栄養士と管理栄養士は、どちらも食事と栄養の専門知識を持つ資格です。しかし役割や仕事内容、資格取得方法が異なります。それぞれの違いを項目別にわけてくわしく紹介します。
栄養士と管理栄養士は、異なる部分もあれば共通する部分もあるため、共通点も確認してみましょう。これから栄養士や管理栄養士の資格を取得しようと検討している方は、本記事を参考に、自分に合った資格取得を目指してみてください。
【この記事でわかること】
●管理栄養士は栄養士よりも高度な栄養学の知識が求められ専門性が高い
●栄養士は健康な方、管理栄養士は病気やケガを抱えている方を対象にした業務となる
●どちらもさまざまな分野で活躍できる資格である
【監修者コメント】
栄養士と管理栄養士は、食を通して人々の健康をサポートする専門職です。管理栄養士になると、より高度な知識と技術を必要とする栄養指導などに携わることができますが、必ずしも職場で専念できるとは限りません。就職先によって業務内容が異なるため、理想の働き方をイメージしながら就職活動を行いましょう。
目次
栄養士と管理栄養士の違い ①役割
栄養士と管理栄養士の大きな違いは、免許を受ける機関が異なることです。栄養士は都道府県知事、管理栄養士は厚生労働大臣の許可により資格が取得できます。栄養士・管理栄養士の役割は「栄養士法」という法律で定められています。
くわしい違いは、次の表をご確認ください。
栄養士 | ・健康な方の栄養指導 ・健康な方の給食管理 など |
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管理栄養士 | ・健康な方、傷病者(病気やケガを抱える方)の栄養指導 ・健康保持、増進を促す栄養指導 ・特別な配慮を必要とする給食管理 など |
管理栄養士は、健康に不安を抱える方や、ケガで治療中の方などの栄養管理をしたり、栄養指導を行ったりするため、より高度な知識と技術が要求されます。
医療機関での患者への栄養指導は、管理栄養士のみが対応できます。栄養士が医療機関で働く場合は、管理栄養士とチームを組み、調理や献立作成などを行うケースが多いようです。
栄養士と管理栄養士の違い ②給与・待遇
栄養士と管理栄養士の年収は次のとおりです。
栄養士 | 約260万円 |
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管理栄養士 | 約310万円 |
※参考:栄養士のお仕事
給与は栄養士よりも管理栄養士のほうが高い傾向です。管理栄養士は栄養士より専門的な知識を持ち、それに応じた業務を行うため、給与が高くなるといえます。
職場によっては資格手当が支給されます。資格手当も栄養士より管理栄養士のほうが高い傾向があり、給与が高くなることが多いでしょう。
給与は業務内容や勤続年数、役職、職種などによって異なります。
関連情報:【年代・都道府県別】管理栄養士の平均年収を一覧で紹介!給料が低いって本当?
栄養士と管理栄養士の違い ③仕事内容
栄養士と管理栄養士の具体的な仕事内容は、次のとおりです。
栄養士 | ●調理 ●献立作成 ●食育 ●メニュー開発 ●健康な方を対象にした栄養指導 など |
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管理栄養士 | ●調理 ●献立作成 ●食育 ●メニュー開発 ●病態に応じた栄養指導 ●特定保健指導 など |
仕事内容の違いは、管理栄養士のほうが病態に応じた栄養指導や特定保健指導などできることが多い点です。
管理栄養士が行う特定保健指導は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発症または悪化を予防するための重要な役割です。専門的な知識をはじめ、病気に関する知識や対象者と信頼関係を築き、対象者自らが生活習慣を改善しようと行動を促せるようなコミュニケーション能力が求められます。
関連情報:管理栄養士の仕事内容を徹底解説!栄養士との違いや向いている人の特徴
栄養士と管理栄養士の違い ④就職先
栄養士と管理栄養士のおもな就職先を紹介します。
栄養士 | ●病院 ●福祉施設 ●学校給食センター ●食品メーカー など |
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管理栄養士 | ●病院 ●福祉施設 ●学校給食センター ●食品メーカー ●研究機関 ●養成施設 など |
管理栄養士は専門的な知識を持っているため、就職先の選択肢が多いといえます。病気やケガをした方の療養に関する栄養指導や、特定保健指導なども業務内容に含まれるため、管理栄養士の就職先は病院や施設などが挙げられます。
食事を提供する対象数によっては、管理栄養士の配置が法律で義務付けられている場合があります。該当する施設で管理栄養士の求人が出ている場合は、栄養士は原則として応募できません。
特定保健指導担当管理栄養士の認定資格がなくても、管理栄養士の資格があれば特定保健指導に携われます。
特定保健指導担当管理栄養士とは、生活習慣を改善するために、対象者に行動を起こしてもらえるように指導する認定資格です。日本栄養士会が定める研修会を受講し、修了すると認定されます。
