管理栄養士の給料は、低いといわれることもありますが一概にそうとはいいきれません。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、全国平均の基本給は月収約25.8万円で、資格手当や賞与を含めると年収350万~400万円前後になるケースが多くなっています。しかし、給料の低さに悩んでいて、「どうすれば収入を増やせるのか?」と考えている方もいるのではないでしょうか。
実際には年収500万円以上を超える求人もあり、フルリモートの副業を併用したり、関連資格を取得したりすれば、収入を増やすことも可能です。
本記事では、管理栄養士の給料が低いとされる理由や、管理栄養士の収入状況と勤務先による違いのほか、給料を上げるための方法を解説します。
【この記事でわかること】
●管理栄養士は多くの職場で活躍しているが、給食センターや病院などが多くなっている
●管理栄養士の給料が低い主な理由として、未経験者でもできる仕事も多く、利益に結びつきにくいことなどが挙げられる
●管理栄養士として給料を上げる方法としては、関連資格を取得したり、転職したりすることなどがある

管理栄養士の主な活躍の場としては、病院やメーカーなどがあります。病院勤務は、安定性がある一方で、診療報酬が点数で管理されているため、給与が上がりにくい傾向にあります。ただし、病院の規模が大きくなるほど給与も高くなる傾向があるため、収入を重視する場合は大規模な病院を目指すのもひとつの方法です。
また、食品などのメーカーは金融業界ほどの高収入とはいきませんが、安定した収入を得られ、プライベートとの両立がしやすい環境が整っていることも魅力です。ただし、配属先によっては管理栄養士の資格を活かせない場合もあります。
収入を優先するのか、資格を活かした働き方をしたいのか、自分がどのような働き方を目指すのかを明確にした上で、職場を選ぶことが大切です。
目次
管理栄養士の仕事
管理栄養士は、給食センターや病院などで活躍することが多くなっています。ここでは、管理栄養士の仕事について解説します。
給食センターでの管理栄養士の仕事
給食センターでの管理栄養士の主な仕事は、栄養バランスを考慮しながら、季節や行事に合わせた献立を作成し、安全で健康的な食事を提供することです。食材の発注や調理過程の管理にも携わり、食の安全を確保しながら、利用者にとっておいしく、栄養価の高い給食を実現します。
また、調理スタッフへの指導や衛生管理も重要な業務のひとつです。食材の取り扱いや調理環境の衛生状態をチェックし、安全基準を満たした食事を提供するための指導を行います。さらに、給食の質を向上させるため、提供する給食の管理や改善を目的とした給食委員会の運営にも関わります。
病院などでの管理栄養士の仕事
病院での管理栄養士の仕事は、医師や看護師と密に連携しながら、患者の栄養状態を改善するための食事プランを策定することです。入院中の患者に対しては、病状や治療内容に応じた適切な食事を提供することが求められ、栄養バランスを考慮したメニューの作成に加え、食材の選定や調理方法にも配慮します。
また、アレルギーを持つ患者への対応や、食事の質の維持も重要な業務のひとつです。糖尿病や心臓病、腎臓病などの慢性疾患を抱える患者には、それぞれの病気に適した栄養指導をしたうえで、治療の一環として適切な食事を摂取できるようサポートします。
さらに、患者が退院した後も健康的な食生活を維持できるよう、家庭での食事の選び方や調理の工夫、栄養バランスを考えた献立作りのアドバイスを提供し、継続的な健康管理を支援する役割も担っています。
管理栄養士の収入
管理栄養士の収入は、その職場や雇用形態、地域によって大きく異なります。ここからは、管理栄養士の平均年収や賞与、初任給、年代別の給料について詳しく解説します。
関連情報:【年代・都道府県別】管理栄養士の平均年収を一覧で紹介!給料が低いって本当?
