医療技術・患者ケアの分野は日進月歩で進化しています。
それに伴い、医師や看護士をはじめとした医療従事者はもちろんのこと、患者さんのケアに携わる全員に専門性が求められることが多くなってきています。
それは、栄養管理の専門家である管理栄養士も例外ではありません。
医療チームの一員として患者さんの疾病治療に中心的に関わり、求められる役割や知識が大きくなってきているのです。
そこで、日本栄養士会は特定分野において高度な知識と経験を持つスペシャリストの認定制度を設けています。
その一つが、「経腸栄養」の分野において高度な専門知識と実力を備えた「静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士」です。
今回の記事では、「静脈経腸栄養管理栄養士」の資格について解説します。
目次
静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士とは?
「公益社団法人 日本栄養士会」が定めた「特定分野管理栄養士」のうち、「静脈経腸栄養管理」分野におけるスペシャリストが、静脈経腸(TNT-D)管理栄養士です。
そもそも「特定分野管理栄養士」とは?
特定分野管理栄養士は、5つの特定分野の実践活動で高い成果を出せる管理栄養士に対して与えられる資格。
5つの特定分野と、その分野で認定される資格名は以下の通りです。
・静脈経腸栄養管理:静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士
・特定保健指導:特定保健指導担当管理栄養士
・在宅訪問栄養食事指導:在宅訪問管理栄養士
・スポーツ栄養:公認スポーツ栄養士
・食物アレルギー:食物アレルギー管理栄養士・栄養士
特定分野管理栄養士に認定されるには、その領域に関する知識や技術を備え、常にスキルアップを行うことが必要です。
静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士以外の特定分野管理栄養士について解説した記事はこちらから。
静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士の概要
病院で働く管理栄養士には、患者の栄養状態を管理したり、栄養面から治療に貢献することが求められています。
さらに、医療技術の革新にともなって、医療現場では高度な専門知識や実践力、医療チームの連携力も重要視されるようになってきました。
そこで、医療現場で必要な栄養管理の専門技能を総合的に身に着けたい管理栄養士に向けて作られたのが、静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士です。
静脈栄養や経腸栄養に関する講義など、医療現場で働く管理栄養士が知識を吸収できる研修会の参加などを経て認定されます。
日本栄養士会の発表によれば、認定者数は2017年度末時点で1,211人です。
◆参考:公益社団法人 日本栄養士会「静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士」
認定を受けるとどんなメリットがある?
特定分野管理栄養士としての認定を通じて、専門分野の知識を磨くことができるため、スキルアップに役立ちます。
また、資格は自身のスキルを示す客観的な指標となるためが病院への転職時のアピール材料となる可能性も大いにあります。
資格によって静脈栄養や経腸栄養に長けた知識と実践力をもっていることが証明できれば、高度な医療チームの一員としての管理栄養士を探している病院では、即戦力として求められるでしょう。
申請資格の詳細
ここからは、実際に静脈経腸栄養管理栄養士の資格を取得するための研修会や申請について解説していきます。
静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士の認定審査には、以下の申請資格のいずれかを満たす必要があります。
・病院他に2年以上の勤務経験があり、現在も栄養管理を行っていること
・管理栄養士養成施設で臨床栄養学分野を担当している教員(助教以上)
◆引用元:公益社団法人 日本栄養士会「静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士」
研修会への参加は参加取得にあたって不可欠!
静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士は、研修会に参加してレポートを提出後、認定試験を受験すれば取得となります。
研修会の内容と認定試験の概要
研修会の内容や進行は以下のとおりです。
1.「経腸栄養管理の基礎(14時間)」
講義とワークショップを2日間実施。その後、配布テキストを元に「復習時間(10時間)」が設けられます。
2.「静脈栄養管理の基礎(12時間)」
講義を行ったのち、「事後学習(10時間)」を受けます。事後学習では、所属病院内で実施されている経腸栄養施行患者への栄養介入事例を2つ取り上げたレポート作成が必要です。
3.「静脈経腸栄養の応用(6時間)」
「症例検討報告」をワークショップ形式で行います。
なお、希望する人は2日間に渡る「実地研修(16時間)」を日本栄養士会指定の医療機関で受講すれば、栄養サポートチーム(NST)の専従者もしくは専任者に必要な資格を得られます。
研修会の受講費用ですが、日本栄養士会会員の場合は50,000円、非会員は70,000円です。
なお、認定試験はすべての研修会を受講した後に受験します。
回答方式は五肢択一式。全30問のうち、60%以上の正答率を獲得すれば合格です。
試験時間は30分となっています。
研修会の内容は、あくまで一例です。
更新について
静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士の資格は、5年ごとに更新の手続きを行う必要があります。
更新料は3,000円です。
以下が更新要件です。
①静脈栄養・経腸栄養の管理に関わる管理栄養士としての活動実績
②業績(論文発表・学会発表・著書・社会活動)※静脈栄養療法・経腸栄養療法以外でも可
③栄養療法関連研修会への参加
④日本栄養士会生涯教育制度への参加実績(TNT-D認定後5年以内に10単位以上)
⑤静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士スキルアップセミナー(旧更新研修会)へ5年に1回以上の参加
◆引用元:公益社団法人 日本栄養士会「静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士更新要項」
また、更新には以下の提出書類も用意します。
・履歴書
・過去5年間の活動報告
・栄養療法関連の研修会参加報告
・学術的な活動報告として、著書や論文あるいは学会での発表記録
・講師やボランティア活動など社会活動の報告
各書類の指定書式や詳細は以下のページで確認できます。
公益社団法人 日本栄養士会「静脈経腸栄養(TNT-D)管理栄養士更新要項」
まとめ
特定分野管理栄養士のなかでも、静脈管理や経腸管理の領域に長ける静脈経腸管理(TNT-D)栄養士の概要を紹介してきました。
病院に勤務する管理栄養士はスキルアップやキャリアアップに大いに役立つ認定資格ですから、ぜひチェックしてみてください。
自分にしかない強みや専門性を身につけたい管理栄養士にも取得はオススメ。
研鑽を積みながら、自分だけのキャリアを作っていってくださいね。
参考文献・サイト
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