栄養士と管理栄養士で共通する就職先について、それぞれの違いを見ていきましょう。
病院
病院で働く栄養士は、献立作成や調理、食材の発注などの実務を担当します。栄養士は法律により医療機関での栄養指導ができないため、管理栄養士と連携しながら患者の健康をサポートするのがおもな役割です。
管理栄養士は、栄養士の仕事のほかに患者の病態を考慮した栄養指導や栄養相談などに対応できます。医師や薬剤師などほかの職種と連携し、症状の改善に向けて分析・指導をするのが役割です。
福祉施設
福祉施設には特別養護老人ホームや障がい者施設などがあります。病院における栄養士と管理栄養士の役割の違いと同様に、管理栄養士のほうがより専門性の高い業務が求められます。
福祉施設では、利用者の体の状態や栄養状態などに特別な配慮が必要となる場合があります。その場合の給食管理や栄養指導は管理栄養士のみが対処可能です。
学校給食センター
学校給食センターでは、栄養士と管理栄養士の役割に大きな違いはありません。おもな仕事は献立作成や調理、食材の選定などです。
また、学校栄養職員や栄養教諭などの試験に通過することで、活躍の場をさらに広げることも可能です。
食品メーカー
食品メーカーでは、離乳食や介護食、機能性表示食品、サプリメントなどの商品開発に携わります。法律などの決まりはないため、栄養士・管理栄養士を問わず活躍できるでしょう。
ただし、離乳食や介護食などはより専門性の高い知識や技術が必要なため、管理栄養士の資格が求められることも考えられます。
栄養士と管理栄養士の違い ⑤ターゲット
栄養士と管理栄養士では、栄養指導を行う対象者が異なります。
栄養士 | ●健康な方 |
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管理栄養士 | ●健康な方 ●病気やケガを抱えている方 |
栄養士は健康な方を対象に、健康を維持していくために大切な栄養面でのアドバイスを行います。
管理栄養士は病気やケガを抱えている方を対象に、治療に大切な栄養面での指導を行います。またスポーツ選手など、特別な身体つくりを必要としている方の栄養や食事に関するアドバイスや、食事環境を整えるのも仕事のひとつです。
栄養士と管理栄養士の違い ⑥資格取得のプロセス
資格に関して、管理栄養士は国家資格であるという点が大きな違いです。まずは栄養士の資格を取得し、国家試験に合格する必要があることを留意しておきましょう。
栄養士・管理栄養士になるためのプロセスには次のような違いがあります。
栄養士になるには、養成施設(2〜4年制の短大・専門学校・大学)で必要単位を取得し、卒業すると資格が得られます。
管理栄養士になるには、2通りの方法があります。
まず1つは栄養士の資格を取得後に一定年数の実務経験を積み、管理栄養士国家試験に合格する方法です。もう1つは、4年制の管理栄養士養成施設で必要単位を取得し、国家試験に合格することでも資格が得られます。国家試験に不合格だったとしても、再度挑戦して管理栄養士を目指すことも可能です。
栄養士と管理栄養士どちらを目指すべき?
これから栄養士または管理栄養士の資格取得を希望する方は、まず養成施設への入学を目指しましょう。栄養士と管理栄養士は、仕事内容が似ている部分もあります。管理栄養士にしかできない仕事内容があるため、自分のやりたい仕事ができる資格なのか、できない資格なのかを考えて選ぶことをおすすめします。
どちらの資格を取得するか決めたら、通いたい養成施設を探しましょう。養成施設によって授業内容やカリキュラムが異なります。自分の目的に合った養成施設を選択しましょう。
栄養士に向いている人
次のポイントに当てはまる方は栄養士が向いているといえます。
●栄養のバランスなど食に関する知識を身につけたい
●管理栄養士よりも短期間で資格を取得したい
栄養士は健康な人を対象とした仕事ができます。管理栄養士よりも資格取得までに最短でかかる時間が短く、国家試験を受ける必要もないため、資格が取りやすい点も特徴です。
将来的に管理栄養士を目指している場合でも、栄養士の資格が必須のため、まずは栄養士資格の取得を目指しましょう。栄養士として1〜3年以上の実務経験があれば、管理栄養士の国家試験を受けられます。
管理栄養士栄養士に向いている人
次のポイントに当てはまる方は管理栄養士が向いているといえます。
●患者や医師とのコミュニケーションを重視したい
●希望の就職先で管理栄養士の資格が必要である
管理栄養士は、栄養士の仕事に加えて、病気やケガなど医療に関係する仕事もすることができます。食の観点から患者の症状を改善させることに興味がある方は管理栄養士の資格取得がおすすめです。
栄養士に比べて、資格を活かして働ける環境が多いため、働きたい業界や施設によってどちらの資格が必要か検討するのもよいでしょう。
栄養士と管理栄養士の共通点
栄養士と管理栄養士には、次の共通点があります。
福祉・教育機関・スポーツなど勤務先の選択肢が多い
関連する資格の取得ができ活躍する場を広げられる
独学では資格取得ができない
資格取得のためには実習に参加する必要がある
福祉・教育機関・スポーツなど勤務先の選択肢が多い
栄養士や管理栄養士は、次のようなさまざまな分野の職場で働くことができます。
●介護施設
●学校給食センター
●児童福祉施設
●食品メーカー
など