平均年収
厚生労働省の職業提供サイト「job tag」によると、「管理栄養士」の平均年収は約390万円です。ただし、この数値は「栄養士」とは区別されていないため、参考程度に考える必要があります。地域別の管理栄養士の平均年収は以下のとおりです。
■地域別の管理栄養士の平均年収
地域 | 平均年収 |
---|---|
全国 | 390万円 |
北海道 | 352.7万円 |
東京都 | 435万円 |
宮城県 | 390.2万円 |
大阪府 | 418.6万円 |
愛知県 | 444.8万円 |
福岡県 | 365.1万円 |
※出典:厚生労働省「job tag」(2025年3月現在)
地域でも収入には差があり、大規模な病院がある東京都や大阪府、愛知県などの都市部では年収が高くなる傾向にあります。ただし、都市部は家賃や生活費も高くなるため、地方で働く方がゆとりをもって生活ができる場合もあるでしょう。
平均賞与
管理栄養士の全国的な平均賞与額は73万1,700円です。ただし、実際には個々の賞与額は職場や地域、経験年数によって異なり、一律ではありません。一般的には、男性の方が女性よりも賞与が高い傾向にあるといわれています。
初任給
地域による差はあるものの、全国的に見た管理栄養士の平均初任給は約20万~22万円程度とされています。賞与を加えると、年間の総支給額はおおよそ300万円前後になるケースが一般的です。
また、勤続年数が増えるにつれて経験やスキルが評価され、基本給の引き上げや手当の増額といった形で、収入は少しずつ上昇していきます。
年代別の給料
管理栄養士の給料は、年齢とともに増加していき、一般的に50代がピークです。これは、職務経験や責任範囲の拡大が影響していると考えられます。
■年代別管理栄養士の平均年収
※参考:政府統計の総合窓口「令和5年賃金構造基本統計調査」
管理栄養士の給料が低い主な理由
管理栄養士の給料が低い理由として、未経験者でも対応できる業務が多く、人件費を抑えやすい点が挙げられます。また、直接的な利益を生まない職種であるため、企業や施設内での評価が給与に反映されにくいことも理由のひとつです。さらに、食材費や人件費の制約が厳しい現場では、給与の引き上げが難しいことも少なくありません。ただし、以下の現状と課題に対しては、それぞれ対処法もあります。
未経験者などでもできる仕事だから
管理栄養士の給料が低い理由として、未経験者などでもできる仕事も多いという点が挙げられます。
この状況に対応するためには、専門性を高めて差別化を図ることが重要です。例えばスポーツ栄養や臨床栄養などの専門知識を身につけたり、コンサルタント業務や講師業など、独自のスキルを発揮できる仕事に挑戦したりするのもいいでしょう。給料を増やすには、スキルアップを継続することが重要になります。
利益に結び付きにくい仕事だから
管理栄養士の仕事は利益に結びつきにくいことも、給料が低い理由のひとつです。管理栄養士は栄養学や食品科学に関する豊富な知識と技術を活かして、健康的な食事環境を整える重要な仕事ですが、営業職のように直接的な利益を生み出す仕事ではありません。そのため、企業内や施設内での評価が給料や待遇に直結しにくいのが現状です。
しかし、近年では健康意識の高まりや食品安全の重要性が再認識され、管理栄養士が評価されるようになってくることも考えられます。今後、専門性の高い分野で活躍できる管理栄養士の需要が増えることで、待遇や評価の改善が進んでいく可能性も十分に考えられるでしょう。
給食にかけられる費用に限りがあるから
給食を提供する現場では、食材費や人件費などのさまざまなコストを抑えながら運営する必要がある点も、管理栄養士の給料の低さに関わってきます。運営側は限られた資源を最大限に活用しなければなりません。特に、公的機関や学校給食などでは、提供価格が一律に抑えられているため、コスト削減が不可欠となります。その厳しいコスト管理の結果として、従業員に高い給料を支払う余裕がなくなってしまうという現状があるのです。
高い給料を目指すには、専門性を高めて収益性の高い企業に転職するのもひとつの方法といえるでしょう。
離職率が高いから
