年9月9日)
  • 原歯科医院「管理栄養士の口腔カウンセリング」
  • 栄養士の就職・転職なら「栄養士のお仕事」におまかせ!

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