医療機関は病気やケガを抱えている方が、入院したり通院したりしているため、管理栄養士のみの職場と思うかもしれません。しかし、食事の献立作成やカロリー計算、栄養価計算など栄養士が活躍できる職場もあります。
管理栄養士だけの職場、栄養士だけの職場のほうが少なく、さまざまな分野で双方が一緒に活躍できることが共通点です。
関連する資格の取得ができ活躍する場を広げられる
栄養士や管理栄養士は実務経験を通じて取得できる資格が複数あります。今後のキャリアアップを希望している方は資格取得によりさらに活躍の場を広げられるでしょう。すでに栄養士の資格を持っている場合は、管理栄養士の資格を取得することもキャリアアップの手段のひとつです。
関連する資格のおもな例を紹介します。
資格名 | 特徴 |
---|---|
認定管理栄養士・栄養士 | ・臨床栄養や学校栄養などの各専門領域で、熟練した技術、知識を用いて栄養指導を行う ・管理栄養士か栄養士としての実務経験が必要 |
食物アレルギー分野管理栄養士・栄養士 | ・食物アレルギーに対応する知識や技術を習得 ・食物アレルギーに配慮した安全な食の提供を行う ・管理栄養士か栄養士としての実務経験が必要 |
公認スポーツ栄養士 | ・監督、トレーナーなどと連携し、競技者の栄養教育、食環境の整備などを行う ・管理栄養士の資格が必要 |
※公認スポーツ栄養士は管理栄養士のみが資格取得可能です。
関連する資格を取得することで好待遇の職場への転職や給与アップなどが叶う可能性があります。
独学では資格取得ができない
栄養士、管理栄養士ともに、養成施設の必要単位を取得して得られる資格であり、独学での取得は不可とされています。
栄養士法により、厚生労働省が指定した養成施設で一定年数以上、必要な知識や技能を取得しなければならないと定められているためです。
通信教育・夜間の大学では学べない
厚生労働省が指定した養成施設は、いずれも全日制の学校です。通信教育や夜間の学校は指定されていないため資格の取得はできません。
全日制の養成施設のなかから自分にあったものを選び、受験に合格して通うことになります。
資格取得のためには実習に参加する必要がある
栄養士・管理栄養士になるには、知識を身につける座学と実践を通して学ぶ実習が必要です。教育施設や病院、福祉施設などで一定期間、実習に参加します。
通信教育や夜間の学校では、この実習が実施できないことから養成施設として指定されていないという背景もあります。
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栄養士から管理栄養士にステップアップする選択肢もある!
栄養士として働いている方は、必要な実務経験を積むことで管理栄養士の国家試験受験の権利を得ることができます。たとえば、2年制の短大や専門学校を卒業して栄養士になった場合は、実務経験3年以上で管理栄養士の国家試験を受ける権利を得られます。
管理栄養士へステップアップを希望される方は、今の職場で働き続けて実務経験を積む、または資格取得を目指しやすい職場への転職を検討してみましょう。
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よくある質問
栄養士と管理栄養士の違いを簡単に教えてください
栄養士と管理栄養士の違いは、次のとおりです。
項目 | 栄養士 | 管理栄養士 |
---|---|---|
役割 | ●健康な方の栄養指導 ●健康な方の給食管理 など |
●健康な方、病気やケガを抱える方の栄養指導 ●健康保持、増進を促す栄養指導 ●特別の配慮を必要とする給食管理 など |
給与・待遇 | ●年収約260万円 | ●年収約310万円 |
就職先 | ●病院 ●福祉施設 ●学校給食センター ●食品メーカー など |
●病院 ●福祉施設 ●学校給食センター ●食品メーカー ●研究機関 ●養成施設 など |
仕事内容 | ●調理 ●献立作成 ●食育 ●メニュー開発 ●健康な方を対象にした栄養指導 など |
●調理 ●献立作成 ●食育 ●メニュー開発 ●病態に応じた栄養指導 ●特定保健指導 など |
ターゲット | ●健康な方 | ●健康な方 ●病気やケガを抱えている方 |
資格取得のプロセス | 1.2〜4年制の栄養士養成施設に入学 2.必要単位を取得 3.養成施設を卒業する |
パターン① 1.栄養士の資格を取得 2.実務経験を積む 3.国家試験を受験し合格する パターン② 1.4年制の管理栄養士養成施設に入学 2.必要単位を取得 3.国家試験を受験し合格する |
栄養士と管理栄養士の仕事の違いにはどのようなものがありますか?
より高度な栄養学の知識や経験が必要な業務は、管理栄養士に任される仕事です。
たとえば、病気やケガを抱えている方の栄養管理や指導、スポーツ選手などの特定の身体つくりが必要な方の栄養面でのサポート、特定保健指導などが挙げられます。
くわしくは「栄養士と管理栄養士の違い ③仕事内容」でご確認ください。
管理栄養士にしかできないことを教えてください
管理栄養士にのみ許可されている仕事は、特定保健指導、病気やケガを抱えた方への栄養指導などが挙げられます。
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