離職率が高い点も、管理栄養士の給料の低さの要因として考えられます。管理栄養士は女性が9割以上を占めており、出産や育児といった家庭の事情によって、一時的にキャリアを中断せざるを得ないケースも多くみられます。これにより、長期間働き続けることが難しくなり、昇進や給与アップの機会が制限されることも少なくありません。
また、職場によってはスタッフの入れ替わりが頻繁に発生することがあり、それに伴い経験豊富な人材が不足することもあります。このような状況が続くと、職場全体のスキル向上が難しくなり、結果として給与に対する評価の上昇が抑えられてしまう可能性もあるでしょう。この問題を改善するためには、働き続けやすい職場環境の整備が求められます。
関連資格が多いから
管理栄養士の給料が低い理由として、管理栄養士の仕事に関連する資格が多いことも挙げられます。管理栄養士は専門的な知識を要する資格ですが、その業務を独占できるわけではありません。実際には、調理師や食生活アドバイザーなど、管理栄養士の業務と重なる分野の資格が多くあり、これらの職種と仕事を取り合う形になることもあります。
そのため、管理栄養士の資格を持っているだけでは必ずしも高収入の仕事に就けるとは限らず、専門性を活かせる環境を選ぶことが重要になります。
管理栄養士の給料が高い職場
管理栄養士の給料が高い職場としては、大手の病院や企業の社員食堂、研究機関などが挙げられます。また、役職が付くポジションや、専門性が特に求められる職場も高収入につながりやすいといえるでしょう。地域によっても基本給に差があるため、都市部の施設では地方よりも高い給料となっていることが一般的です。
公立病院などの行政機関
公立病院などの行政機関は、管理栄養士の給料が比較的高い職場だといえるでしょう。自治体の採用試験を受け、公務員として管理栄養士の道を選ぶこともでき、公立病院や保健所、市役所などで勤務する場合、地方上級公務員として採用されるため、安定した収入が見込めるでしょう。
また、公務員は給与体系が明確に定められており、勤続年数や昇格に応じて給与が着実に上がる点も魅力のひとつです。福利厚生や退職金制度が充実していることも、公務員として働くメリットといえます。
給食センター
近年、人手不足が続いている給食センターは、比較的給料の高い職場だといえます。特に、管理職などのポジションに就くことで、より高い給料を見込めるでしょう。また、パートタイムの求人でも高めの時給での募集が見られます。
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病院
病院での勤務は、栄養指導や栄養管理などの臨床に関する知識を必要とするため、経験を積んでいけば転職時にも有利になります。特に大規模な医療機関ほど、給料面でも恵まれている傾向があるので、転職による年収アップを目指せます。
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医薬品メーカーや食品メーカー
求人の数としては少ないものの、医薬品メーカーや食品メーカーでは、サプリメントや栄養食品の品質管理、企画・開発に携わる機会があります。これらの仕事は専門性が高いため、高い給料が期待できます。メーカーで働く場合、広報業務やカスタマーサポート業務に携わるケースもあり、幅広い経験ができるでしょう。
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管理栄養士として給料を上げる方法
管理栄養士として給料を上げるには、関連資格を取得したり、転職したりする方法があります。自分にできそうな項目があるか、チェックしてみましょう。
●関連資格を取得する
●待遇の良い企業に転職する
●副業をしたり、フリーランスとして活動したりする
●関連業務を経験してキャリアの幅を広げる
関連資格を取得する
管理栄養士として給料を上げるためには、関連する資格を取得して専門性を高めるといいでしょう。例えば、調理師やケアマネージャー(介護支援専門員)、専門管理栄養士などの資格を取得すれば、職場での評価が上がったり、資格手当が付いたりすることもあるので、給料の増加につながる可能性があります。
待遇の良い企業に転職する
給料が高い職場へ転職することも、給料を上げる方法のひとつです。例えば、大きな病院では、専門的な知識や経験がしっかりと評価されるため、一般的に給料が高く設定されています。また、公的機関でも、安定した環境に加えて、給料が高くなる傾向にあります。大手企業の研究・開発部門では、新しいプロジェクトや製品の開発に関わることで、専門的なスキルが評価され、高い給料を得るチャンスが広がるでしょう。
このような職場への転職は、経済的にプラスになるだけでなく、仕事に対する満足感を高め、成長する機会を増やすきっかけにもつながります。
副業をしたり、フリーランスとして活動したりする
フリーランスの管理栄養士として活動することで、複数の仕事を受注する機会が増え、収入の増加を目指せます。また、副業が可能な職場であれば、フルリモートで行える栄養指導のアルバイトを掛け持ちすることで、安定した収入が見込めるでしょう。また、SNSで発信をして、インフルエンサーとなって独立する管理栄養士の方も多くいます。食や栄養の知識を活かして発信することで、仕事を得られるチャンスが広がる可能性もあります。
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関連業務を経験してキャリアの幅を広げる
管理栄養士が給料を上げるには、関連業務を経験してキャリアの幅を広げることも考えられます。食の現場だけではなく、健康にまつわるイベントやセミナーの開催、企業での商品開発など、多様な関連業務を経験することで、管理栄養士としてのスキルと知識の幅を広げられるでしょう。転職の際にも、経験が有利に働くかもしれません。
キャリアの幅を広げたり、フリーランスとして活動したり、副業をしたりするには、他の人と差別化できるスキルを持っておくことが必要です。特に食に関連した資格は強みになりやすく、私の場合は中医学の薬膳に関する資格やフードコーディネーターのほか、犬の管理栄養士といった資格を取得することで、仕事にもつながりました。
病院勤務の方であれば、生活習慣病に関する資格を取得することで待遇が良くなる場合もありますが、フリーランスや副業の主に健康な人向けでの仕事の場面では、病気に関する専門資格はあまり求められない傾向にあります。
目指す分野によって求められる資格やスキルは異なるため、自分の将来像を明確にし、必要な資格を見極めて学んでいくことが大切です。
管理栄養士の給料は低いものの、工夫と行動でステップアップ可能!
一般的な管理栄養士の給料はそこまで高くありませんが、給料が低いと感じたとしても、工夫と行動次第で収入を増やすことは十分に可能です。例えば、調理師やフードコーディネーターなどの関連資格を取得して専門性を高めることで、給料の高い職場に転職してキャリアのステップアップにもつなげられます。フルリモートで行える栄養指導の副業もあるので、副業やフリーランスとして多様な仕事に挑戦したりしていけば、自分自身の職業価値を高めることも可能です。
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よくある質問
管理栄養士の給料が低い理由は?
管理栄養士の給料が低い主な理由として、未経験者などでもできる仕事が多く、利益に結び付きにくい仕事だという点が挙げられます。調理師や食生活アドバイザーなど、管理栄養士の業務と重なる分野の資格が多くあり、これらの職種と仕事を取り合う形になることもあります。また、離職率が高い職場では昇進や給与アップの機会が制限されることも少なくありません。
管理栄養士として給料を上げる方法は?
管理栄養士として給料を上げるには、関連資格を取得して専門性を高めたり、給料が高い職場へ転職したりすることが重要です。また、副業で活動範囲を広げることや、関連業務を経験してキャリアの幅を広げることも有効な方法です。
管理栄養士としてのキャリアアップのポイントは?
管理栄養士としてのキャリアアップのポイントは、自身の専門性を高めることと、業務経験を積み重ねることです。また、専門管理栄養士、調理師、ケアマネージャー(介護支援専門員)などの関連資格を取得することで専門性を高め、職場内での評価を上げることができます。加えて、さまざまな職場での経験を通じてスキルを磨き、転職先での交渉材料にすることも重要です。
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